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巨人になった私  作者: EVO
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東京戦線 7

作戦2日目、私、リリィ、ライアンは天王洲基地で待機していた。

空には数多のミサイル、東京湾から北へ集中的に空爆が行われている。


昨日、米日合同作戦本部の会議で決定したのは、先ず【穴】近くの区は後回しにするということだった。

先に第一級敵性生物(カテゴリー1)が居ない千葉戦線を東から西へ押し上げ、東側の区の確保を優先するのだと言う。

理由は多方面に空爆を散らすより、順序だてて区の奪還を進め、【穴】付近の激戦区に於いて戦力と火力の集中をした方が私達巨人特殊部隊の負担も減るからだ。


要は東京都を取り囲む戦線の総距離を縮めて、支援を厚くする目的だった。

南の神奈川戦線からの砲撃、空からの支援に加えて、東側からの砲撃を増やす事で戦場の安定を目指す。

まあ簡単に言うと区奪還の順番の見直しがされた形だ。


だから2日目の今日は空爆のみ、私達はバックアップとして即応態勢で待機するのが仕事になる。


「待機ってのは一番性にあわないねえ」


「あー、同感だぜ」


「そう? 私はこれでも良いけど」


と言いつつ、私は有意義に時間を使っていた。

まあ私の場合、タブレットを使ってハイスクールの予習復習をしたり、ドイツ語の動画を観たり、ママとパパにメールをしたりとそれなりにする事が多いからだけどね。

ゴオオオオ!と頭上を唸るミサイルや砲撃、着弾音は流石に気になるけど・・・


「俺も嫁と娘にメール送るか」


「なー、サナー、アタシにも構ってくれよー」


「えー? 何か動画でも観る?」


「んー、スキューバダイビングの動画有るかい? 綺麗なのが良いねえ」


「有るよ、グレートバリアリーフとかセブ島、ブルーコーナー、沖縄も割りと綺麗だよね」


「おお、良いねえグレートバリアリーフにしよう、日本の沖縄は作戦終わったら寄って行けないかねえ」


「どうなんだろうね」


帰りも宙吊りなのかな?

たった数時間で帰れるし早いから良いんだけどね、アレも。

陸と空を体験したんだから、海もやってみたい気はするね。


「よっと」


リリィは私を持ち上げると、先にチェアに座って股の間に私を収めて肩に顎を乗せる。

ふんわりと彼女の柔らかさに背中を包まれて、吐息がくすぐったい。

お腹に回された手もゆるゆると撫でられて、なんともこそばゆい感触だった。


「リリィ、くすぐったい」


「ん? 相変わらず敏感な子だねサナは」


ニヤニヤとリリィはわざとらしく首にキスを落として耳元で囁いた。


「お前ら本当に仲良いな、結婚するつもりはあるのか?」


「?」「?」


いや結婚って、何さ突然。


「2人してそこで不思議そうな顔すんなよ」


「ライアンこそ何言ってるの、私とリリィは女だよ?」


「だねえ」


「あん? 今時、女だ男だなんて結婚に関係あるかよ、パートナーはパートナーだろ」


「えっ、ライアンはそっち系なんだ」


「そっち系が何なのか知らねえけど、俺は性別は関係ねえと思ってるぜ、まあ色んな考えがあるのは理解してるがね」


「へえー、ライアンからそんな言葉が聞けるなんてアタシは驚いたよ」


「おぉん? 俺を脳筋とでも思ってんのか、大学はそこそこいい成績残してるぜ」


「いや、まあ、ていうか、それにしたってなんで私とリリィの結婚?」


「サナ、そりゃあお前、俺とランディ、アンドリューは既婚者だぜ、嫁も子供も愛してる」


「う、うん」


「ドクターは」


「アタシは悪いけどパース」

「私もちょっとドクターはちょっと・・・、ちょっと」


「お、おう、勧めるつもりは俺もねえよ、彼奴は家庭持つ人間じゃねえのは分かってるからな。

となると、アメリカ国内にはリリィとサナしか居ねえ訳だが?」


「消去法じゃん、それで結婚は飛躍的過ぎない?」


「そもそも俺らは基本的にアメリカから出れねえ、巨人同士でくっつくなら他所の国から引っ張って来ねえと行けねえ訳だが、何処の国も巨人を外には出さねえよ安全保障上な」


「普通の人とくっつく可能性もあるだろう?」


「俺はその点は反対だな、上手くいかないと思ってる」


「なんで?」


「価値観と金の問題だ、生活にしたって互いに気ぃ遣いまくる未来しか見えねえし、俺らの給料は一般的に見て大金持ちだ、桁が2つほど違う生活を継続出来るとは思えねえな」


「まあ、その可能性は高そうだけど」


「そこで、リリィとサナはどうよ、立場も収入も価値観もピッタリだ、今だって同棲みたいな生活しているし仲良いだろ、そういう事だ」


いや、まあね、私が日本を出国する時からの付き合いで、リリィとはかなり相性は良い。

一緒に寝てるし、趣味は、まあ違うけどそこは他人だからお互い干渉はしない、ホームで過ごしても大体今の体勢みたいにリリィが私を後ろから抱き抱える感じでテレビ観たりして、ほぼ家族みたいなノリではある・・・


「あれ? 家族じゃん」


「まあ、大して気は遣わないねえ」


「いやいや、客観的に見てお前らの体勢はパートナー以外の何物でもないからな?」


うーん、まあ、そうかな?

私が首を捻ってリリィを見る、リリィも私を見ていた。


「「・・・」」


「あくまで俺が感じた事を言っただけだ気にすんなよ、性別の事でも言ったが、()()なら籍を入れずに同居するパートナーだってわんさか居るしな。

俺から見たお前らが、まあそんな感じに見えたから言ってみただけだぜ」


「アタシはサナの事気に入ってるよ」


「私もリリィの事は好き、かな?」


「おう、まあ暇が悪い、大体暇ってのは余計な事を考えちまう」


結婚と言われても全く現実味がないけどね、私17だし。

・・・ああ、でも巨人になってからそういう事は全く考えた事も無かったなぁ。


「それにしてもライアンは随分理解有るじゃないか」


それは確かに思った、ヘテロやバイ、パンとか結構思想の差が大きいよね。

するとライアンは突然様子がおかしくなり「フー」と息を吐いて手を組んで言った。


「・・・娘が」


「「あー」」


察した。

なんで突然私とリリィに結婚を言い出したのかと思ったら、家のお話しでしたか。

それは親視点からすると難しいと思う、私は親になった事がないけど、それでも悩ませる話題なのは理解出来た。


「いや、良いんだ、変な野郎を連れて来るより万倍良い、幸せの定義なんざ1人1人違う、だが、・・・・・・・・・分かるだろ?」


分かる。

いや、分からないけど、理屈と感情は別物だよね、まあ伝えたい事は分かった。

私とリリィは言葉にするのもアレなので無言で頷いた。


『待機と言っても作戦中になんて込み入った話をしているんですか・・・』


それはそうだね!

止めよっか、この話題!






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