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第24話 マルティナと屍竜使い14

 バギィィィィィン!


 力と力のぶつかり合い。衝撃音を響き渡らせ――ワシの方がやや押し負けた。

 聖剣とこちらの『黒竜鱗の大剣』が直接ぶつかると、何か強烈な力で弾き返されるのだ。


 これはお互いの素の力よりも、武器の能力差が大きいだろう。

 遠当ての波動くらいは迎撃できるものの、直接のぶつかり合いでは及ばないらしい。


 押し負けたワシは、剣を撥ね上げられて大きく仰け反る。

 それは剣と剣の立ち合いではかなり大きな、致命的ともいえる隙である。


「――もろうたぞ!」


 すかさず一歩踏み込んで来るドルミナ。

 ワシは仰け反った姿勢を戻す事には拘らず、むしろ更に意図的に仰け反りつつ、剣先を床に向けた。


「伸びろっ!」


 剣先が床に突き刺さり、伸びる勢いでワシの体が宙に浮いた。

 剣を支点にぐるりと宙返りをしつつ、距離を取る事に成功した。。


 隙を消すためにこういう使い方もできるのは便利だ。芸が細かい。

 ドルミナは目標を失いその場でたたらを踏んでしまう。


「うぬっ……!? 小賢しいっ!」

「ほぉう……! 少し目を離せば、また強くなっていたか!」


 バーヴェルも感心している様子だ。


「便利じゃろ? ワシも気に入っておるんじゃ」

「どこを見ている!?」

「ワシには、初めからティナしか見えておらんよ!」

「ふざけるな!」


 ドルミナがこちらに向け突進し、まるで雷光のような凄まじい突きを繰り出してくる。


「大真面目じゃわい!」


 ワシもそれに合わせ、長さを戻した『黒竜鱗の大剣』を突き出す。


 バギィィッ!


 剣先同士が火花を散らす。


「フオオォォォォォォォッ!」


 ドルミナは連続して突きを繰り出してくる。

 手が残像で何本にも見えるほどの高速――『百烈突き』か!?


「でえぇぇぇぇいっ!」


 ならば、こちらも!

 ワシとドルミナの『百烈突き』がぶつかり合う!


 ガガガガガガッ! ガガガガガガァッ!


 無数の激突で撒き散らされる威力の余波が、周囲の床や壁を削り取って行く。


「ぬううぅぅ――速さはほぼ変わらん……! が――!」


 バーヴェルが唸る。


「やはり武器の差か……!? 一撃の重さが……!」


 そう、やはりワシの方が圧される。

 繰り出す突きと突きの衝突点が、お互いの中央からワシのほうに迫って来る。

 ならば――!


「さあ、観念せいっ!」


 ドルミナの大きく踏み込んだ突き。ワシを決定的に追い込むつもりだ。

 それをワシは、あえて迎撃せず肩口に受けた!


「フフッ……!」


 直撃を喰らわせたドルミナはにやりとするが――一瞬後にすぐ気が付いたようだ。


「い、いや……! 手応えが無い、これは先程と同じ――!?」

「そういう事じゃ!」

「ぬうう……!? 妾の攻撃を迎え撃つ以上、これ以上は吸収できんと思うたが……!」


 ドルミナの見立ては、間違ってはいない。

 今の一撃で、ワシの状態はこうだ。


 使用率:85/100%


 その他リスト:

 竜の炎:3

 聖剣波動:3


 計算上、次に攻撃を貰えば受けきれずにダメージを負う事になる。

 追い詰められた形。だが逆に――


【聖剣波動】


 収納時のステータスボーナス:

 全能力アップ×1.3


 収納時、武器に聖剣の力を宿す。量が多い程威力アップ。


 これを見ての通り、『聖剣波動』は【収納】する量が多い程威力が増すのだ。


「さぁて、どうかのう!?」


 バギィィィィィン!


 再び激突するワシの剣とドルミナの聖剣。

 そして今度は――ドルミナの方が一歩、後ろに下がった。

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