表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/45

第30話 マルティナと屍竜使い20

「おおお……っ!? 成功じゃ! やったぞい!」

「な、何とあちらも若返ったか……!」


 地面にうずくまっているバーヴェルも目を見開いていた。


「ふっ……ククク。だから何ぞえ? 妾の憑代を若返らせ強くしてくれたのかえ?」

「ああ、ある意味そうじゃ! ティナ聞こえるか!? 今のおまえなら、ドルミナなぞに操られはせんはずじゃ! 意識を取り戻して、ドルミナを追い出すんじゃあっ!」


 若い頃のティナは強過ぎて操れず、憑りつきながら年老いて弱るのを待っていた。

 これは、ドルミナ自身が聖剣降臨の儀を待っている間に言っていた事である。


 時間稼ぎのための無駄話に引っかかったと、ドルミナは喜んでいたが――

 あの時、ヤツも決定的な弱点を漏らしていたのだ。


 ――ならばティナをワシのように若返らせれば、ドルミナは操り切れなくなる。

 ワシに、この手段を思いつかせてくれたのは、ドルミナ自身である。


「ぐううぅぅぅぅ…………っ!?」


 ドルミナの動きが止まり、苦しみ始める。

 ワシはティナに近づいて肩を揺さぶる。


「ティナ! 頑張れ! こんな奴はさっさと倒して、また二人で冒険に行こう! ワシはお前を迎えに来たんじゃああぁぁっ!」

「……っ!」


 ティナの瞳の色が、元のきれいな空色に戻る。

 きりっとした意志の強そうな眼差し――だが今は、涙が。


「あ、アッシュ……す、すまない……約束を守ってくれたんだな……ずっとずっとずっと待っていたぞ……!」

「謝るのはワシの方じゃ、本当に長いこと待たせて……! さあ早く、ドルミナを追い出すんじゃ!」

「わかった! ドルミナ! もうお前の思い通りになどならん……っ! 私の中から出て行けええぇぇぇぇっ!」


 ティナの体が、爆発的な神聖な光に覆われる。

 【聖戦士】のスキルのもつ力だろう。


 ウウウウオォォォォォォォ――――……ッ!


 青黒い色をした半透明の女性の姿が、ティナの体から抜け出して現れた。


「これが、ドルミナの正体か……!?」


 角のある、魔族の女性だろうか?

 実体を持たない、魂だけの存在のようだ。


「そうだ、アッシュ! 完全消滅させることは難しいが、半永久的に封印してやる!」

「よし、手伝うぞい!」

「そんなもの、妾は御免じゃ! かくなる上は、このデクの坊でも――!」


 と、ドルミナはバーヴェルに向かって飛び込もうとする。

 ――今度はバーヴェルを憑代にするつもりか!?


「やらせんぞいっ!」


 ワシはその間に割り込む。

 バーヴェルには世話になった。好きにやらせはしない。


「愚か者! 貴様でも妾は構わんのじゃぞ!」


 ドルミナはそのままワシに突っ込んでくる気配だ。

 ならば――!


「来い! やってみるがええ!」


 ワシはアイテムボックスに取り込んだ『聖剣波動』と『屍竜の呪詛』を、全て明後日の方向に放出した。

 アイテムボックスの容量を開けるためだ。


 使用率:1/100%


 大量のエネルギーを放出して、使用率の空きは十分!


「憑代としてくれる!」


 ドルミナの本体は、実体を持たない。

 つまり、意志を持つエネルギーの塊と言えるだろう。

 ならば――こういう手がある!


「どっこい、こちらは【収納】してやるわいっ!」


 ワシがドルミナに翳した手。

 そこにドルミナ自身が、吸い込まれるように消えて行く。


「う……!? な、なな何だこれは……!? わ、妾を逆に喰らうというのか!? や、止めろ止めてくれ……! 消えとうない……! 妾は、妾はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 悲鳴を上げるドルミナが、ワシのアイテムボックスの中に消えて行った。


「あ、アッシュ!? 何をしたんだ? 大丈夫か……!?」


 ティナが心配そうに駆け寄って来る。


「おう、大丈夫じゃよ。ピンピンしておるわい」


 ――ワシには何ともない。


 使用率:81/100%


 その他リスト:

 屍竜使いの魂:1


【屍竜使いの魂】


 収納時、スキル『屍竜使い』を習得する。


【屍竜使い】

 死せし竜の肉体や魂を使役し、操る事が出来る。

 眷属とした屍竜とは、遠距離で通信できる。

 屍竜魔法を習得する事が出来る。


 熟練度:99/99


 ステータスボーナス:

 腕力 :396(4)

 体力 :396(4)

 敏捷 :594(6)

 精神 :594(6)

 魔力 :792(8)


 ※()内は熟練度1毎のボーナス値。


 いや、何とも無くは無かった……!

 使用率こそ気になるものの、またしても爆発的に強くなってしまったようだ。


「よし、少し確かめさせてくれ――」


 と、ティナがワシのおでこにおでをくっつけてくる。


「な、何をしておるんじゃ?」

「ステータスの『鑑定』だ。何かおかしな様子はないか確かめる」

「『鑑定』なら、こんなに密着せんでも出来るような気がするがのう――?」


 少し相手に手を触れれば十分のはずだが?


「逆に、くっついてはいけない理由もないはずだぞ?」

「まあのう――」

「だったら、別にいいじゃないか。こんなに可愛いアッシュを前に、我慢などできん!」


 どうも何十年経っても、女王になって年老いて、そしてまた若返っても、ティナはティナのようだ。

 見覚えのある姿に若返った事もあり、猛烈な懐かしさを感じる。


「うん、悪い状態は無いようだな! だが……! な、何だこれは凄いぞ……!? 【収納】スキルの熟練度9999!? 若返ったのも、このスキルの効果なのか……!?」

「ああ。『生命の宝珠』を【収納】しての。ずっとおまえも助けてくれたおかげで、とうとう辿り着いたぞい!」


 ワシが死ぬのが早いか、【収納】スキルを極めるかの勝負だった。

 だがとうとう、ワシは覚醒したのだ!


「そうかそれで、今ドルミナも……! すごい、すごいぞアッシュ! とうとう強くなって、私を迎えに来てくれたんだな!?」

「そう言う事じゃ。待たせて済まんかったのう」


 ワシはティナの腕をぽんぽんと撫でる。

 ワシは10歳程度、ティナは17、8歳程度。

 身長差があるので、頭を撫でるには手が届かない。

 ティナはぽろぽろと涙を流し始めた。


「うううううぅぅっ……! こんな嬉しい事はないぞ! もちろん私はアッシュに付いて行くぞ! だが今の私では、孫と祖母にしか見えんのが申し訳ないが――」


 どうやらティナは、ワシの事ばかり見て自分の事が見えていなかったようだ。

 ワシは魔法の詠唱を始める。


「我が僕となり、出でよ呪氷よ青き礫よ……! フリーズバレット!」


 ピキイイィィンッ!


 大きな氷の塊が、近くの地面に出現する。


「アッシュ……!? 何をしている?」

「若返ったのはワシだけではないぞ、ほらティナ! 自分の姿を見てみるんじゃ!」


 氷に映った姿を、ティナに見せる。


「!? あ……! わ、私も若返っているだと!?」

「そうじゃ! 改めて見ると、こんなにキレイだったんじゃなあ、昔のティナは」


 すっとティナ両手が伸びて来て、ワシの顔を横に向けさせた。

 ティナは懐かしさと、嬉しさと、妖艶さと、色々なものが混ざり合った深い表情をしていた。


「ふふふっ。あの朴念仁のアッシュが私にそんな事を言えるようになるなんて、成長したなあ……伊達に何十年も経っていないな?」


 ティナの顔が、すっと近づいて来る。

 もう照れる必要も、気遅れする必要も無い。


 ワシは堂々と、あるがままを受け入れた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『続きをがんばれ!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)から評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ノベルピア様にて新作連載中!】
異世界鉄姫団 ~最強ロボオタJK達の異世界エンジョイ無双~

html>

◆◆ハイスペックでロボットオタクの女の子達が、ロボのある異世界に召喚されて楽しそうに暴れる話です! よかったら見に行ってみて下さい!◆◆
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです!! 応援してます(๑ ́ᄇ`๑) 自分のペースでいいので更新待ってますね
[一言] これを待っていた!! 続きが気になりますなぁw
[一言] 次で最終回とかじゃないですよね…f(^_^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ