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巨人になった私  作者: EVO
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今の日本2

私が日本に何をしたのだろう?


人を殺した?

助けを求める人を助けなかった?

裏切り、逃げた?


私は人を殺してなんていない、日本に居たあの時程、足下ばかりを見ていた日々はなかった。


ママとパパを助けに行った時の事だろうか。

いくら巨人と言っても乗用車は2台、バスなら1台で手一杯になる、私1人で何が出来たか。


戦ってモンスターを倒す?

無理だ、人が道路に溢れていたのでまともに動けない、それこそ人を踏み潰して殺してしまう。


逃げたのはその通りだけど別に犯罪者では無いし、亡命先のアメリカ合衆国は私達一家を受け入れ、アメリカ国籍選択も正式な手続きによって受理されている。

裏切りとは何を指すのか私には分からなかった。


SNSを始めた当初、初期設定だとフレンド外の人からも色々と言われた。

会話はすぐに相互フレンドのみに限定、他は見えないように設定した。

だって本当に好き勝手言われた、日本を捨てて良い身分だな、税金返せよ泥棒、巨人は得だな、とまで言われた。


ムッとしたけど相手にするのもバカバカしいのでブロック、除外設定した。

私のアカウントでフレンド相互はクリスマスに知り合って仲良くなったスター、ハイスクールのフレンドくらいだ。

それに対して片フレンドしているのは今3200万人、此処で相互以外にも解放したら大変なのは分かりきっているので、今後も解放はしないと決めている。


まあ、それをリリィは知ってるから日本に行かなくてもいいって言ってくれてるんだよね。


「大丈夫行くよ、日本」


all right(オーライ)、まあサナに何か言う奴が居たらアタシが叩きのめしてやるよ!」


「ふふふ、ありがとうリリィ」


日本に限らず、アメリカにだって私が気に食わない人は居る、こんな事態に好き嫌いで行動を決める程私は子供でもないつもりだ。

日本にも良い思い出はあるし、何よりお世話になった自衛隊の人達、ちぃちゃんら友達も居る、日本の一部の人にあーだこーだ言われたから助けない、なんて子供じみた事は言わない。


「恩返しはするよ、必ず」



***



「つうわけで新装備だ」


リリィが取り出したのは、見た目は革のような漆黒の全身スーツだった。


「なにこれ?」


「マルチタクティカルスーツ、今回は移動に時間を掛けられないからね」


「移動って?」


「まあまあ、取り敢えず着てみな、ほれライアンも」


「おう」


言われるがままスーツを着用する、これキツイなぁ、全身ピッタリで喉元までギチギチと締め上げる圧迫感がある。


「どうだい?」


「苦しいような、サイズ合ってない?」


「そりゃあ加圧スーツも兼ねてるからねぇ、それ1枚でどんな極寒も耐えられるし、耐刃物、耐衝撃等々、防具としても優れた性能がある」


「ふーん、それでさっき言ってた移動に時間は掛けられないって何?」


「簡単さ、日本の作戦開始が約2週間後だから」


「えっ、そんな急な作戦なの!?」


「無計画な話じゃないんだよ、このままじゃあ東京からモンスターが溢れそうなんだ」


なんと【穴】から溢れるモンスターの数と自衛隊と米軍が間引くモンスターの数では溢れる数の方が圧倒的に多く、閉じ込め戦線の崩壊が近いらしい。

それもモンスター災害発生から現れ続けている第一級敵性生物(カテゴリー1)を全く間引き出来ていない為に、積極的に撃って出られない状況だ。


「あれ、じゃあ空爆したら良いんじゃ、日本の許可は降りたんだよね?」


「それが簡単な話じゃないんだよ、第一級敵性生物(カテゴリー1)の周囲には数十万、もしかしたら数百万の第二級敵性生物(カテゴリー2)が居るだろ?」


「うん」


「空爆を仕掛けて数を減らすのは先ず第二級敵性生物だ、それらの数が減ると・・・」


「ああ、中途半端に空爆を仕掛けると第一級敵性生物が動き出す可能性が高いのか」


「その通り、しかも、だ、定期的にモンスターを間引き続けたワシントンと違って、日本の第一級敵性生物は数を減らしていない」


「あ、第二級(モンスター)第一級(モンスター)の動きを制限しているんだ?」


「そう、奇跡的なバランスでね、だから空爆とアタシらの配置はセットだ、東京外周部から空爆を開始、雑魚の間引きと同時にアタシらがボスを倒すって事さ」


「私達が到着しないと作戦は始まらない、でも2週間後だと今すぐ移動を開始しないとダメなんじゃ・・・」


ワシントンDCから西海岸まで走って数日だ、西海岸から空母の船旅で10日から12日程、期日はギリギリか間に合わないくらいだ。


「ヒヒヒヒ、言ったろ移動に時間を掛けられないって」


リリィは意地悪そうに笑った、何か嫌な予感がしてきた。


「言っておくけど、僕は反対したよ?」


「俺は怪我をしていて良かったと思った・・・」


「・・・」


アンドリューは心底気の毒そうな顔をして、ランディは作戦から外されたことを喜んでいるようにさえ見えた、え、何が始まるんです?


「そこまで移動の事を言うなら、走ったり、のんびり気ままな船旅って訳じゃないんだな?」


「ああ、移動は空の旅だ!」


「空の旅って、飛行機? 私達が乗れる飛行機あるの?」


「有る! 所でサナはコンコードって知ってるかい?」


「コンコード? なにそれ?」


「コンコードってのは20年前まで運行されていた超音速旅客機だ、速度はマッハ2、高度5万フィート以上を翔ぶ、現代から見ても稀有な能力を持ったジェット機だぜ」


「へえー、じゃあそのコンコードに乗るの?」


「いいや、コンコードは現役から退いて20年経っている、機体の信用度を考えるとミサイルに乗った方がマシだよ」


「ん? じゃあ、なんで今そのコンコードの話?」


「開発途中のコンコード後継機を3機、米軍で押さえた、この後継機は最大速度マッハ5で翔ぶ極超音速旅客機だ」


「おー! なんか凄そう、マッハ5だと・・・、日本まで数時間?」


「ああ!ワシントンDCから西海岸まで1時間強、西海岸から日本も同じく1時間強だ」


「速っ、船旅と走って2週間超が2時間ちょっと!?」


これは凄い、開発途中って事はまだ乗った人も居ない飛行機って事だよね。


「そんな飛行機に乗れるんだ」


「・・・サナ、今現在アタシらが乗れる飛行機は存在しない」


「え?」


「だから、この機体にアタシらは吊って貰う」


「吊って・・・? え、吊っ、え!?」


「おいおい、つまんねえジョークだなリリィ!Hahaha..嘘だろ、・・・嘘だって言えよ、なあ!?」


「残念ながら本当さ、だからマルチタクティカルスーツを出したんだ」


「はっ、加圧って、まさか高度の・・・」


「お、冴えてるねサナ、正解だ、あとこれも着けるんだよ」


そうして渡されたのは目から下を覆うフェイスマスクとゴーグルだった、耳元の圧感スイッチを触ると一瞬で開閉する優れもので、超高高度の環境下での呼吸のサポートを行うらしい。


「髑髏・・・」


「格好良いだろ? スカルフェイス」


ええ・・・、なんでマスクの柄が髑髏なの、不吉じゃない?

可愛くない、せめて色塗っても良いかな、ピンクとか・・・?


もう、この際吊られて飛ぶのは仕方ない、良いよ、うん、飛行機に吊られて移動なんて中々経験できない事だもんね、HaHa!!(裏声)





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