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巨人になった私  作者: EVO
83/119

休暇 3

1730、空母の縁に座って港湾を出発、梅雨直前の季節だけど空は雲ひとつない穏やかな天気だった。


「空母で釣りも良いな・・・」


「そんな釣り船みたいな、空母使用許可降りるの?」


「Hahaha.流石に無理だろうねぇ!」


「駆逐艦くらいなら貸してくれねえかな」


「沈まない?」


「1番小さい駆逐艦でも問題無い筈だよ、ただ甲板が狭いからねえ」


空母だと私達サイズでも余裕でゴロ寝出来る広さがあるけど、駆逐艦だと跨って丁度いいくらいかな?

でもそれだと足が海に着くから、バナナボートみたいな乗り方になる。


「釣竿作ってもらうか、日本なら出来るだろ」


「何を釣るつもりなんだいライアン・・・」


「クジラ?」


「釣ったあとが大変そうだね」


ちびちびとコーラを飲みながら焼き鳥を食べる、潮風と海の音がいつもより食事を美味しく感じさせた。


「しかし日本はすげえな、コレが豆?」


「大豆だね」


ライアンもビールのお供に焼き鳥を口にしていた。

焼き鳥、と言っても私達が食す肉って量的に本当に大変なんだよね、牛と豚は個体が大きいからマシだけど、鶏は元々が小さいからあまり食卓に乗らない。


そこで提供されたのが大豆を原料にした疑似肉だ。

巨人の1口サイズに成型した、食感はそのまま鶏肉の大豆肉、それが今食べている焼き鳥だった。


「日本は食に関しては世界一だと思うよ」


魚を生で食べる為の技術とか、野草や山菜の可食部位の判別、ああ毒魚の、フグの捌き方とかもあるね。


「土地が広けりゃあ文句無しなんだけどな」


日本の国土はねえー、国土の75%が山だから開拓する余地はあるらしいけど、土砂崩れとか治水とか問題もあるし、過疎化が進んでいる土地だとお店が無かったりするし。


私達のような巨人が住める条件って、住居を確保出来る広さの土地と庭(運動場)、物資を潤沢に供給出来るそこそこの規模の都市(港)が近くにある事、の2つが絶対条件だから日本だと難しそう。

住環境は田舎を求めてるのに、衣食では都会並のアクセスを必要とするからね。


「くく、米軍の方も現場から食環境の改善要望が、くっ、自衛隊の作るメシが美味すぎるって!」


リリィが心底可笑しそうに笑う、いやまあ、美味しいご飯は大事だよね!


いくつか甲板に積んだ花火鑑賞用の食事も、フライドポテトは大量のじゃがいもを茹でてから1度すり潰して成型、表面はカリカリ、中身はホクホクで美味しい。

1口が大きい私達に合わせた手間が掛かっていて、最高なんだよ。



ヒュー——————————


ドーン!


「お、きたきた」


猿島要塞島から上がった花火はかなりの至近距離で大迫力だ。

艦船をいくつも出すことは出来ないので、私達が乗り込んだ空母には横須賀米軍基地から軍人が相当数乗っている。

少し離れた甲板からもYeah.Fuu!!と歓声が挙がっている、一般隊員も基地からの外出はかなり制限されているので、こういったイベントの食い付きは良い。


次々と上がる花火は夜空を美しく彩った。

ドーン、ドーンって音は最近だとずっとミサイルや爆弾、砲撃の炸裂音として耳に残っていたので、こういう平和で落ち着いた感覚は少し違和感がある。


「同じ火薬なのにな」


「・・・あんまり深く考えるんじゃないよ」


「ン」


ポツリとこぼした私の口にリリィがベーコンを放り込んだ、スパイスが利いてとても美味しい。


()()()が日常、()()()は非日常だ、大事にするのはこっち」


「うん」


ぼーっと花火を見上げて肩の力を抜いた。

あ、このサンドウィッチ美味しい、包みを無言でリリィの前に差し出す、リリィも自然に受け取って口に運んだ。


「お、美味い・・・」


「ね」


「ああ」


「クハー!やっぱビールだな!」


「飲みすぎるなよライアン」


「Hahaha.ビールなんて水だ水!」


「ふふ」


空母の縁で足をパタパタと振る、サアアアと潮風が再び頬を撫でた。

ドォン!ドォン!と平穏の音を上げる洋上の彩りは、一際鮮やかでとても綺麗だった。


「まあ適度にやって行こうぜ?」


「そうだね、1日必死になっても100が1000にはならないよ」


「うん」


疲れたら休んでいいんだね。

隣のリリィに寄りかかる、リリィはいつものように私のこめかみにキスをして肩を優しく撫でた。









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