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巨人になった私  作者: EVO
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親心

愛娘のサナが意識不明になって天王洲駐屯地に運ばれて来た。

グッタリとトレーラーの上で目を閉じているあの子の呼吸は荒い。

手足の至る所に咬まれた痕跡が残っており、紫色に腫れ上がって痛々しい。


【穴】から蛇が現れたそうだ、サナは周りの人を助ける為に率先して戦ったのだという。

蛇は未知の毒を持っていて、何度も噛み付かれたサナは蛇を追い返すとその場から動けなくなってしまったそうだ。


意識を朦朧とさせながら、どうにかトレーラーには自力で乗ったものの、それ以降意識を失っている。


何故この子ばかり・・・


自衛隊は国民を守る存在ではないの?

サナは国民の1人ではないの?

巨人だから?


担当の小夜さんが慌てて私達の元へ駆け寄り頭を下げた。

私は口を閉じたまま何も言わない、今開けばきっと責めずには居られないだろうから、夫も同じく真っ赤になって堪えていた。

そもそも小夜さんに当たっても仕方のない事だ、彼女はサナ担当の窓口業務みたいなものなのだから。


私達は一言、娘を頼みます、そう言ってホテルへと戻った、傍に居ても出来ることはない。


「あなた・・・」


「分かっている」


この日私達は決意した、人の手に娘を任せたからこうなってしまったのだ。

娘を守れるのは私達だけだ、取れる手段は少ないけど、これ以上サナが傷つくのは許せなかった。

私達がサナを守る。


勿論、小夜さんに、自衛隊に、国にお世話になっているのは理解している。

最終的にサナが自分の意志で自衛隊のお仕事の手伝いを買って出たのも理解している。

私達夫婦もサナの待遇を考えるとそれに頷いた事は事実だ。


でも、あの時とは状況が違う、大きな体を生かした土木工事作業が、今では【穴】から出て来る化け物退治に駆り出されている。

サナのあんな姿を見せられてはこれまでの判断をベストなどとは言えないし、ベターとも言えない。


今のままでは後手後手に回っている自衛隊の、体の良い尻拭いにサナが擦り減らされていくだけだ。

【穴】からはこれからも何かがきっと何かがでてくるだろう、これは確信だ、このままではあの子の幸せには繋がらない。


待っていてサナ、ママとパパがきっと助けてみせる・・・






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