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巨人になった私  作者: EVO
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私達が成した事

「え、ホワイトハウスに?」


「ああ」


「戦勝記念の演説をホワイトハウスでやるらしいな、で、そこに俺らも呼ばれてる」


戦勝記念は分かる、あの新型モンスターの泥の巨人を倒してからというもの【穴】から現れるモンスターの頻度がガクッと落ちたらしい。

いつまでもワシントンDCがモンスターに支配されているというのは国として体面が悪いので、大統領自らホワイトハウスまで赴いてワシントンDC奪還の成功を宣言、国内の不安を払拭する狙いだとか。


「私達、全員?」


「どうやら僕らの怪我の回復も待っていたみたいだね、常々叙勲の話が挙がっていたから、叙勲と国内国外へのアピールも含めたセレモニーみたいだ」


「へー、叙勲ってことは勲章貰えるんだ、凄いね」


「何を他人事のように言ってるんだサナ、辞退したドクター以外全員叙勲されるんだよ!」


「え!私も!?なんで?」


「なんで、って、サナ、キミは泥の巨人を2体も討伐しただろう、試算では泥の巨人が倒されていなかった場合、甚大な被害が国民を襲っていただろう、って報告が挙がっている」


「ついでに特進も決まってるからね、サナは准尉、アンドリュー、ライアン、ランディは少尉、アタシは中尉になる」


「准尉? なんか凄そうだね・・・」


「最年少、陸軍史上最速の尉官就任だ、やったなサナ!歴史に名を刻んだよ!

まあ階級の前に「名誉」が付くけどね」


「What's!?」


「サナ、驚くのはまだ早いぜ、勲章はあのシルバースターだ!」


「シルバースター?」


「おう!敵対する武装勢力との交戦において勇敢さを示した者に授与される勲章だな!」


「まあ雑な言い方をすれば戦場での活躍を認められた者に与えられる栄誉だね」


「やったなサナ!アメリカ歴史上、最年少のシルバースター受勲だよ!」


「oh...」


言葉もないとはこの事だね、話が大き過ぎて着いていけない。

ライアンはHero!Hero!とハイテンション、アンドリューもリリィも嬉しそうだし、あのランディでさえ誇らしげに微笑んでいる、とても名誉なこと、なんだよね?

私もドクターと一緒に辞退・・・、え、実働部隊はダメ? 絶対受けろ? そうですか、はい。




「サナ・サトー准尉、おめでとう、君はアメリカの誇りだ」


「I am honored, Mr. President.(光栄です、大統領)」


はい、という訳でやって来ましたホワイトハウス。

うーん、まさか映画でよく聞くフレーズを自分が言うことになるとは人生って本当に分からない・・・


ホワイトハウス前には数万人の民衆が集まり、大歓声と共に私達は祝福された。

事前の打ち合わせ通り、大統領が立つステージの背後に私達巨人特殊部隊守護者(ガーディアン)5人が並んで正立していた。

大統領の演説の後、受勲式へと移る、1歩前へ出て敬礼、光栄です大統領と答えて、元の位置に戻る、それだけだ。


「さて、皆最後に聞いて欲しい」


大統領が徐ろに話を始めた、あれ、もう終わりじゃなかったっけ? こんなの予定にあった?


「ホワイトハウスプレゼンツ、巨人特殊部隊守護者(ガーディアン)の活躍を2時間にまとめたスペシャルムービーを全米で公開することが決定した!

これらの映像は軍で記録した、演出の無い真実を記したものだ、是非彼らの活躍を観て胸に刻んで欲しい!

映画の収益はモンスター災害の被害者救済と巨人である彼らの支援に使われる、以上だ!」


「「「ウオオオオオオオオ!!!」」」


なんだって?


ビリビリと大気を震わせ、地響きのように熱狂する民衆の声を前に、私の困惑は頂点を迎えた。



***




「ヒュー!ストライクだぜ!」

「Gruaaaaaaaa!!!!!」

「勝つんだ、彼奴を倒して」

「みんなと帰るんだ、絶対に!」

「ハァァァァァァ!!!」


「ギャフン!!」

「どうした!?」「サナ!?」「何があった!」

『サナ転倒しました! サナ転倒!』


守護者達(ガーディアンズ)、coming soon』ドーン!!



「なにこれ・・・」


大統領の演説直後、予告のPVが動画サイトやSNSで公開された。


「よく出来てるじゃないか!Hahaha」


「いや、えぇ・・・、私多くない?」


60秒のPVの中ではメンバー紹介で部隊全員のセリフ一言と名前のテロップが流された。

で、その後は普通の映画と同様に早く短いカットでハイライトの様に作戦行動が映っていた、中でも私の出番がやたらと多い。


「映画に主人公は必要だろ?」


「私!?なんで!?」


「うーん、画的に? ランディとライアンはそれぞれMLB.NHL時代にハリウッドデビューしてんだよな、チョイ役だけどクソ演技でアイツらはダメだ、アタシは柄じゃないし、アンドリューもなぁ、つうわけでサナが主人公になった、とジョセフに聞いた」


「ジョセフさん!?」


「ああ、まあダラダラ記録映像流してもウケないだろう? それなりに映画の形を取らないとチャリティーにもならないし」


「大統領は演出の無い真実って、言ってたのに!」


「その通り、演出は無いよ、編集をしただけだから」


「ウソっ、大人って汚い!」


「Hahaha!」

「Hahaha!」


ジョセフさんもリリィも一緒になって笑った、ちょ、えぇ・・・?

しかも最後のカットで私がすっ転んだ所も入ってたんだけど、そこはカットしてよ!


「大丈夫、先に完成したものを観たけど、よく出来てる、映りも良かったし最高のムービーだよ。

実際、あの時の映像メインな訳だけど、サナのドジはコミカルで魅力的だし、たった数時間の間に苦悩と成長も描かれて、臨場感たっぷりのパルクールアクションだろ、本物のミサイルの爆撃、ド迫力の戦闘と刀のアクション、最後は大勝利で星条旗を羽織る、完璧だろ?」


「ヒュー! 完璧なハリウッド映画だねサナ!」


「ドローンとカメラを大量投入した甲斐があったよ」


「その為のドローン!? 部隊支援じゃなかったの!?」


「支援()、記録撮影()やっていたのさ」


「あぁぁぁぁ・・・」


私はガクリと膝を着いた、公開後とかハイスクール行きたくないんだけど!


「サナ、すまないけどこのプロジェクトは巨人という存在の地位向上も兼ねている、キミが派手好きじゃないのは理解しているけどね」


「地位向上?」


「東海岸とワシントンDC周辺は【穴】とモンスター災害の興味が高い、だから巨人の受け入れも好意的で順調なんだ。

でも大陸中央部と西海岸は遠過ぎて他人事なんだよ、巨人をフィクションだと思う人も居るし、存在を否定する過激な話も聞こえてくる」


「随分性急な話だなと思っていたけど、だから全米公開なのか」


「アメリカはその広さ故に巨人を受け入れるにも懐の大きさを見せた、しかし大きさ故に情報のリアリティを感じていない人もまた多い。

映画なら誰でも観られるだろ? 」


ジョセフさんの言う通り、アメリカにとって映画は最大の娯楽なのでホワイトハウスの戦略は多分間違っていない。

その土地の映画館によって価格差とサービスの差はあるものの、1.5ドルから15ドルくらいで映画は観られる。

ニューヨークのタイムズスクエア辺りの映画館は高いし、田舎の小さな映画館は2ドルや3ドルなんてのも有るくらいだ。

多くの人に周知する、その手段として映画を使うのは有効だと誰でも理解出来た。






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