第２９話　マルティナと屍竜使い１９

「……こいつはええ事に気が付いたわい！」

　ワシは『大戦士の大斧』アイテムボックスから出して入れる一手間を入れれば、『デイブレイク』が撃ち放題。

　剣を振る全ての攻撃を『デイブレイク』にしてしまう事も出来る。

　そうすれば、実戦におけるワシの攻撃力は激増だ。

　『デイブレイク』の技の威力はかなりのものである。

「うぬうううううぅぅぅっ!?　貴様まだ手を隠しておったか……!?」

「お互いさまじゃろ！　おぬしも何度も何度も、あの手この手を繰り出してきおって！」

「――だがそれもこれまで……！　決着を付けろ、アッシュ！」

「おうさ！」

　ワシは片手で『黒竜鱗の大剣』を操りつつドルミナに突進する。

　もう片手は、『大戦士の大斧』のアイテムボックスへの出し入れ用。

　迎撃に飛んで来るドルミナの剣閃を、『デイブレイク』を連打で叩き潰して行く。

　――間合いに踏み込んだ！　もう直接剣も届く！

「くっ！　寄るなあぁぁぁぁぁッ！」

「ティナを返せば、おぬしになぞ近寄りたくないわいっ！」

　ガギイイイイイイイイイイイイィィィィィィンッ！

　それまでで最大の、剣と剣とがぶつかる音が響く。

　――その衝突はワシが圧した。ドルミナは反動で大きく仰けぞる。

「……今じゃ！」

　しかし――

　バリイイィィィィィィンッ！

「!?」

　『黒竜鱗の大剣』の刀身が、粉々に砕け散ったのだ。

「ハハハハハ！　最後は武器そのものの、器の違いぞえ！　妾に運があったッ！」

　ドルミナが勝ち誇り、反対にワシに渾身の突きを繰り出して来た。

　その瞬間、ワシの目の前を大きな影が塞いだ。

　ザシュッ！

　ドルミナの突きはバーヴェルの体を貫通し、刀身が背中かから飛び出していた。

「バーヴェル!?」

「貴様！　何故ここまでして妾の邪魔をする……!?」

「貴様が気に喰わん……！　それだけだッ！」

　そしてバーヴェルは、ドルミナの手をグッと捕まえて離さない。

「逃がさぬぞ、ドルミナ！　さあアッシュ！　隙は作ってやったぞ！」

「恩に着るぞい！」

　言わずもがな、ワシももう動き出している。

　アイテムボックスから『魔導石のペアリング』を取り出し、手の内に握り締める。

　ドルミナの空いている左手を掴み上げ、その指にリングを装着させる。

「よし……！　ティナ――！　受け取ってくれい……！」

「止せ……触れるなあぁぁぁ！」

　抵抗はされるが、強引に装着させることに成功。

　リングはキラリ、と美しく輝いている。

　――が、それだけだ。今はまだ。

「く……くくくく……！　何ぞ分からぬが、離せええぇぇいっ！」

　ワシは暴れるドルミナからリングを抜き取り、距離を取る。

　バーヴェルも、堪えきれずにドルミナに弾き飛ばされていた。

「これが切り札か!?　狙いは不発だったと見える！」

「いや、これからじゃ！」

　今のは『魔導石のペアリング』の持ち主を決定させただけに過ぎない。

　つまり、ワシとティナのものであると刻み込んだのだ。

「さあ、ティナ！　行くぞいっ！」

　ワシは『魔導石のペアリング』をアイテムボックスに【収納】する。

　『魔導石のペアリング』を【収納】した効果はこうだ――

【魔導石のペアリング】

　収納時のステータスボーナス：

　腕力＋３０（上限値：５００）

　体力＋３０（上限値：５００）

　敏捷＋３０（上限値：５００）

　魔力＋３０（上限値：５００）

　精神＋３０（上限値：５００）

　収納時、持ち主同士が特性『一蓮托生』を使用可能。

　『一蓮托生』とは、繋がった相手と強化効果や弱体効果を共有する特性だ。

　もしティナが既にワシを見放していたのなら、『一蓮托生』は発動しないだろう。

　だが、ティナの私室にあった『思い出の単眼鏡』――

　それにドルミナに意識を奪われる直前の態度。

　それを見ていたら、こうなる事は分かる。

　使用率：１００／１００％

　品目リスト：

　武芸者のペンダント：１

　ミスリルソード：１

　銀騎士のレイピア：１

　黄金騎士の盾：１

　大戦士の大斧：１

　生命の宝珠：１

　炎の宝玉の杖：１

　氷の宝玉の杖：１

　修験者の杖：１

　白銀の鎖帷子：１

　魔導石のペアリング：１

　変異ミスリルのバトルフレイル：１

　その他リスト：

　聖剣波動：３

　屍竜の呪詛：３

　ステータスボーナス：

　腕力：４８０

　体力：４８０

　敏捷：４３０

　魔力：４３０

　精神：４３０

　追加特技：

　気弾

　ソニックブーム

　百烈突き

　エクストリームガード

　デイブレイク

　気配察知

　武具変形

　追加魔法：

　ファイアアロー

　フリーズバレット

　ヒール

　追加特性：

　全能力アップ×１.３

　自動回復・小

　一蓮托生（アッシュ＆マルティナ）

　『一蓮托生』の対象がワシとティナになっている。

　そしてワシは、『生命の宝珠』の力で１０歳の姿に若返っている。

　だから、そのある種の強化効果が、ティナにも共有される！

　バシュウゥゥンッ！

　ティナの体が七色の光に包まれて――

　

　１７、８歳くらいの、若く、気高く、美しい盛りの頃のティナの姿に変化をした。

　何故だかワシとは年齢差がある見た目だが、成功だ！