第28話 マルティナと屍竜使い18
「お主はそれでいいかも知れんが……ワシは許さんっ!」
「一刻の猶予も無い! ヤツの剣の能力は見えんが、一か八か突っ込むぞ!」
「おう! 頼むぞい!」
バーヴェルがドルミナに向かって直滑降する。
「今の妾に真っ向からとは――無謀ぞよッ!」
禍々しく変化した聖剣を振り抜き、剣の波動を放って来る。
尾を引くような波動の色や形も、禍々しく変化をしていた。
「うおおおぉぉぉっ!」
ワシは全力で、その波動を叩き潰そうと斬撃を合わせる。
しかし――
「ぐっ……!?」
手応えが重い! 今までとは比較にならない――!
「お、抑え切れんか……ッ!? ぐうううぅぅっ!?」
「うおおおおぉぉぉぉっ――!?」
ワシとバーヴェルは堪えきれず、大きく吹っ飛ばされる。
天井に穴の開いた地下広間の壁に、激突しそうになる。
「ぐううう……っ!」
吹き飛ばされつつも、何とか『黒竜鱗の大剣』を床に突き立て、勢いを相殺する。
それでもすぐに止まり切らず、後に引きずられてしまう。
だが何とかこちらは――
しかしバーヴェルに目を向けると、姿勢の制御ができないまま、壁に叩きつけられようとしている。
しかもそこには――度重なる破壊の余波で破壊され変形した壁の残骸が、鋭く尖る巨大な槍のように突き出していた。
「いかん……ッ!?」
このままではバーヴェルが石の槍に貫かれる。
『黒竜鱗の大剣』は床に突き立てている状態で、手が離せない。
この状況で『気弾』を撃っても、正確に当てるのは難しいかも知れない。
――だがまだ手はある……!
ワシは左手を『黒竜鱗の大剣』から離し、そこに『大戦士の大斧』をアイテムボックスから取り出して掴む。
「でぇぇぇいっ!」
振り上げた『大戦士の大斧』の柄と刃も、『武具変形』の力でグンと伸びる。
そのまま、石の槍に叩きつける。
ドガアアァッ!
何とかバーヴェルが突き刺さる前に、尖った部分を斬り飛ばしてやる事が出来た。
しかし、バーヴェルの壁への衝突自体は避けられなかった。
『大戦士の大斧』をアイテムボックスに戻し、ワシはバーヴェルに駆け寄る。
「ぐああああぁぁぁっ!?」
「バーヴェル! う……!? こ、これは――!?」
「心配はいらん……! カスリ傷だ……!」
と口では言うが、実際はひどい有様だった。
片方の翼が大きく斬り裂かれ、だらんと垂れ下がっている。
そしてその太い腕――左腕部に至っては、完全に切断されて近くに転がっていた。
「ど、どこがじゃあ――! ひどい怪我じゃぞい!」
「我に構っている場合か、来るぞ!」
「ホホホホホ……! 余所見とは感心せんぞえッ!」
ドルミナが再び、先程の剣閃を放って来る。
「アッシュ! 避けろッ!」
しかし、この位置で避けてしまえばバーヴェルに当たる。
もう一発貰えば――今度は腕では済まないかも知れない。
が、先程の威力……ワシに我を叩き潰す事は――
「!? いや――!」
気付いた。出来るかもしれない――!
ワシは『黒竜鱗の大剣』を再び構え、振り上げる。
その刀身は、『気弾』のような黄金色のオーラに包まれていた!
「そりゃああああぁぁっ! 『デイブレイク』!」
ビギイイイイイイイィィィィン!
純粋に威力が極大化されたワシの斬撃が、今度はドルミナの剣閃の威力を叩き潰した。
『デイブレイク』は一日に一回しか使えない特技のはず。
しかし、先程『大戦士の大斧』をアイテムボックスから出し、戻した瞬間――
再び『デイブレイク』が使用可能になっていたのだった。
つまり、【収納】スキルにそういう効果もあるという事だ。
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