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巨人になった私  作者: EVO
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開戦の裏

「これ、アメリカ主導だよね?」


「・・・まあ」


だと思った、何故かと言うとロシア海軍が大打撃を受けた事で得をするのはアメリカだからだ。


西側への軍事作戦でロシア軍はメッキが剥がされるかのように馬脚を現している。

戦略も戦術も、兵の練度も士気も、お粗末過ぎて軍事大国と呼ばれた評価は既に無い。


【穴】も有り、しかし三正面作戦で日本侵攻に手を出すなんて愚策も良いとこ。

世界では国際的な地位も権威も底まで落ちている。


そんなロシアが日本侵攻で艦隊をほぼ喪った、その総数はロシア海軍全体で見ても三割程に上ると推察される。

今後国力は低下、存在感も失い、貿易も限定的で艦船は新造も困難。


日本だけの判断とは思えない()()()()に、徹底的とも言えるロシア艦隊の()()

三割損害で全滅判定、五割損害で壊滅判定、そして100%損害が殲滅判定となるのだから、どう考えてもアメリカの意向が働いているのは明白だ。


「日本も同意したからこそ、なんですけどね?

中途半端に逃がして泥沼化するより、初戦で叩き潰した方が敵国の国力も戦力も落とせるし・・・」


それは確かにその通りだ、再編成やら報復やらが出来る余力を残すと日本が戦火に包まれるのは確実となる。

それなら自衛隊の力も見せつけ、敵軍を再編成さえ困難になるまで叩いた方が良いのは分かる。


西側と【穴】、殲滅判定の太平洋艦隊ともなれば再度の侵攻に割く戦力はほぼないと思われる。

ただ、そうなると追い詰められたロシアが切る手札に、


「核は・・・」


「有りませんよ」


「え」


「核は、使()()()()()


自信満々に言い切る彼はニコリと笑い、続けた


「ロシアが保有する核兵器は約6000」


「ええ」


「所で、昨日国内でも話題になりましたね、ロシア軍のレーションが通販サイトで購入出来ると」


「え? ああ、そうね、現地のロシア軍では賞味期限切れのレーションを食べているのに、こっちに届くのはちゃんとしたもので、軍が海外へ横流ししていると話題に・・・、まさか」


彼は静かに微笑んだ、聞けば聞くほど酷い話しだ、こんな組織がまともであるはずがない。

私見になるけど、内部から瓦解するのも時間の問題では?


「もう私辞めるから聞かない事にするわ」


「あれ、辞めてしまうので? 折角昇進も決まったのに」


「無理、もー無理、アメリカ行ってサナちゃんに口利きしてもらう事にしたの」


「ああ、それは羨ましい」


「それで、露も米もいいとして、捕虜は?」


「数百人程度ですよ、それと()()はアメリカ預かりになります」


「まあ、でしょうね」


ロシア軍所属の巨人捕虜なんて、巨人が居ない日本では抑止が利かないのでリスクが高い。

となると、アメリカに送って物理的にロシアから距離を取らせるのと、これまた物理的に抑えられる巨人特殊部隊の傍へ移送した方が安心というものだ。


「よく拘束出来たわね」


「抵抗はしてません、艦が沈み、岸まで泳いで、そこでじっとしてました。

他のロシア人捕虜も一部の将官を除き従順なものです、下士官は訓練と聞いていたそうですよ」


「訓練て・・・、ああ、そんなんだから先制攻撃を受けて抵抗らしい抵抗も出来ないまま殲滅されたのね」


「まさか()()で艦底に穴が空くとは思ってないですよ、将官らは必至に命令したそうですが」


「無理でしょ、将官でさえ想定していなかった日本の先制攻撃だもの、到底立て直せないわ」


「ええ、面白い事に下士官らは無事帰国が出来ることを喜んでいますけど、将官らは怯えて亡命を口にしてます」


「粛清されるものね・・・」


「必勝のつもりの侵略が、蓋を開けてみれば殲滅、ですからね、五体満足で帰国したら責任者の首は物理的に飛ぶでしょうね。

お陰で内部情報は楽に手に入っているのでこちらとしては助かります」


他国の報を聞いていると疑わしかった情報も、いざ自国が当事者となって一次情報を手に入れて聞くと本当に驚くばかりだ。

自衛隊は東京災害で無様を晒して敵国に侵略を決断させた、しかし実戦となって力を発揮したのは敵国でなく自衛隊だった。


時限付き特措法という条件はあるものの、法の縛りから開放された自衛隊は、優秀だと言われる評判そのままに力を発揮したのだ。


敵国の油断、慢心、統制の不一致、色々な要素はあったけど、これから日本を取り巻く安全保障は一変する。

アメリカからすれば重い腰を上げて戦えるようになった日本を見て、満面の笑みでサムズアップしている事だろう。

ロシアとは厳しい関係になるし、中国は恐らく台湾を取りに来る、【穴】が現れてから激動の、時代が動こうとしていた。









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