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巨人になった私  作者: EVO
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スミルノフ 2

「Такой благословенный человек, как вы!」貴女みたいに恵まれた奴が!


インカムを通して翻訳されたロシア語が耳に届いた、スミルノフさんは大きく振り被った右の拳を私に向けて放った。

私は冷静にステップを踏んでパンチを捌く、受けることは無い。


どうしてこんなことになったのか、話は今日の朝まで遡る。






私は夏期講習もボランティアも無い日で、いつもと比べて少しゆったりした時間に目を覚ました。

リリィはまだ眠っているので、私も偶には良いかぁと二度寝をする事にした。

シーツの心地よい肌触りにリリィの体温と息遣いを合わせて、すぐに眠りに落ちたのだった。


「サナ」


「ん・・・」


次に目覚めたのは8時、遅いと言えば遅いし、でも決して早くはない、そんな時間だった。

リリィが私の肩に手を置いて覗き込んでいる


「おはようリリィ」


「ああ、おはようサナ」


2人でリビングへ、歯を磨いて顔を洗い適当に私服に着替えて朝食に行こうか。


ガチャリ


そんな時、スミルノフさんがリビングに現れた。

いつもは私が早い時間に起きてハイスクールへ行くので、朝に顔を合わせるのはこれが初めてだった。


「お、おはよう、スミルノフさん」


咄嗟に私は挨拶をした、若干上擦ってしまったのは私の中で彼女に対して苦手意識が生まれ始めていたからだ。


「チッ」


対するスミルノフさんは舌打ちをした、流石に私も引きつってしまう。


「おいスミルノフ、表に出な、負けたら態度を改めろ」


「リリィ?」


「数日様子見したけど目に余る、サナ相手してやりな」


「え、私?」


「そりゃそうだろ、スミルノフが舐めてるのはサナだ、アンドリュー達に突っかからないのが良い証拠さ、コイツは弱い奴にしか強く出ない」


「ッ!」


リリィはスミルノフさんを煽った、彼女は顔を一瞬にして真っ赤にして怒りを表した。


「ワタシは!」


「ああ、やめろやめろ、アンタの主張なんざ聞きたくない。

サナ、現実って奴を教えてやりな」


「・・・分かった」


私が了承したのはリリィが思わせ振りな眼で私を見ていたからだ、どうやら考えがある様でそれに乗ることにした。






「どっちに賭ける?」

「そりゃあサナに決まってるだろ」

「スミルノフに賭けた方がデカイぜ?」

「勝負にならねえよ」

「オッズは・・・、サナが1にスミルノフが9か」

「いくら賭けるかね」

「サナに100」「俺は250、サナに」


それから話は早かった、あっという間に基地全体に話は拡がり、賭けも始まる始末。

勝負方法はボクシング、1R3分で3R方式、グローブは元ボクサーの指導を受ける為に訓練用として造られたものがある。

捕虜虐待などと騒がれない為に一筆書いた上で、スポーツの名のもとに許可が下りた。

煽られたスミルノフさんは勢いそのままにサイン、あくまでもこれは喧嘩でもなく、私闘でもなく、スポーツという建前だ。


「リリィー?」


「そんな声出すなよ、悪かったって!」


勝負方法がボクシングになるとは思っていなかった私はリリィに恨み節を投げつける。

リリィは謝りながらバンテージを巻いて私の手にグローブを被せた。


「良いじゃねえかサナ、こういうのはな、どっちが上か示してやると大抵解決するんだぜ?」


「野蛮過ぎない?」


「Hahaha!だがそんなもんだ、一般兵のトレーニング室に何の為にリングが有ると思うよ」


「えぇ・・・? 日常茶飯事なの?」


ライアンからイヤな情報を聞いてしまった・・・

ママとパパは心配そうな顔をしているので、負ける訳には、と言うより怪我はしちゃいけない。

顔は絶対死守、ボディならまあ、って感じでいこう、と思ったけど、スミルノフさんは身長体重リーチ全てに於いて私より上なんだよね。


ボクシングが体格差の危険性から階級分けされているのに、身長では1m位、体重に至っては数t程の差がある。

細身だから、そこまでパワーは無いと思うんだけど・・・


「ほれ、マウスピース」


「ん」


日本の作戦で口の中を切ったので、対策として全員分の歯型を取られてマウスピースも作られた。

スミルノフさんの方は予備品の汎用マウスピースを使う、セコンドは私にリリィ、スミルノフさんにアンドリューが付いた。


『Round 1 FIGHT!』


レフリーはランディと元ボクサー数人、ポイントもしっかり見るらしい。

何処から持ち出して来たのか、カーーン!とゴングがなったのだった。

楽しそうだね君達ぃ!?






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