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巨人になった私  作者: EVO
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戦闘2

「ランディ!!」


「っ、構うな!」


「Gyyyyeaaa!!!」


「ぐっ」


首にマチェットが食いこんだ泥の巨人が暴れ出した、ゴッとアタシの頬に拳が当たる。


「こンのぉーーー!!!」


アタシは力任せにマチェットを振るい、ビルの壁に奴を押し付けると柄と刃を両腕で押し込む。


「Gugggyyyyy」


ヤツは暴れ、右から左から拳がアタシを打ち付ける、ほぼ手打ちの腰の入っていないパンチだ、大した事ない、と言いたい所だけど、馬鹿力だけあってかなり効く。


骨は相当硬く全然押し切れる感触がない


「バカな・・・、完全に極まっていたのに」


視界の端では押さえ込みを極めていたアンドリューが力づくで持ち上げられていた、首を抑え、腕を固めたあの体勢から巨人のアンドリューを持ち上げるだと?


バケモノめ!


立ち上がったヤツはアンドリューを捕まえると力任せに地面に叩き付けた。


「ガッ、ハ・・・」


アスファルトが粉々に砕け、アンドリューは肺から空気を吐き出した。

ヤツは止まらない、衝撃で動けないアンドリューの襟首を掴み持ち上げると今度はビルの壁へ叩き付ける。

コンクリートは砕け、アンドリューは崩れた瓦礫に埋まってしまう。


グギュ・・・、鈍い音と痛みがアタシを襲う、押し込んでいたヤツの膝がアタシの脇腹に刺さっていた。


「ゲホッ」


マズイ!良いの貰っちまった!だけど離れる訳にはいかない、コイツだけでも倒さないとアタシらは全滅しかねない。


「Sit! 退け!!」


ライアンの方は中々槌が当たらず苦戦している、当たればデカイが、どうしても大振りになる槌は反応の良い泥の巨人とは相性が悪い。

しかし堅いヤツらを倒すには槌は必要だ、なんとも上手くいかない話だ。


「Grrruuuu!!!」


「ぐっ、」


やられた脇腹は骨が折れていそうだ、重ねて振り回す拳が頬と脇腹にも力任せに殴られてくずおれそうになる。


「リリィ!」


押し切れないアタシの元へランディが警棒を振りかぶって来た、それを見たアタシは察して刃の方から手を離す。


ガキン!!


ランディはマチェットを警棒で叩き火花が散った、しかし全く動かなかったマチェットは僅かに食いこんだ。


「ぐぅぅっ」


鎖骨が折れたランディの顔色はかなり悪い、振るのも辛いだろうに痛みを堪えながら何度も何度も警棒でマチェットを叩き、そして骨を断つ感触を感じると漸く泥の巨人は動きを止めたのだった。


ついホッと息を吐いたのが悪かった、アタシは膝を折り動けなくなってしまう。

アンドリューの方の泥の巨人がこちらへ狙いを定めているのが見えた。


「ランディ、逃げな」


「バカを言うな、リリィこそ逃げろ」


「ゲホゲホッ、アタシは、走れない・・・」


脇腹がやられたのもあるし、しこたま殴られたせいか地面が揺れている。

ランディはアタシを一瞥すると警棒を構えた、そう言えば鉄球を投げて来たヤツは、と見れば、遠くからこちらを見ていた、まるで観察するかの様子にアタシは嫌な予感が、


「やらせるかよ!!」


ライアンが相手をしていた片腕を折られた泥の巨人が投げ飛ばされて、もう1体の泥の巨人を巻き込みもんどりうった。

ライアンは槌を手放してノッシノッシと歩みを進める。


「ライアン!?」


「あん!? ああ、当たらねえモン振り回してたって仕方ねえだろ」


そう言うとライアンはゴツゴツと拳骨を合わせて笑った。


(コイツ)なら当たる、多少ヤツらは硬ぇが、倒れるまで殴りゃあ倒せるだろ、おいアンドリュー!いつまで寝てんだ、立て!」


「・・・いつつ、土葬されるっていうのはこういう気分なのかな」


ライアンの問い掛けにアンドリューは瓦礫を押し退けて立ち上がった、流石にボロボロだけどアタシとランディよかマシな様子だ。


「どうせ数十年後にはみんな土の下、寝るのは後だ、生き急ぐ位で丁度良いんだよ!」


「ははは、僕はゆったりと生きて行きたい派だからね、だけど、生き急ぐかどうかは置いといて、寝てはいられないようだ」


血の塊を吐き出したアンドリューは警棒でトントンと肩を叩いて巨人と向き合った。

2対2、・・・いや、この状況で怪我が痛むなんて座ってられない、アタシは呼吸毎に痛む脇腹を無視して何とか立ち上がった。


「ぐ、っぶふー、痛くないっ」


少なくともアンドリューとライアンが2体を倒すか行動不能に追い込むまでは、様子を窺っている巨人の参戦は防がなければならない。

ここでヤツに加われたらアタシらは確実に全滅するだろう、なんともタフな状況だった。


『Yeeeeeah-haaa!!!俺達にも格好つけさせろ!Kitten(子猫ちゃん)


その時だった、轟音と共にミサイルが離れたヤツにぶち込まれたのは、ビリビリと空気が爆発を伝えてくる。

距離は150mも離れていない、アタシら巨人にとっては目と鼻の先、こんな至近距離での航空支援は通常有り得なかった。


『Hahhaaa!!どうしたよ守護者(ガーディアン)随分ボロボロじゃねえか!』


「うるさいねぇ・・・、はしゃぐのは勝手だけどアタシらに当てんじゃないよ」


『Hahaha!ケツに火がつかない事を祈って寝てな!』


空の奴らは軽口が多くていけ好かない、至近距離の爆撃はどうも背筋がゾワゾワとして落ち着かないが、それでも有り難い援護だった。

泥の巨人は腹を抱えるような体勢で丸まり爆撃に耐えている、足止めとしては十分だ。


「オラァ!!」


そして爆撃を開始の合図にライアンと泥の巨人の殴り合いが始まった。







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