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巨人になった私  作者: EVO
81/119

休暇 1

タポタポタポタポ


私は容器に入ったヌメヌメの液体、ローションにお湯を加えてかき混ぜていた。


最近、日本各地から自衛隊と米軍へ支援が届けられるようになっていた。

食材や医薬品、寄付といった具合に個人、企業問わず多岐に渡っている。

昨日美味しく食べたバニラアイスもそうだし、ウイスキーやコーヒーなどの嗜好品も贈られてくる。


私達の元へ届くには、自衛隊、そして米軍によるダブルチェックで検品されているので変なものは届かない。


「ねえ小夜さん、これPPローショ・・・」


「マッサージ用のローションだよ、サナちゃん」


「ハイ」


ピンク色のテラテラと光るローションは完全国内生産品で私も知っている物だ、これPPロー


「サナちゃん、このマッサージ機なんだけど」


「それは、電マ・・・」


「ハンド!マッサージ機ね」


「ア、ハイ」


巨人さんへ、といくつかリストアップされた物を手に小夜さんが納品に来てくれていた。

リリィがローションマッサージに興味を持ったので、バスルームに移動してその場で実践となった。

マニュアルはQRコードでオンラインから、素人でも出来るマッサージがいくつか書いてあった。


ぬっちぬっちぬっち


「oh.」


ねちょ、ねちょ、ねちょ


「Yeah..」


ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ・・・


「気持ちいいねえ」


ゔぃぃぃぃぃぃ・・・


「あー、効くねぇ」


マッサージですよ、KENZENなマッサージです!

マニュアルによると素人がローション無しでマッサージをやると筋肉を傷めやすいらしい、ローションを使うと適度に滑るのでそこまで力が加わらないので是非、との事だ。

電マ・・・、ハンドマッサージ機は巨人用にカスタマイズされていて振動が強いので一般人へは使用禁止となっている。


「リリィ、サナ、朝から卑猥な音を撒き散らすの止めてくれない?」


「イブ、どうしたの?」


「なんだい? 今日は別にナニもしてないよ」


「前も何もしてないけどね」


「わざとなんですか? わざとですよね? 絶対わざと!

朝っぱらからねちょねちょねちょねちょ、と・・・

サナは兎も角、リリィ貴女は確信犯ですよね、そのニヤニヤ笑い今すぐ引っ込めなさい」


えぇ? ローションの音もダメぇ?

リリィは声抑えていたし、壁薄過ぎない?

って、小夜さんはなんで顔を真っ赤にしているの?


「どーれ、サナ替わるよ」


「あ、うん」


「リリィ聞いてるの?」


「あいあい聞いてるよー、ちょっと2人共待ってておくれよ」


「え?」「はあ・・・」


ローションと一緒に贈られて来たマットに、リリィと入れ替わってうつ伏せに寝そべる。

胸の所がくり抜かれていて楽に寝られるようになっているマットだ。

リリィは私の腰の上に跨ってローションを垂らした。


「あ、」


これ、思っていたより、イイ。

フェザータッチだとくすぐったくて堪らないけど、グッと力が入ると丁度いいね、マニュアル通り滑るので痛いって感じるレベルまでいかない、素人マッサージならかなりいい塩梅だ。


「ん」


「お客さん、如何?」


「ふふふ、凄くイイです」


リリィはノリノリで軽口を叩く、私の首、肩、背中、腋、とぬちょぬちょマッサージしていく。

あー、これは寝そう、朝食を摂ってすぐバスルームに来たから満腹感も手伝って身体の力が抜けていく。


「終わったら起こすから寝てもいいよ」


「うん」


・・・

・・・

・・・


「よし、ほら立った立った」


「うん」


ふわふわとした心地で手を引かれて立ち上がると、湯を張ったユニットバスに2人で入った。

いつもの体勢、後ろから回されたリリィの手がきゅっと私を抱きしめる、ポカポカとあまりの多幸感に身を任せて私はそのまま意識を手放した。



***



すうすうと寝息を立て始めたサナを溺れないように気を付けて、アタシは待ってもらっていた小夜とイブに目を向けた。


「リリィ、それで?」


「ぶっちゃけシンドイ、血なまぐさい、特に人の形をしたモノを解体するのは堪える、娯楽が足りない」


アタシは素直に感じた事を伝えた。

東京の戦闘は日に日にブラッシュアップされた支援も相まって、かなり楽に討伐出来ている。

但し、一級のあまりの数の多さに疲労を感じているし、体液や内臓と言った嗅覚視覚に訴えてくる不快感はかなりのものだ。


「基地と作戦区域の往復、基本缶詰めで思い切り運動も出来ないだろう?

アタシとライアンはまあ長持ちするけど、サナは知っての通り真面目(ストイック)な性質だ」


そっとこめかみにキスを落とすとサナはむず痒そうに身を捩った。

この娘は本当に真面目だ、任務を終えて身を清め、食事を摂り終えるとすぐタブレットを手に勉強を始める。

真面目なのはいい事だが、真面目だからこそこういうのは長続きしない。

だから適当に絡んでサブスクや娯楽動画を勧めたりしているが、それが無いと延々勉強しそうな様子だった。


「アメリカの時のペースなら問題無いけど、日本のモンスターの数とペースで、しかも部隊は3人、負担は軽くない」


その為に高給を貰っているのは理解しているが、キツイものはキツイ。

銃であればまだマシだったかも知れないけど、刀や斧、自らの手で叩き殺したりもしている。

いくら「敵性生物」と区別していても何も思わない訳じゃあないしな。


そうは言っても、のんびり討伐もモンスターの融合やら変異種やらが増えるしで良くはない。

サナは学生だから、そこのしわ寄せをまともに食わせるのも可哀想だ。

あっちを立てれば、こっちが立たない、痛し痒しって奴だ。


「アタシとライアンが平気な顔をしているのはサナが居るからだ、アタシらがブレるとサナも動揺するからねぇ」


「娯楽の手配は進めています、近くのビーチと温泉のの貸切、花火大会の依頼と、他にも」


「そりゃあ良い、頼むよイブ、ああ昨日のバニラアイスは美味かったよ、ありがとう小夜」


「企業の厚意ですし、食事は大事ですから」


「迷惑掛けるね、ありがとう」


「いいえ、一番苦労しているのは最前線の隊員ですから」

「巨人特殊部隊だけ中世の殴り合いですからね、司令部も理解あるので問題無いわ」


アタシが礼を言うと小夜もイブも苦笑して労ってくれた。

まあ戦争だ、皆ストレスはある、オペレーターだってドローンを通してグロ映像を1日見ているし、作戦本部付きならモンスターの生態を知る為に挙がってくるサンプルの報告書に目を通しているだろう。


一般隊員はシフトを組んで交代出来るけど、アタシらには交代要員が居ない事が問題なんだ。

ライアンはタフ過ぎて参考にならないし、アタシは叩き上げの軍人、従軍歴の短いサナに合わせるのは必然と言える。


「サナ、そろそろ起きろ、逆上せるよ」


「んー? アイス食べるぅ」


「はいはい、風呂上がりには大切な事だよな」


「「ふふふ」」


そうそう、能天気なくらいが丁度いいんだ。

アタシはサナの髪にキスを落として立ち上がらせた、やれやれ、手のかかる可愛い娘だよ。






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