第44話 温泉郷と伝説の城13
ステータスボーナスは4ケタに突入し、上限値は無限。
過去のアイテム群を置き去りにする能力だ。
全能力アップの倍率も最大。
そして当然のように備える聖剣波動を飛ばす力。
さらに最後に――『城主』のスキルである。
城騎士は自分を従えるには『城主』のスキルが要ると言っていた。
ワシはそのスキル名、見た覚えがあったのだ。
それは、屍竜使いドルミナを倒してティナを取り返した後に。
元の姿を取り戻した『聖剣セイクリッドティア』を【収納】したらどういう効果になるのかと、興味があって手に取らせてもらった。
その時に、今見えているのと同じ情報を見た。
【収納】も実際に行ってみようとしたが、出来なかった。
アイテムボックスの容量が足りなかったからだ。
その時に分かった。
聖剣を【収納】するには圧倒的なアイテムボックス容量がいる。
それは100%ですら足りない、と。他のアイテムの比ではない。
やはりワシが元々聖剣に認められるような存在ではないため、無理にそれを取り込む事は膨大な負荷がかかるという事なのだろう。
だが今はドワーフの皆さんの協力により、『聖剣セイクリッドティア』を――!
「さあアッシュ! やってやれ!」
「おう……!」
ワシは聖剣を高く掲げ、高らかに宣言する。
「聖剣よ、ワシに入ってこい!」
シュウウウゥゥゥンッ!
姿を消す聖剣。
「ぬ……!? 聖剣が消えやがったぞ……!?」
訝しむような声を出す城騎士。
ワシのアイテムボックスは――
使用率:199/215%
ドワーフの皆さんの協力のおかげだ。見事に【収納】に成功した。
しかし無理やり取り込んだ『聖剣セイクリッドティア』の使用率はそれだけで111%プラスになるとは。さすがというか、とんでもないコストの重さである。
まあ『城主』スキルのためには絶対必要ではあるし、他の効果も凄まじいが。
ともあれワシは、身に着けた『城主』スキルの効果を早速試してみる事にする。
「ようし……! 城騎士よ! さっそくじゃが、もうそろそろ長風呂はええじゃろ? 上がって出て来て貰おうか……!」
「アァァァン!? 誰にモノ言ってんだこのクソチビが!」
口ではそう言うものの――
ザブウゥン!
城騎士は立ち上がって、お湯の中から外に出た。
これで温泉の流れが元に戻ってくれるだろうか。
「ぬお……っ!? い、意思に反して体が勝手に……!? て、てめええぇぇぇっ!? も、もしかして……!?」
「そういう事じゃ! 今日からはワシがお主の『城主』じゃ! 宜しくのう?」
「ぐぎぎぎぎぎ……! 何でこんなガキに従わなきゃいけねえんだよ……! やってられっか、せっかく自由になったってのによおぉぉぉぉっ!?」
「アッシュ。こいつは反抗的だぞ。取り合えずどちらが上かを躾けるために、三回回ってワンを泣くまで繰り返させよう」
「いやいや、そこまでせんでも――」
とワシはティナに言ったのだが。
ドスンドスンドスン――
城騎士は大きな足音を立ててその場で回り出す。
一回、二回、三回。
「ワンッ! ぐああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」
「……! ティナの命令も聞くという事か……?」
「何をしやがるこのクソ女があああああぁぁぁっ!」
「もう一度だな」
「………………ワンッ! あああああああああああああああっ!」
「よし、私がいいと言うまで続けていろ!」
「ワンッ!」
城騎士がぐるぐると回り出す。
「見たか、アッシュ? 私にも『城主』の権利があるようだぞ?」
「そ、そのようじゃのう……『一蓮托生』の効果かの?」
『屍竜使い』のスキルは別にティナに共有されている様子はなかったが――
「うーむ、つまり『城主』スキルとは城騎士に命令できるという強化状態になるという事なのかの? それを『一蓮托生』で共有したと……?」
「細かい事はいいじゃないか! つまり、住宅は夫婦の共有財産だという事だろう? 分かってるじゃないか『城主』スキル!」
ティナは満足そうにうんうんと頷いている。
「ま、まあティナがそれでいいならワシもいいがのう」
「ちくしょおおおぉぉワン! てめえぇぇぇぇら由緒正しきワン! 勇者の城を冒涜しやがってワン! ぶざけんじゃねぇぞ罰当たりが死ねワンッ!」
罵声を飛ばしながらワンワン言って、哀れなものである。
「移動する城なんて、旅をする私達の新居にぴったりだなあ! ヤツの口が悪いのが難点だが、一生喋るなと言っておけばいいだろう、な?」
ドスンドスンドスン――ドスンドスンドスン――ドスンドスンドスン――
ワンが言えなくなって、ただ無言でぐるぐる回るだけになってしまった。
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