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巨人になった私  作者: EVO
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異変2

インカムから戦況が伝えられてもイマイチ私には分からない。

ただ事前の勉強では聞いていたし写真でも見せられたけど、アメリカの第一級敵性生物(カテゴリー1)には狼やダンゴムシ、巨大アナコンダ、蠍などが確認されている。


私が実際に見た事あるのは蛇の集合体、アメリカで言う蛇玉(スネークボール)だけだ。

まあどれにしてもかカテゴリー1は空爆で倒しきれないので、巨人特殊部隊守護者(ガーディアン)が相手をする事になるのだけど・・・


正直、気になる、写真や動画では見たけどね、どんなものか本物を見てみたい。


「・・・イブ、ちょっと見晴らしのいい所から皆を見てみたいんだけど」


『サナ? 待って・・・』


ダメかな? 遠くから見る分には良いんじゃない? って思うんだけど、作戦行動中だから勝手な事は出来ない。


『Yes.許可が降りました、ビルに登ることを許可します、しかし現場には決して近付かないように』


「ありがとう」


『見る事も経験です、無理はしないように』


はあ、と深いため息をついたイブは指揮車で何か言われたのか、あっさりと許可が降りたのだった、やった!


早速私は近くの30階建てくらいのビルにジャンプして飛び付いた、ガシャンとガラスは割れてしまったけど体は身に付けた装備のお陰で痛みも怪我もない。

そのままガシャンガシャンとガラスを割りながらクライミングをして、あっという間に屋上へと上がった。


眼下には真っ黒に広がる【穴】と空爆によって更地になった土地、そして瓦礫と崩れ掛けた建物が混在していた。


HUDのサポートでリリィ達が何処にいるかは簡単に見つけられる、1km程先の出来事だけど巨人の私の目にはちょうどいい距離で十分に視認出来た。


狼はとても素早く、危ない!と思った場面も多い、それでもアンドリューが前へ後ろへ周囲のフォローして全体の連携を保っているように見えた。

ランディは正確なピッチングで敵を仕留めたり牽制したりと、中・遠距離で力を発揮。

ライアンは頑丈なボディーアーマーで敵を引き付け、パワフルな槌の攻撃で硬そうな敵をやっつける。

リリィはマチェットで素早い敵に対処、見ているとパス!と言わんばかりに蹴っ飛ばしてライアンに押し付けてるシーンも多い。


「凄い・・・、これがみんなの戦い方」


『Ya.今日は少し数が多いので苦戦気味ですが、概ね安定的に推移してる』


風が頬を撫でる中、私はみんなの戦いをしっかりと目に焼き付けた。


***


「Heyサナ、そろそろ武器の替えを頼む、切れ味が落ちて来た」


「こっちも警棒が曲がって力が入らない、頼むよ」


「俺は水を頼むぜ」


「球」


「はい!」


声が掛かったので私は少し低い屋上へと飛び移りながら現場へと移動を開始する。

ダンッダンッダンッ!と床に亀裂は入るものの、抜ける事は無かったので無事みんなの所へ駆け付けることが出来た。


「ふー、やれやれ」


「いちいち拠点に戻って武器替える必要が無いのは楽だね」


「そうだねえ、特にランディの球を補充出来るのは大きいね」


「ああ、今日は特に数が多いからな」


マチェットは刃が欠け、べっとりと体液が着いている、これでは確かに切れ味は落ちる。

警棒もぐにゃぐにゃだし、ランディの球は半分近く減っている、まだ敵の残りは20程居るのでこの度に補給部隊へと戻ってを繰り返していたら効率は悪い。


補給線を伸ばせば解決しそうな問題でも、【穴】に近付くほど空爆の影響で道路の状態は悪い、ただでさえ大きくて重い私達の武器を積んで運ぶのは困難だ。


「サナ、携帯食もくれ、食っとくわ」


「はーい」


みんな腰を下ろして休憩がてら水を飲んだり携帯食を食べたりする、私はボロボロの武器を回収して新しい武器を渡し、ランディの鉄球を袋いっぱいに補充した。

その時だった。遠くからズン・・・、ズン・・・、と何かの足音のような音が聴こえてきたのは。


「何?」


「シッ! コマンダー、状況の確認を」


『・・・なんだコイツは、』


突如起きた異変に弛緩していた空気が張り詰める、みんな立ち上がって武器を握りしめた。

アンドリューが指揮車へ問い合わせしても、動揺した声が帰って来ただけで明確な返答はすぐに帰ってこない。

その間にも足音は大きくなっていた、ズン、ズン、という音からドンドンドンドンドンと変わり、ドッドッドッドッドと()()音が確実に此方へと向かっていた。


『此方コマンダー! 【穴】から新型が現れた!最大限の警戒を!敵は、』


指揮車の切羽詰まった声と、ドォンッ!とビルのコンクリートの壁が吹き飛んだのはほぼ同時だった。


「もう見えてるよ、敵は・・・」


砕けたコンクリートの粉末がもうもうと上がり、壁の先から現れたのは


「巨人だ、クソッタレ」






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