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巨人になった私  作者: EVO
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映画

「Hi!サナ、映画楽しみにしてるわ」

「俺も必ず観に行くよ」

「ふふ、同級生が映画デビューなんて凄いわ、サイン頂戴!」


「あ、ははは・・・」


ハイスクールでは会う人会う人、映画を必ず観に行くと声を掛けてくる。

先生も生徒も、通学途中の街中でも誰も彼もが観に行くと言う。

よくよく考えるとみんな映画が大好きだし、映画を観て楽しんだ上に、その収益は寄付に回るとホワイトハウスから発表されたから、ボランティアが生活の一部に溶け込んでいるアメリカでは上手いやり方なんだと改めて感心した。


恥ずかしさが強いけど、まあ発表されて動き出しているプロジェクトなので仕方ないかと私は折り合いをつけた。

それはそれとして勉強もチアリーディングの練習も頑張らなきゃね!

因みに私達巨人部隊は公開日前日に行われる基地での上映会で映画を観ることになっていた。



***



「・・・」


悔しいけど面白かった。

ジョセフさんによると、ハリウッド御用達のベテラン編集に依頼して作り上げたらしくて完成度はかなり高い。

普通にエンタメしてるの、ただ自分が登場するとどういう感情で観ていいのか私の情緒が行方不明になってしまうのが問題だった。


ライアンとランディは元プロスポーツ選手だけあって、自分の姿を観ていても寧ろ誇らしげなので、そのメンタル羨ましいよ。

アンドリューは家族とにこやかに観ていたし、リリィは・・・、割りと私に近い感じは見受けられたけど、それでも誇らしげな感じはある。

ドクターは名誉とか誇りとかあまり興味無いのか、いつもと変わらない様子で鼻で笑うとスタスタと出て行ってしまった。


「ジョセフさん、これブルーレイは出るのかな?」


パパは嬉しそうに円盤の発売日を確認しているし、ママは心配させているのもあって何か言いたそうにしていたけど、結局可愛く映ってたと褒めてくれた。


問題が起こったのは週が明けてハイスクールへ行った時の事だ。


「ごめん、サナ」


「何? アリッサ」


開口一番アリッサが謝ってきたのだ、周りのみんなもどこか気まずげというかバツが悪い表情でいる。


「Ah...私、分かったつもりだったみたい、サナがあんな大変な事していたなんて、ニュースだけで知った気になって、本当の意味でサナが置かれた環境を理解していなかったわ、だから、ごめん」


映画公開前の反応から、私はてっきり「WOW、とてもエキサイティングな映画だったわ!」みたいな感想が来るものだと思っていた。

実際の所は、クラスメイトの私が血と泥に塗れ、過不足無い真実の戦いを観て大きな衝撃を受けたみたいだ。


確かにライアンはアーマーが潰れる程の殴り合いで顔を腫れ上がらせた、ランディは左鎖骨が折れ、アンドリューは瓦礫に埋まり、リリィも大怪我を負った。


私は幸い怪我らしい怪我を負わなかったけど、それでも失明しそうなシーンはあったし、泥の巨人の一撃をガードした時は150mくらい吹っ飛ばされたなとあの時は思っていたけど、ドローンの映像を観ると300mは軽く飛ばされて地面を転がっている。

電柱や放置車両、看板が紙のようにちぎれ飛び、潰れるシーンもあった。


私達、巨人部隊と軍はある意味で感覚が麻痺していたのだろう、アリッサが、一般の人が受けた衝撃は大きいものだった。

朝の通学の時だっていつも陽気な街の人の様子がおかしかったのもこういうことかと納得する。


「アリッサ、ありがとう」


「え?」


「私ね、アリッサにチアリーディングのトライアウト誘われた時とても嬉しかった。

周囲に迷惑を掛けそうだから運動系は無理って言った私にアリッサは言ったね、「そんな事気にしてるの? なんとかなるわ」って」


「ごめん、軽はずみな発言だった、サナの力を考えるとサナの考えを簡単に否定するのは間違っていたわ」


後悔してると言うアリッサに私は首を振って続ける


「違うよ、アリッサの言う通り「そんな事」だった、周りを気にして諦めていたのに、トライアウトを受けたら全部解決したでしょ?

アリッサの言う通り「なんとかなった」の、だからありがとうアリッサ。

しかもチアリーディングクラブのみんなも私を受け入れてくれて・・・」


「サナ・・・」


「私は巨人サナだった、軍人サナだった、でも此処では普通の高校生サナで居られた」


私はそっとアリッサを持ち上げると優しくハグをした


「だから、ありがとうアリッサ、みんなも、私は大丈夫、誰かに強制された訳じゃない、自分で選んだ道だから」


私は素直に自分の気持ちを伝えた、みんなが私に対して同情したり、後ろ向きな感情を抱く必要は無い。


「・・・」


って、みんな喋らない、・・・空気が重い、どうしよう?


「サナ」


「ん、何?アリッサ」


「映画の貴女、最高にイカシてたわ」


「!、ふふ、でしょう? 目指すはハリウッド女優!」


「なら私はノーギャラ友情出演しても良いわ!」


ニヤリと笑って言うアリッサにノッた私は冗談を飛ばした。

そうそう、確かに大変な想いもしているし辛い体験もあった、でもこれまでの事ひとつひとつが私の今の立ち位置を作ってくれている。

同情されるよりもハイスクールのただの友達として付き合える関係、それを理解してくれたみんなは明るく笑って映画の感想を言い始めたのだった。






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