巨人達、サナを語る
「で、どうだいサナの様子は?」
「僕から見た感じだとキュートでマジメ、あ、訓練の話? ・・・速いね」
「だな、スピードとクイックネスは大したもんだぜ、巨人のアメフトがあるなら最高のランニングバックになれるだろうな」
「最近は投擲も中々当たらなくなって来た、目も良いだろう」
アタシが話を振るとアンドリュー、ライアン、ランディから忌憚ないサナの評価が挙がった、彼女の成長は著しい。
「足が速いのは助かったね」
新兵の足が遅いのが1番困る、特にアタシら巨人特殊部隊のやっている、中世の戦争と言っても差し支えない歩兵の殴り合いは。
「新人教育の進行具合から、折を見て現場には連れて行っても良いと思うよ僕は、ポーターならそこまで危険も無いだろう?」
「サナも日本で現場には出ていたんだろ?」
「ほぼ無援護でな、いや、報告書を確認したが寧ろ足下でちょろちょろと邪魔さえしてるとも言える」
生真面目なランディは片眉を上げて不愉快そうに吐き捨てた、確かに巨人を使う割にはお粗末な配置と作戦だと言わざるを得ないのが日本の自衛隊のやり方だった。
「第二級敵性生物、第一級敵性生物共に実戦経験済み、そういう意味では一般米兵の新人よか安心して任せられるねえ」
対モンスターへの米軍の基本戦術は遠距離、高高度からの爆撃のみ、これらで数の多い第二級敵性生物を減らし、巨人特殊部隊が残りの第一級敵性生物を叩く。
その為、一般歩兵はベテラン新兵問わずモンスターと戦った経験はほぼ無い。
「まあ習うより慣れろ、だろ? アメフトもベースボールも警察も米軍も皆一緒だ、新兵のケツは俺ら大人がキッチリ持つさ」
「だね」「ああ」「勿論だよ」
ライアンが締める、コイツはアメフト時代からリーダーシップがあって面倒見が良い。
まあサナのデビューも年越しして冬が開けてからだ、今から本格的に冬を迎えるからまだまだ先の話、それでも今時点で概ね現場へ出せるレベルまで習熟は進んでいた。
「ところで装備の完成は?」
「そろそろ上がる予定だよ、最後発だけあってかなりイイ物だね」
「へー、サナの武器って何になったんだ?」
「日本刀だよ」
「マジかよ!俺もカタナ欲しいぜ!」
「ライアン、アンタは戦闘槌が有るだろうが」
元々長物の武器製造は計画されていた、モンスター相手にするとなれば扱いやすいのはアックスかソードと選定は進んでいたけど、そこへサナの加入だ。
サナの身体特性に合わせた武器となるとあまり重い物は持たせたくない、軽くて扱いやすくポーターの動きも阻害しない、両刃のソード案もあったがアタシらは甲冑を着ている訳でも無いので片刃が良い、これらの条件から日本刀に決まったのだった。
話によると何度も折り曲げた機械鍛造で、素材は硬く、しかし粘り強くもあり、表面に特殊コーティングを施した事で100年は錆びずに戦い続けられると豪語する日本刀らしい。
アタシが使うマチェットの数倍の予算を注ぎ込んだらしいが、それでも空爆より遥かに安く済むので、大小二振りを試作、後に量産化の予定まで既に動き始めている。
アタシらの装備を担当する奴らはどこかネジがぶっ飛んでいるらしく、嬉々として設計製造、ありとあらゆる努力を惜しまないらしい。
話によると「ロマンだ」「ガンダ・・・、いやマジン・・・」「金髪碧眼のキュートな女の子が巨大な武器使うの萌える、・・・萌えない?」「はぁはぁ、あの子の使い潰したブーツに入ったんだけど新しい扉開いちゃった」「ミツルギstyle使ってくれないかな」「好き」
・・・考えるのはよそう、物は確かだ。
「まあ、そんな事より、アレの準備は?」
「僕の方は大丈夫だよ」
「俺もバッチリだぜ」
「問題無い」
何をするにもアタシらには準備期間が必要だ、冬も目の前だし早めに手配をしておかないと何も出来ないからねぇ。
皆、家族持ちなだけあってその辺りの手落ちは無い、ドクターにも声を掛けたけど大型タブレットと睨めっこして生返事だったから、あまり期待は出来ないだろう。
さて、これから忙しくなるね!




