表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨人になった私  作者: EVO
54/119

今の日本

「日本へ?」


「ああ、アタシとライアン、サナが派遣候補に挙がっている」


「ランディは怪我、アンドリューは?」


「その他能力や技能、経験を考慮した結果だね、流石に国内の巨人部隊全員を日本に派遣は出来ない」


ある日、部隊の定期ミーティングで巨人特殊部隊の日本派遣の話が挙がった。

候補の隊員は3人、リリィとライアン、そして私だ。

指揮・隊長格のアンドリューとリリィの内リリィが、歩兵のランディとライアンは鎖骨を折っているランディが怪我の具合から除外、私は日本語が出来るのでスムーズな自衛隊との連携の都合上候補に挙がっていた。





今の日本、東京の状況は良くない、いや最悪と言っていい。

私がママとパパを板橋で救助、在日米軍横須賀基地へ逃れたあの日、【穴】から溢れたモンスターの群れは東京を蹂躙した。


事前に発砲の許可、準備をしていた攻撃ヘリを除き、【穴】の封鎖任務に当たっていた自衛官は逃げ遅れた民間人の盾となってほぼ全滅、犠牲者1200人を数えた。


また、()()()()()()()()()()()()()は、その人口密度が仇となりモンスター災害によって甚大な被害を被った。


アメリカで報道された内容だと民間人の死者・行方不明者は約400万人、怪我人は軽傷者重傷者合わせて約130万人と言われている。

首都機能は麻痺、日本の政治や経済の本部機能が一極集積してた為、大きな混乱が日本を襲った。

この辺りは施設が揃っている神奈川に一部、また距離の離れた京都に残りを移転する事で混乱を治めた形となる。


モンスターに支配される事となった東京に対して、同盟国のアメリカ合衆国は即座に支援を申し出た。

この支援というのは軍によるモンスター掃討作戦や被災者への人道支援等、多岐に渡るものだった。


しかし日本からの返事は「行方不明者が居るので掃討作戦は待ってほしい」というもので、これには在日米軍、本国の国防総省、ホワイトハウスも困惑したと聞いている。


勿論アメリカ側も行方不明者・生存者の可能性は理解している。

困惑したのは「救出の為の歩兵が、モンスターを倒すのに市街地で発砲すると民間人に被害が及ぶ可能性がある」と日本側から言われた事だ。


日本が初期の混乱から立ち直り、アメリカとまともに話が出来るようになったこの時点で既に災害から10日が過ぎている。

時間経過は生命の目減りそのもの、やるなら今すぐ歩兵を投入するべきだ、撃つ撃たないの段階はとうに過ぎている、とアメリカ側は主張した。


この時、アメリカ合衆国首都ワシントンDCでも同様のモンスター災害は起きていたけど被害はそこまで大きいものでは無かった。

銃社会のアメリカでは国民一人辺り一丁の銃を所持している、そのお陰か初動で地元警察と民間人によって相当数のモンスターが倒されている。


更にホワイトハウスは州兵と陸軍、海兵隊を速やかに投入、取り残されていた人達の救出を数日以内に終えていた。

モンスター災害に限らず救助は時間との勝負で、時間が経てば経つほど生存確率は絶望的となる、ワシントンDCでも死者・行方不明者は居るけど、流れ弾や誤射による負傷者の方が遥かに多かった。




その後、日本の対応は先ずモンスターの封じ込め、東京から外へ出さないよう自衛隊を配置。

並行して、災害時の混乱で大渋滞を起こした放置車両の撤去作業と救助隊の編成。

しかし此処で作戦は躓いた、放置車両の撤去に手間取って計画通り進行しなかった。


ワシントンDCでも放置車両は問題だったけど、アンドリュー、ライアン、ランディ、ドクター、4人の巨人による活躍で車両は迅速に排除された。

神速とも言える救出作戦は巨人部隊あっての速度だった。


道路が空けば戦闘車両と護送車両が動かせる、戦闘車両と歩兵が連携してモンスターを排除、モンスターの死体は巨人部隊が適宜取り除いて道を確保した。






日本に、巨人は居なかった。






在日米軍も車両の撤去と寄ってくるモンスターの排除を手伝っていた。

早くは無かったけど、それでも一人二人と堅実に救出隊は結果を出していた。


そこに第一級敵性生物(カテゴリー1)が現れた。


災害初期に現れたのは小銃程度でも対処出来る大量の第二級敵性生物(カテゴリー2)、中期とされる時期に現れた第一級敵性生物(カテゴリー1)はアメリカでミサイルをしこたま撃ち込むことで漸く倒せると情報は共有されていたので、自衛隊、米軍共に即座に撤退。


第一級敵性生物を倒すには空爆するか、巨人の質量と力による討伐しかない。

しかし東京には数百万人の行方不明者が居るので空爆の判断は難しい、巨人部隊はアメリカでも必要だ、日本に回す余裕は無い、行方不明者の捜索にはモンスターの排除は必要不可欠。

流石のアメリカも必要だからと言って東京を勝手に空爆する訳にはいかない、だから決断は日本に任された。


日本が結論を出すまで時間が掛かった、ひと月経ち、ふた月経ち。

・・・そうしてアメリカの巨人特殊部隊の派遣の目処が立った、日本が空爆を決断をしたのがここ最近、という話だった。

災害発生から半年以上、行方不明者は既に死者数にカウントされている。



「サナ、大丈夫かい? 断って良いんだよ」


「え? あ、違う違う、ちょっと日本の事を考えていただけだから、大丈夫だよ」


考え込んでいた私は余程悩んでいるように見えたのか、リリィは心配そうにしていた。

あくまでも派遣候補なので嫌なら断って良いと言う、リリィが私を慮るのには理由がある。

日本での体験、そして渡米した際の私への()()()()()だ。


モンスター災害を切っ掛けに渡米した私はそのタイミングから、日本の一部のネット上と報道機関から「逃げた」「裏切り者」との声が挙がっていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ