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巨人になった私  作者: EVO
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東京戦線 6

「ふー」


「なんだい、ため息なんかついてさ」


「疲れたなぁ、って」


「まあ、ね」


ピチョン、ピチョンと結露した水滴が湯面に落ちる。

私とリリィは横須賀基地に設置されたユニットバスに入って1日の疲労を解していた。

一応、米軍の方ではシャワーを設置してくれていたんだけど、日本側からの提案で巨人用のお風呂を来日合わせて急遽作ってくれたのだ。


ただ、ちょっぴり狭い。


急拵えで強度や製造期間の関係から、巨人1人分の大きさのユニットバスだ。

大量の湯を沸かすのも大変なので、2人で入って体積的に湯量の傘増しをしていた。

先に入ったリリィに私が背を預ける体勢で湯に浸かっている。


「作戦の修正はされるから、以降はあそこまでキツくはならないと思うよ」


「んー」


「サナ、寝るんじゃないよ」


「キャンッ!? ね、寝てないよ」


「寝る体勢に入ってたろ」


そりゃあ、疲労感とお風呂の温かさにちょっと気持ちいい感じになってウトウトしてたかもだけど、ネテナイヨ!

リリィは察知したのか、突然後ろから鷲掴みにされた私は飛び起きた。


「うりうり、寝るな寝るなー」


「あはは、そこはっ、ひぃ、!」


リリィの細い指が私を撫であげる、ツウーと脇腹、臍、腋の下。

バシャリと私は振り向いてガードした。


「お」


「ふっふっふー、リリィこそ、こことかどうだ!」


そもそもリリィの方が下になっているので私の方が馬乗りになって優位だ、今やられたのは背中を取られていただけでね。


「ッ!」


私の反撃を食らったリリィの表情が一変する。

何も知らないと思った?

一緒に寝てる私とリリィ、リリィはよく私を抱き枕替わりのようにガッチリ捕まえている。

だいたい先に目覚める私はどうにか脱出しようと色々試した結果、リリィに触れると反応のある箇所を把握していた。


例えば、脇腹のうっすら骨の見えるライン、つつ〜っと指でなぞる。


「ンンッ!?」


効果は抜群だ!ビクリと跳ねた。


「Hahaha! なんっ、!?」


「リリィどうしたのかなぁ? こことか、イイんじゃない?」


臍周辺とか、ヒップの上から背骨に掛けてのライン、耳たぶ、他にも・・・おっと、これは乙女の誇りに掛けて口には出せない。


「おまっ、サナ、生意気な!」


「もが、ンヒッ!?」


リリィは私を胸に抱き込むとうなじを撫で、そして同時に耳たぶにねっとりと柔温(やわあたた)かい感触が与えられた。

ぞわぞわとなんとも言えない刺激的な感覚が背中を伝う。


負けてられない!

そう思った私は胸に覆われた視界の中で手探りで反撃を敢行した。

こことか、こことか、こことか!







「何してるんですか2人とも」


私が上になったり、リリィが上になったり、体勢を変えて執拗に行われた風呂場のレスリングはそんな声に遮られた。


「はあ、はあ、はあ、・・・イブ?」


「ふー、ふー、ふー、どうしたんだい?」


「どうしたもこうしたも、風呂場から嬌せぃ・・・、喘ぎごぇ・・・、変な声が漏れていると私の所に報告が挙がったんでわざわざ来たんですけど」


「「・・・」」


「で、何してたんですか?」


「「ナ、ナニも?」」


ジトリとしたイブの眼は呆れた様子でちょっと怖い、言葉少なに私達は返した。


「ふぅ、良いですか、このバスルームは急拵えなので壁は薄い、何かやるならホームの方でして下さい、あっちは貴方達巨人に配慮して完全防音にしているので」


「待ってイブ、誤解してるけど本当に何もしてないよ、ただ擽り合い?をしていただけで、そもそもリリィが始めたんだから」


「あぁん? サナが風呂で寝ようするからアタシは」


「いやいや、リリィが仕掛けて来たから私は反撃しただけで」


「Shut up!!!!」


「「はい!」」


怖っ!


結局、私とリリィは裸で直立、イブからお説教を受ける事となった。

風紀を乱すような行為をするな、シても良いけど周囲に配慮しろ、軍は男社会って解ってる?

あ、はい、ごもっともです、はい。



***



男性の米兵から突然挙がってきた報告に私は目を白黒させた。

曰く、リリィとサナのバスルームから声が聴こえてくる、その声が尋常ではない、と。


尋常ではない?


首を傾げながらも私は彼女達のバスルームへと急いだ、同じ米兵と言っても巨人特殊部隊への接近はある程度制限されている、特にオフの時間はゆっくり過ごせるよう取り計らっているのだ。

だから、この時間彼等の住まいに近付ける人間は限られている、ましてやバスルームとなれば米軍を構成する米兵の大半は男性だから近付けない。


「あっ、」


「ほら、此処がイイんでしょ」


バシャバシャ!


「この、生意気な」


「クスクス」


「・・・」


何してるんですかね。

尋常ではない、なんて報告に来た米兵の精一杯の表現だったに違いない。

バスルームに入る、リリィとサナは裸で(バスルームだなら当然なんだけど)取っ組み合い、湯の熱気とボディソープの甘い香り、そして微かに混じる汗の匂いが否応にもこれは致しているだろうと判断させた。


「何してるんですか、2人とも」


聞けば、眠りかけたサナにリリィがちょっかいを掛けた所から事は発端していたらしい。

と、本人達が言ってもだ、肌を紅潮させ、裸でとっ組み合う2人を見たら誰だってシてると思う、私だって思う、なにそれ羨ましい、混ぜて欲しい。

黒髪アスリート体型美人のリリィと金髪碧眼トランジスタグラマー系ティーンのサナ、間に挟んで欲しい。


じゃなくて!


もう!ただでさえ戦闘で男性米兵は昂っているんだから、基地内の風紀を煽らないで欲しい。

生物だから生死に直面した環境に身を置くと、そうなるのは仕方が無いから一定の理解は有る。


私は説教して早々に引き上げた。

その際にもリリィとサナは喧嘩をしていたのもなんのその


「ほれ、髪しっかり乾かさないと風邪引くよ」


「リリィこそ、ちゃんと拭かないと」


なんて百合の花を咲かせて拭き合いっこしていた、私も混ぜて欲しい。









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