第26話 マルティナと屍竜使い16
「む……!?」
「避けろ!」
オォォォォ――……ッ!
それは床に当たると気味の悪い叫び声のようなものを残しつつ弾け、そこを抉って爪痕を残した。
「な、何じゃ――!?」
「屍竜の怨霊、呪詛――そう言ったものが破壊力持ったものだ! 気を付けろ! まともに浴びれば、体に変調を来たすかも知れん! なるべく喰らうな!」
「とは言ってものう……!」
一発一発は、一撃必殺の威力とは言えないだろう。
だが、それを全ての屍竜魂が口から連射してくるのだ。
ワシ達の周囲はあっという間に、呪いの叫びに覆われてしまう。
オォォオォォオォォオオオオオオォォ――――……ッ!
全方位への絨毯爆撃!
余りの攻撃の密度に、ワシも呪詛を右足に少々浴びてしまった。
――瞬間、右足が鉛のように重くなる。
「ぐっ……!? これが呪詛の効果かのう――!」
使用率:93/100%
その他リスト:
竜の炎:3
聖剣波動:3
屍竜の呪詛:1
元々85%だったので、屍竜の呪詛は一発当たり8%の計算か。
【屍竜の呪詛】
収納時、呪いに対する耐性を得る。量が多い程耐性アップ。
つまり耐性が付いた上で、この体の重さのようだ。
中々――いやかなり厄介な搦め手である。
この状態で再びドルミナと近接で斬り合っても、動きが阻害されて劣勢を免れない。
「どこに影響が出た!?」
「足が重いんじゃあ――!」
「乗れ! それ以上貰うな!」
バーヴェルは背に乗るようにワシを促す。
「いや――! 待て、そのままでええんじゃあ!」
バーヴェルを制しつ、ワシはドルミナに向けて火竜から受けた『竜の炎』を開放する。
ゴオオオオオォォォォッ!
紅蓮の炎がドルミナに一直線!
「ぬるい!」
聖剣を一振り。炎はあっさり消滅する。
――これは予想通りの結果だ。
お返しとばかりに、ワシには屍竜魂の放つ呪詛が迫る。
「アッシュ! また喰らうぞ!」
「なあに、かえって耐性がつく!」
ワシに直撃する呪詛の弾。
気味の悪い叫びは発せずに、パッと静かに消滅する。
無論【収納】したのだ。
使用率:100/100%
その他リスト:
聖剣波動:3
屍竜の呪詛:3
これで使用率がきっちり100%!
厄介な呪いに対する耐性を高めるために、『竜の炎』を吐き出して使用率の余裕を作ったのだった。
そして耐性を積み上げた分――
「ようし、これでまともに動けるぞい……!」
殆ど影響を感じなくなった。
「また吸収したのか――!?」
「そうじゃ、おかげで体が軽いわい! よし、飛んでくれ!」
呪いの自体の特殊効果は受けなくとも、純粋な破壊力も無論存在する技だ。
受け続けるわけにはいかない。
「おう……っ! 全く相手からすれば、面倒この上ない敵だな――!」
ワシを背に乗せ、羽ばたくバーヴェル。
ギュンと勢いよく、その巨体が上昇し空に舞う。
「おぬしもアレを浴びておったろう? 大丈夫か?」
「フッ……! 我は元々屍竜だぞ? 屍竜に屍竜の呪いは通じんよ」
「なるほどのう……! 屍竜のくせに屍竜使いに従わんとは、面倒なヤツじゃのう!」
「お互い様だな!」
「違いないわい!」
ワシとバーヴェルはそう頷き合う。
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