炭酸の作法
会話は英語です
「へえー、サナは頑張ったんだな!」
リリィさんは私の頭をワシワシと撫でる。
在日米軍横須賀基地に到着した後、ママ達は大使館で大使と基地長を交えての話し合いに向かった。
私は足の貫通した傷をリリィさんに治療してもらっていた。
リリィ・クロフト、アメリカ海兵隊所属のアジア系アメリカ人でウエーブの掛かった黒髪をポニーテールにしたエキゾチックでセクシーな大人の女性巨人だ。
上はタンクトップ、下は軍服にブーツを身に付けたリリィさんは胡座をかいて私の傷を消毒して軟膏を塗り込み包帯を巻いてくれた。
「そんなでもないですよ・・・」
「いーや、謙遜するこたぁないよ! サナは頑張ったんだ、じゃなきゃアンタのママもパパも此処には居なかったとアタシは思うね、尊敬するよ」
「尊敬?」
「ああ、組織に属するってのはそこのルールに従うってのが基本だ、サナだって基地から飛び出す時に全く何も考えないで行動した訳じゃないだろう?」
「それは、うん・・・」
「しがらみや契約、それを振り切ってでも家族を守ったサナは偉いよ、勿論ルール違反を推奨する訳じゃあないけど、聞けばアンタは正式な軍属じゃないんだろ? なら家族を守った事に関しては胸を張りなよ、少なくともアタシはサナの行動をリスペクトするね」
「うん、ありがとう、リリィさん」
「さんなんて止めてくれよ、リリィで構わないよサナ」
「うん、リリィ!」
「おう!」
自分以外の初めて出会った巨人、リリィとは仲良くなれそうで私はホッとした。
よし、と治療の終わった私達の所へタンクローリーが走ってきて止まる。
「ヘイ、クロフト、車は此処で良いか?」
「おう、サンキューマイク! ほれサナ、お待ちかねのコーラだよ」
「えっ、・・・良いの?」
「飲め飲め!」
凄い、タンクローリーいっぱいのコーラだ、何時ぶりだろう、大きくなって以来だからあの夏のビーチで飲んだぶりの久し振りのコーラだ。
自衛隊のと同じ構造で太いホースを手に持ち、コックを回すとコーラが喉を潤した。
シュワシュワと喉を刺激する炭酸と甘味がとても美味しい。
「けふっ」
「なんだいなんだい、遠慮しないでガッといきな、ガッと! いいかいサナ、こういうのは人目を憚らずヤルのが一番美味いんだ、貸しな」
リリィは私からホースを取るとコックを全開にしてドバドバとコーラを口いっぱいに流し込み、ゴキュと喉を鳴らして飲み込んだ、すると。
「げえ~ふ!!」
盛大にゲップをしたのだった。
「HaHaHa、クロフトと違ってお嬢ちゃんは上品なんだよ、ヤマトナデシコって奴だ」
「ああん!? アタシがガサツみたいな言い方してんじゃないよ、マイクお前だってビールを一気してゲップかましてんじゃないか!」
「うるせえっデカ女」
ぎゃあぎゃあと言い合いをするリリィとマイクさん、私はホースを取ると改めてコックを全開にした。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ップハー、ゲッフ!!」
「・・・HaHaHa!良いゲップだぜサナ!」
「おいおいウシもびっくりなゲップだぜお嬢ちゃん、HaHaHa!」
「あはっ」
少し気恥しかったけど、思い切ってゲップをするとゲラゲラと2人は笑った。
私もおかしくなって声を挙げて笑ったのだった。




