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第37話 温泉郷と伝説の城6

「ぬううぅぅぅんっ!」


 石の巨人が身を屈めて、地面に拳を突き立てた。

 何をするつもりかはまだ分からないが、一つおかしな事がある。

 当然ありそうな轟音や衝撃も無く、ぬるりと拳が地面に埋まったのだ。


 ボゴォッ!


 石の巨人は地面の中から、巨大な岩の塊を取り出した。


「むっ……!?」

「いけねえだ! 後ろには建物が沢山だべ! あんなもの投げさせたら……!」


 一緒について来ていたドナが、声を上げた。


「もうおせぇよ! 食らえコラァ!」


 振りかぶって岩の塊をこちらに投げつけて来た。

 猛烈な勢いが唸りを上げる。

 これは、避けてしまえば後ろの建物が無事には済まない。


「アッシュ!」

「おう!」


 ワシは岩石の塊の軌道に踏み出し、軽く手を翳す。


 シュウゥンッ!


 大岩はワシのアイテムボックスに【収納】され、跡形も無く消失した。


 使用率:82/100%


 元々の81%から1%上がっただけだ。まだまだ問題はない。


「おおぉっ!? 何しやがった……!?」


 石の巨人が驚いて声を上げる。


「……! お、大岩が消えちまっただ! す、すごいべ、アッシュくん……!」

「飛んで来た大岩を【収納】したんだ。あの程度、アッシュにとっては朝飯前だぞ」


 ティナがワシの代わりに、思い切り胸を反らして自慢気にしていた。

 その仕草で豊かな胸がふるんと揺れるので、ワシがやるより見応えがあるだろう。


「と、とんでもねえんだべな……!ど、どんな攻撃も吸収できちまうなら、無敵じゃねえか――!」


 実際はアイテムボックスの容量の関係でそうも行かないのだが、目の前の城騎士の意識が宿っているという石の巨人を前にして、それは言わない方がいい。

 ティナもそれを分かっているため、ドナに向けてにやりと笑みを見せただけだった。


「ふふっ、私のアッシュが褒められるのは悪い気がしないぞ? もっとアッシュを褒めるがいい。ただし、手を出したら抹殺するからな? 肝に銘じておいてくれよ?」

「し、しねえべよ。おら、あんな小さな子を誑かしたりしねえだ」


 そんな声を後ろに聞きつつ、ワシは石の巨人へと近づいて行く。


「どう見てもスキルが目覚める年でもねえのに、その力――てめえホントに人間か?」

「勿論人間じゃあ。見た目通りの年齢ではないがの。それよりティナも言っておったが、今すぐ温泉を元に戻してくれんかのう? 伝説の勇者の城を、無暗に傷つけたくはないからのう」


 伝説の勇者の城ともなれば、その歴史的価値は計り知れないものがある。

 歴史のロマンを自らの手で破壊する事はしたくない。

 なるべく穏便に済ませたいというのが本音だ。


「ケッ! そう思うのはテメェの勝手だが、知ったこっちゃねえんだよ! 歴史の遺物扱いされる程老け込んじゃいねぇ! せっかく魔王を倒して、これから過去の栄光をフルに活かして、一切働かずに世界中のいい女を侍らせて、夜な夜な俺の中で酒池肉林の宴を繰り広げようと思ってたのによぉ! 速攻で地底に封印だぞ!? やってられっか! 俺は失われた青春ってヤツを取り戻すんだよ!」

「……うーむ。そういう性格じゃから勇者様はお主を封印したんじゃ無かろうかのぉ」

「――アッシュの言う通りかも知れないな」

「黙れコラァ! このクソガキども! 伝説の勇者様の城に敬意を持ちやがれ!」

「いや、そんなもの知った事ではないと今言ったじゃろうに……」

「面倒臭い奴だな。私でも勇者様と同じ事をしたかもしれん」


 がしぃっ!


 いきなりワシの体が、何かに掴まれた。


「!?」


 見ると、ワシの足元から石の巨人の手が音も無く現れていた。

 石の巨人は地団駄を踏んで暴れるような素振りをして、腕を地面に埋めていたのだ。


「アッシュ!」

「ぬうっ!?」

「フハハハハハハッ! 頭脳プレーーーイ! クズのフリして捕獲成功おぉぉぉぉっ!」


 子供のワシの体は軽く、簡単に逆さに宙づりされてしまう。


「ほれほれほれ! このまま地面に叩きつけられて脳天カチ割られたくなきゃ、今までの無礼を泣いて詫びやがれ!」

「性格のほうは演技ではなく素のような気がするがのう……」

「余裕かましてんじゃねえ! 状況分かってんのか!?」

「分かっておる。特に問題は無さそうじゃ」


 ワシの頭の中には、既にある情報が浮かんでいたのだ。

 それが分かっていたので、何も心配はなかった。


「んだとぉ!? 調子に乗るのもいい加減にしとけよ……! マジで死ぬぞコラァ!」

「やってみるがよかろう?」

「あぁ!? よく言ったやってやるぜコラアアァァああああぁぁーーっ!?」


 石の巨人の叫びが途中で悲鳴に変わる。

 と、同時にその巨体はブゥンと歪んで、消失して行った。


 解放されたワシはくるりと宙返りをし、何事も無く地面に着地をする。


「アッシュ! 大丈夫か!?」

「おうティナ。心配はいらんぞい」

「アッシュくん……! い、今のは何をしたんだべ……!? 城騎士が操ってた石の巨人が消えちまっただよ……!?」

「岩と同じじゃあ。【収納】したんじゃよ」


 あの時ワシの頭の中に浮かんだ情報はこうだった。


【食人鬼の化石】


 収納時のステータスボーナス:

 腕力+100(上限値:750)

 体力+100(上限値:750)


 収納時、持ち主同士が追加特技『土遁』を使用可能。


 つまり、捕まえてきた相手を逆に丸ごと【収納】できてしまう――

 という事が分かったのだ。

 あくまで巨大な化石を城騎士が操っているというものだったので、その素体の部分をアイテムとして【収納】してしまったというわけだ。


 アイテムボックスの使用率は5%増えて87%になっている。

 使用率は、炎や衝撃波の類の攻撃エネルギーを【収納】すると上がりやすく、普通の物品ならばそれほど上がらない。

 アイテムとして5%はかなり重いほうだろう。

 この巨大な質量なら仕方ないのかも知れないが。


 しかし追加特技の『土遁』もある。

 これは、先程ワシを捕まえた地面に手を入れて別の所から出すような動きを扱えるようになるのだろうか? 後で試してみよう。

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