表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/45

第5話 【収納】スキル、熟練度9999その4

 翌日――

 ワシは朝一番に冒険者ギルドのエリーの元を訪ねた。


 今日はギント水道遺跡に行ってみるつもりだったが、いつもの日課の荷運びのクエストも受けておこうと思ったのだ。

 水道遺跡へ行く途中で届ければいい。


「あ、アッシュさん! おはようございます!」

「ほい、おはよう。済まんが、今日も荷運びのクエストを――」

「いいえ、それより大変なんです!」

「ほう? 何じゃ?」

「ギント水道遺跡に最近凶悪な魔物が出るとは言いましたよね?」

「うむ」

「その事を王都に報告したら、騎士団から調査隊がやって来たんです。それで、騎士様達が遺跡に向かわれたんですけど――」

「……帰って来んのか?」

「ええ。もう丸三日です。ですから、腕利きの冒険者に様子を見に行って貰おうと――バンゲルさん達にもお願いしましたけど……アッシュさんにもと思って! もちろん報酬は出ますから」


 それは好都合。こちらとしてもありがたい話だった。

 元々ギント水道遺跡には行こうと思っていたのだ。


「ほうほう。しかし、ワシなんぞに頼んでいいのかの?」

「昨日、バンゲルさんを捻じ伏せてたじゃないですか! 凄いステータスボーナスも見ましたし!」

「うんむ――腕利きだなどと見込まれるのは初めてじゃ、気分ええのう」

「人間、何歳でも成長するものなんですねえ」

「ホントにのう、コツコツ努力してきてよかったわい」

「いい冥途の土産になりますね!」

「止めろ縁起でもない! ワシゃあまだまだこのスキルの能力を堪能したいんじゃっ!」

「じゃあ、必ず無事に戻って下さいね? 十分気を付けて下さい」

「おうさ。では行って来るぞい!」


 ワシは予定を変更し、ギント水道遺跡に直行をした。


 遺跡への入り口は街中にいくつかあり、地下へと続いている。

 元々はかつて滅んだ古代の街が備えていた下水道の設備である。


 それが長い時を経て、ダンジョン化したものだ。

 普段はそこまで強い魔物は出ないため、初心者冒険者が腕を磨くためにもいい場所だ。


 思えばワシも、冒険者になって初めの頃は、ティナと2人でここによく通った。

 あっという間に実力で追い抜かれて、茫然自失となったのも懐かしい思い出だ。


 老人になってからは殆ど戦いからは身を引いていたが――

 再び新鮮な気持ちで、この地下水道の入り口に立てるとは、嬉しい限りだ。


 苔の生えた階段を下り、水音の流れる地下へ踏み込む。

 すると早速、モンスターの姿を発見した。


 水色の体が半透明に透き通った独特の外見をした、大トカゲである。

 これが水に潜ると、殆ど同化してしまい、見つけるのが非常に困難。


 噴き出す鉄砲水は強い酸を帯び、長く太い舌は任意に切り離しが出来るらしい。

 下をぐるぐると得物に巻き付けて動きを封じて切り離し、仕留めてしまう捕食者だ。


「おや……アクアリザードか――!」


 このギント水道遺跡では、最奥の方に少数のみ生息する魔物だ。

 探しても見つからない事も多い。


 珍しい存在な分、その強さは他とは一線を画している。

 さすがにデスコカトリス程ではないが、低ランクの冒険者では荷が重い相手だ。


 以前のワシならば、十回戦えば十回負けていただろう。

 しかし今は――


 ビシュウウッ!


 ワシに向かって噴き出される酸の鉄砲水。

 ――見える! 余裕でかわせる!


 ワシは身を沈めて水の軌道から外れつつ、ヤツに向けて地面を蹴った。

 一足飛びに踏み込んで、斬る!


 ダアァンッ!


 だが地面を蹴る足音は、ワシの想像より遥かに大きい。

 敏捷性があり過ぎるのだ。急激な上昇に感覚が追い付き切っていない。


 だから、剣を抜いて斬る動作が間に合わず、ショルダータックルになってしまった。


「ありゃっ!?」


 だが攻撃としては、それでも問題ない。


 ドゴオオォォッ!


 体をひしゃげさせながら吹き飛ぶアクアリザード。

 壁に激突し更に体があらぬ方向に折れ曲がり、ズルズルと床に崩れ落ちた。

 ――一撃で仕留めた。これが今のワシだ。改めて信じられない程の変わりようである。


「ふふふ……自分が強過ぎて、感覚が追い付かんとはのう――何とも贅沢な悩みじゃ」


 ワシはひとしきりニヤニヤした後、頭を振って正気に戻った。


「いかんいかん気を引き締めんとのう。しかし、こんな入り口にアクアリザードがおるとは、確かに何か変じゃの――」


 アクアリザードの死体を回収。

 これも、ある程度の値段でギルドで引き取ってもらえるだろう。

 よし、と一つ頷いて、奥へ奥へと歩を進めて行く。


「おぅ、またアクアリザードか」


 今度は二体が並んでいる。まだこちらには気づいていないようだ。

 ならば――


「感覚が合わぬのなら……!」


 剣を抜き、切っ先を突き出すように、脇に構えを取る。


「構えてから突撃すれば良し!」


 これならば、このまま突っ込んでぶち当たれば済む!


 ダダダダッ!


 ワシは突きを構えたまま、全速力で敵に向かって走り込む。


 ズシャアアアァァッ!


 まとめて二体、アクアリザードの串刺しの出来上がり!

 だがまだバタバタと、もがこうとしている。


「ふぅぅぅんっ!」


 突き刺した剣を、そのまま力任せに振り抜いて、二体を完全に両断した。

 二体分の死体は、忘れずに回収だ。


「うむ。どんどん行くぞ!」


 下へと続く階段を降り、更に下の階層を目指して行く。


「……! またアクアリザードが――どういうことじゃ、こんなに発生しておるとは」


 今度は四、五体いるか。


「ま、感覚に慣れるには丁度ええがの!」


 先手必勝! ワシは遠距離から『ソニックブーム』の衝撃波を放つ!


 ズガガガガガガッ!


 地面を疾走する衝撃波の真後ろに隠れるようにして、後を追ってダッシュ。

 衝撃波がアクアリザードの集団に飛び込む。

 三体が巻き込まれ、ズタズタに引き裂かれて吹っ飛ぶ。


 残り二! 駆け込みざまに、一体の首元に斬りつけ、断ち切った。


「よし!」


 今は上手く駆け込みながら斬る事に成功した。

 動きの速さに、段々慣れて来たか。


 シュルン!


 残り一体のアクアリザードが伸ばした透明な舌が、ワシの片足に巻き付く。

 そのまま引きずり倒そうと、引っ張ってくるが――


「非力じゃ!」


 逆に足を引き寄せて――


「でぇいっ!」


 為す術も無く引き寄せられたアクアリザードを、一刀両断!


「――ふむ……こんなにもバッタバッタと、こいつらを狩れるとはのう……」


 そう、これは戦いという次元ではない。

 狩人と獲物の立場の揺らがない、一方的な狩りだ。


「ワシも強くなったもんじゃ、フフフ……!」


 嬉し過ぎてニヤニヤが止まらないのだが!

 己の強さに酔う! それがこの世で最も甘美なる美酒だろう。


 ワシはニヤニヤしたまま、続く階段を降りて最下層へ。

 そこには、見た事の無いモンスターがいた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『続きをがんばれ!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ノベルピア様にて新作連載中!】
異世界鉄姫団 ~最強ロボオタJK達の異世界エンジョイ無双~

html>

◆◆ハイスペックでロボットオタクの女の子達が、ロボのある異世界に召喚されて楽しそうに暴れる話です! よかったら見に行ってみて下さい!◆◆
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公アッシュがチートになる理由。熟練度上げるのに『リアルな年数』が良いです。 数億年などの作品有りますし。 [気になる点] あらすじ・・に書いてあるアッシュそしてヒロイン:マルティナを若…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ