第27話 マルティナと屍竜使い17
苛ついたドルミナが声を上げる。
「ええいちょこまかと……撃ち落せいっ!」
空を飛ぶバーヴェルを追いかける屍竜の呪詛。
無数に撃たれる弾丸の中を、バーヴェルは巧みに飛び回る。
「そのまま避けていてくれい!」
「しかし、どうする気だ!? ここからでは反撃するにも遠かろう!?」
「大丈夫じゃわい!」
ワシは下にいるドルミナに向け、剣を振り下ろす動きを取る。
無論このままで届くはずは無いが――
剣はあっと言う間に地面に届く程に刀身を伸ばし、ドルミナに迫った。
「うぬううぅぅっ!?」
咄嗟に回避するドルミナ。
ドオオォォンッ!
剣はドルミナの元居た場所を叩き、地面を割って爪痕を残す。
「おおぉっ!? これ程伸びるか――!?」
「うむ……!」
王城の中を探索中に、動作確認済である。
「回避を頼むぞい! ワシが攻撃してヤツを追い込む!」
「任せておけ!」
バーヴェルの機動力とワシの攻撃力。
二つを合わせれば――
屍竜魂の力を開放したドルミナとも、互角以上に渡り合う事が出来る!
「そりゃああああぁぁぁっ! 『百烈突き』!」
巨大な質量を伴った突きが、矢の雨のように地面に降り注ぐ!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオォォォォッ!
いくつもの穴が穿たれ、凸凹になって行く地面。
「ぐうううぅぅぅ……っ! 何と激しい攻撃か……!?」
ドルミナは劣悪化した足場に動きを阻まれ、段々と追い込まれて行く。
こちらが、押している! そのことは明らかだろうと思われる。
「近づいて、動きを止めればよいのだったな!? 機会を窺うため、距離を詰める!」
「おう!」
ワシは攻撃を維持しながら、バーヴェルは少しずつ高度を落としていく。
向こうの抵抗は、それほど強くない。
攻撃は最大の防御と言うが、ドルミナがワシの攻撃を捌くことに集中し、反撃の手が余り出ていないのだ。
「ようし、この調子じゃ!」
隙を見て組みつき、ティナを……!
「ならば……っ! ならばああぁぁぁぁぁっ! 全ての屍竜よ……! 肉を捨て純粋な力となり、我が元に集えええぇぇぇいっ!」
オォォォォ――――!
オオオオオォォォォ……ッ!
オオオオオオオオオオ!
「!? 何じゃ!?」
周囲の光景の前後左右――全方位から、屍竜の怨霊の声が響き渡る。
眼下の王都の光景のあらゆる所から、無数の屍竜魂がドルミナの元に集まって行く。
あの一つ一つは、王都の街に展開していた火竜や飛竜のものだろうか。
「ヤツめ……! 最後の賭けに出るつもりか――!?」
そうバーヴェルが呟く中――
ドルミナの元に集った無数の屍竜の怨霊は、聖剣へと吸い込まれて行く。
「……! 聖剣が屍竜の怨霊を吸っておるのか――!?」
「見ろ……! 聖剣が……!」
「変わって行く――!?」
ギギギギギ――メキメキメギメギイィィィィ……ッ!
不快な音を立てて、聖剣は青黒い色に染まって行く。
刀身を湾曲させ、肉厚に変化。あちこちに突起や棘などが散見される禍々しい姿。
そして、最後にボコボコと、屍竜の顔がいくつも浮かび上がって来る。
醜悪な姿だ。そして――
それを握るドルミナの、いやティナの腕には異様に血管が浮き上がっていた。
ドクドクと脈動をし、そして少しずつ、腕自体が青黒く染まって行く。
「ティナの体が……!?」
「い、いかん――! あれではあの体自体が、剣に取り込まれて戻らぬ事になるぞ!」
「ハハハハハハッ! 敗北よりは良かろうぞよ……! 憑代を失おうとも、妾はまた新たな憑代を探せばよい――!」
ドルミナは狂気に満ちた笑みを浮かべる。
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