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巨人になった私  作者: EVO
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ジャイアントキャノンボール

ドドドドド、荒野に地響きを唸らせて私とリリィは駆けていた。

日本から船旅で到着したアメリカ西海岸サンディエゴ基地からワシントンへ向けて移動の為だ。




現在アメリカ合衆国には巨人が6人存在する、元々アメリカに現れた巨人である5人と日本から渡米して来た私だ。

アメリカの巨人は全員米軍の巨人特殊部隊所属で、私と一緒に居るリリィを除いた4人はワシントンDCにある【穴】から湧き出るモンスター討伐任務に着いているらしい。


米軍による空爆で殆どのモンスターは倒されているけど、大半は第二級敵性生物(カテゴリー2)と呼ばれるモンスターで、第一級敵性生物(カテゴリー1)と呼ばれる一際強力なモンスターには空爆の効果が薄く、巨人による格闘戦で討伐対応がメジャーなのだとか。

一先ず、巨人部隊に合流する為に私達は一路ワシントンへと歩みを進めていた。


日本からアメリカへの船旅の間に私の服と履き物を用意してくれていたのでそれらを身に着ける。


「サイズはどうだい? 重さは?」


「うんピッタリ、ちょっと重く感じるけど慣れれば大丈夫だと思う」


踏み抜き防止の鋼板と特殊カーボンで編まれたブーツは、これまで履いていた日本の足袋と違いガッチリとしていてとても安心感があった。

その分重いけど、これなら何かを踏んで怪我をすることは無いと思う。


黒のアンダーレギンスと迷彩柄のショートパンツ、アンダーシャツに長袖のジャケットは特殊繊維で耐腐食性、防刃防弾性を高めた専用品だ。

同じく特殊繊維のグローブを手に、更に手首から前腕まで覆うガントレットはロケットの外装に使用されている軽くて頑丈な素材で出来ている。

襟と胸元には階級章と勲章が配され、米軍人としての活動の場合はこの格好が正装となる。


「まあ靴も服もワシントンに行くまでに(こな)れるだろ、ガンガン使って、違和感ある所は指摘するんだよ」


「うん」


という事で、アメリカ西海岸サンディエゴ基地を出発した私達は一路ワシントンへと走り出したのだった。


「まさか21世紀にもなって主要な移動手段が徒歩とはね、まあトレーラーに載って移動は楽だけど晒し者にされるし、遅いし、こっちの方が楽だわな」


「う、うん」


西海岸からワシントンDCまでのアメリカ大陸横断の旅

は約4000km強、車なら1日1000kmの移動で4日から5日の距離を移動する。

ハイウェイを横目に私とリリィは走りながら会話をしていた、驚くべきは巨人の身体能力だ。


私は日本ではまともに走った事がない、・・・ママ達を助けに行った時は道路や電線、人や車、建物、足下を気にしながらで決して平坦な道のりでは無かった。


今はだだっ広い荒野やハイウェイ横を全力で走っているのだけど、ハイウェイの車を置き去りにする速度で走れる上、殆ど疲れ知らずなのだ。

息はそこそこ上がってくるけど、それだって100km200km走っての話、フルマラソンなんて目じゃない距離と時間で1日目は1200km程移動して終わった。

一応、旅程はアメリカ軍基地を拠点にしていくので、寝泊まりと食事、トイレに困る事は無かった。


「サナ、足は痛くないか? 我慢しないで言うんだよ」


「少し疲れた感じがするけど大丈夫、と言うか、へへ、少し楽しいかも・・・」


「ん、楽しい?」


「うん、私走った事なかったから、こんなに伸び伸びと動けるのが」


「ああ、確かにトーキョーだとアタシらにゃ狭過ぎるよな、走るどころか歩くのも難儀だ、アメリカはデカいだろう?」


「うん」


「ほれ、ブーツ脱いで足を貸しな、マッサージするよ」


「え、いいよ、大丈夫」


「いいから出しな、先は長いんだから慣れてないサナは遠慮するなよ」


リリィは大雑把で豪快なのに、よく私を気遣ってくれた。

移動中もペースはどうか、喉乾いてないか、水飲みな、疲れてないか、とても優しい。


「なんだい?」


「あ、ううん、リリィって優しいなって、私、米軍ってヒドイイメージしか無かったから」


「イメージ?」


「うん、ほら、「訓練教官のハットマン軍曹である

話し掛けられた時以外口を開くな、口でクソたれる前と後に“サー”と言え、分かったかウジ虫ども」って映画で」


「Hahaha!ありゃあなー、まあ全く無いとは言わないけど、あれは新兵と教官で対立構造作って新兵達にとっての共通の敵みたいな意識を刷り込むんだよ、サナは1人だけだから追い込んだっていい事はないんだ。

アンタはアタシの後輩で可愛い妹分、仲良しこよしだけではやってけないけどね、巨人部隊はそこまでガチガチではないから安心しな」


「うん」


「それより、明日も早いからそろそろ寝るよ、ほれ来な」


リリィはそう言うと唯一の寝袋を広げた、私は汗の匂いが気になったので肌の匂いを嗅いだ。


「どした?」


「・・・臭くないかな?」


流石に巨人の拠点になっている所と違って、設備が揃っていないのでお風呂は入っていない。

水で濡らしたタオルで体を拭いただけなので、1日走った後、1つの寝袋に入るには少し気になった。


「大丈夫さ、酸っぱくなったらキツイけどね、Hahaha!」


「うわ、ちょっ」


「んー、スハー、確かに汗臭いけど、こんくらいならアタシ的には寧ろ唆るかな」


「何言ってんの!?」


「Hahaha!ほらほら冬も近いし気温も高くない、寝袋に一緒に寝ないと流石に凍えるよ」


こんな所が大雑把なリリィはいつもの様に私を胸に抱き込んで寝袋を閉めた。

・・・確かに少し汗の匂いは強いけど不快感を感じる程じゃない、リリィのせいで細かい事を気にするのも馬鹿らしくなったのでおやすみのキスを交わして私はリリィの腕の中に収まった。


「おやすみサナ」

「おやすみなさいリリィ」



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