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巨人になった私  作者: EVO
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アナスタシア 2

ワタシはスグにクロフトとサナ以外のメンバーにも挨拶に向かった。

これまでのワタシの態度はかなり悪かった、ロシア軍の事を盲信していたからと言って許されるものではないと考えたからだ。


特にサナへの態度は思い返しても本当に酷くて、笑って許してくれたけどサナの周囲の人間だって不愉快な思いをしていたのは間違いなかった。

これまで何も無かったのはサナがそこまで怒っていなかった事と、皆がとても大人で捕虜として来たワタシを慮ってくれた結果だ。


結局、クロフトを怒らせてしまったのを引き金に件のボクシングが催され、ワタシはサナに徹底的に叩きのめされたのだが、それは完全に自業自得だった。


朝一番に謝罪しに向かうと、彼等は「サナが許すなら」と口を揃えて言った。

彼等は大人の対応でワタシに苦言を呈する事も無い、ワタシなんて環境と嘘の情報に惑わさらて当たり散らしたというのに。

それこそ同居しているクロフトもサナも大人の対応だった、特にサナは歳下なのに20歳のワタシより遥かに大人だったので恥じ入るばかりである。


華麗なステップ、ガードも上げず、ワタシのパンチは全て見切られて当たらない。

お嬢様と決めつけていたサナが実はバリバリの戦士だなんて不意打ちもいい所だった。


ポンポンとバカにしたように軽く当てられるパンチ、視界から完全に消えてしまうスピード、初動を潰され、途中で殴られ、動き終わりでも打たれた。

1Rは頭に血が登り、2Rでは焦燥と怒り、3Rは手段を選ばずに仕掛けた。


気付けばベッドの上で、クロフトから事の顛末を、エージェントのジョセフからロシア軍とアメリカの情報の差異を突き付けられる。


何をしているんだろう、バカみたいだ・・・


ポンチョを外して雨に濡れたい気分になりながら、ワタシはクロフトとサナが居るホームへ戻った。


『xxxxxxx!』

『xxxxx?』


リビングでは2人がソファでくっ付いて映画を鑑賞していた、大量のポップコーンが入ったバケツを抱え、コーラを脇に寛いでいる。


「あ、おかえりアーニャ」


サナがワタシに気付いて立ち上がる、傍らに置いてあるタオルを手に取って頭に掛けてくれた。


「あ、ありがとう」


「うん」


「アーニャ、アンタにこれ渡しとくよ」


クロフトが渡して来たのはタブレットだった、これまでワタシに通信機器は渡されていない。


「これは?」


「一部の機能を制限したタブレットだ、まあ情報を集めるなり暇潰しに使うなり、好きにするといい」


恐らくインターネットは使えるけどメールや会話等は出来ない様になっているのだろう。

そして確実に監視はされている、それでも今のワタシには有難いもので、サナが一緒に映画観る?と誘ってくれたのを断り時間を貰うことにしたのだった。




***




インターネットを駆使して世界中のニュースを見て回った結果、ロシア軍の艦隊は日本へ侵略したとされる報道がほぼ9割以上を占めていた。


西側諸国を不当な扱いを受ける同胞を解放する為、としていた事さえも全世界では侵略行為として数多くの経済制裁等が為されていたのである。


ワタシが巨人化する直前までも確かに物価が上がったなぁとボンヤリ思っていたのだけど。

まさか裏にこんな事実が有るなど思いもよらない、ロシアは意図的に情報統制を行ない、自国民には正当性を訴えていた事が、国外に出て捕虜の身になってから理解するなんてお笑いだ。


アレもコレも、正当性を謳う祖国のなんと滑稽な事か。

自国に誇りを持っていたワタシにとって、祖国の有り様はどこから見ても誇れない、いや恥じる以外になかった。


「ん?」


一度ブラウザを閉じて頭の中で情報を整理していると

、ホーム画面にある動画データの項目を見つけた。

ワタシはなんだろうとその動画を開いた、そこにはホワイトハウスと国防総省プレゼンツ、ノンフィクション映画で巨人特殊部隊があった。


驚いたのはサナが最前線で戦ったシーンだ。

昨日ジョセフから聞いていた情報だったものの、実際の映像を見ると絶句する他ない。

ワタシもロシア軍で少しの訓練は受けた、何匹かモンスターも潰したりしていた。

それらは戦闘と言うには生温いもので、事実上戦闘は北海道への作戦が初戦だったのだ。


サナは勇敢に戦っていた、屈強な兵士である男性巨人が手傷を負う中で一歩も引かず新型のドロドロの巨人を二体討伐。

それを見て疑問が増えた、東京の作戦にも参加していたという話を思い出し検索を掛けると、動画サイトにはいくつもの戦闘動画が溢れていた。


クロフト、ライアン、そしてサナが大群の敵性生物を討伐している。


「ハハ、、」


乾いた笑いしか出てこない、最も侮っていたサナが武器を振るいモンスターを殲滅していく。

ワタシのボクシングと言うにも烏滸がましいパンチを軽くいなすのも納得だった。









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