第33話 リアル国語辞典が出ちゃった!?
ある日のポートフロンティア学園の休み時間でのこと。
「もうそろそろ二学期末テストだね!」
「でも、つぼみちゃん、テストの勉強は?」
「あ、忘れてた!」
「しっかりして!」
つぼみ・沙奈・蘭が二学期末考査についての話題で盛り上がっていると、
「大変だ!怪しい予感がする」
とチララが闇の力の気配を察知した。
「何が起こっているの?」
「国語辞典のページが真っ白になっている!そのせいか、ここにいる生徒や教師たちの様子がおかしい!」
チララは、つぼみたちに怪現象を伝えた。
「確かに。ページをめくってみても真っ白なページが続いている!」
つぼみは憤りを感じた。
その頃、一年二組の教室にいるアリスは、
「かの有名な夏目漱石の不朽の名作『坊っちゃん』ですね!今回のテスト範囲となっています!」
と、期末考査の提出課題であるテスト対策プリントの問題を解答していると、
「最近、インターネットのチャットでうちの学校についての悪口を書いたのはあなただったのね!」
あるクラスメイトがほかのクラスメイトの顔に泥を塗ると、
「こないだの中間テスト、クラス順位が一組の後塵を拝す事態になったんじゃないか!その戦犯はお前だ!」
あるクラスメイトがほかのクラスメイトの足を引っ張ってしまう。
「これはもしかしますと、魔獣の仕業でしょうか!?」
アリスはこう推理する。
その様子を、ポートフロンティア学園に潜入している怪盗トリオのベータとガンマは倉庫に簡易モニターを設置して見ていた。
「なかなかいい調子じゃん!」
「ことわざや慣用句を体現している!」
ベータとガンマが大喜びすると、
「それじゃあ、例の作戦に行こう!」
「ガッテンだ!」
と、何か作戦を始めるようだ。
「まずは放送室へ!」
ベータとガンマは放送室へと向かう。
「ピンポンパンポン」
「休み時間中に失礼します。一年二組の野々原アリスさん、大至急図書室に来てください。繰り返します。一年二組の野々原アリスさん、図書室に来てください」
すると、校内放送が突然流れた。
「行きましょう」
アリスが放送の指示に従って図書室へと向かう。
そこには、ベータとガンマがキリンみたいに首を長くして待っていた。
「遅かったな」
「本日の魔獣はこちら!」
「国語辞典の魔獣だ!」
彼らの合図で、真っ白なページの本に漢字が飛び出している国語辞典の魔獣が現れた。
「さあ、やってやれ!」
「今はパソコンやスマートフォンの普及で活字離れが進んでいる!だから、みんなの手から国語辞典を離れなくしてやるぜ!」
魔獣の力で、ポートフロンティア学園にいるつぼみたち一部を除くほぼすべての生徒の手に国語辞典がくっつけられた。
「と、とれない」
「あ!」
「『忖度』と書いてある!」
「なんて読めばいいのか」
「どんな意味なのか」
「まったくわからない!」
生徒たちは思わず困り顔になった。
その頃、つぼみたちも異変に気付く。
「みんなの様子がおかしい!」
「私たちは難を逃れるために自習スペースに行こう!」
「うん!」
つぼみたちは自習スペースへと避難する。
「ここの生徒さんを助けたいのであれば、『忖度』という言葉の意味を探してくれ!」
「超難問、分かるかな?」
突如、ベータとガンマがアリスに難題を突き付ける。
「では、行きます」
アリスは、プリンセスミラーでシトラスイエローに変身する。
「イエロー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
アリスを黄色の光が包む。
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
シトラスイエローが現れると、
「忖度の意味を」
「答えてみろ!」
ベータとガンマと魔獣がシトラスイエローに近づいてくる。
するとその時、
「ぴかっと閃きました!」
とシトラスイエローは何かを思いつく。
「忖度とは、他人の気持ちを推し量ることです!例えば、『彼の真意を忖度しかねる』というのが挙げられます!」
シトラスイエローが忖度の意味を解説すると、曇っていた空に一筋の太陽の光が差し込んできた。
「うわっ!」
「とれた!」
すると、その光に照らされて国語辞典が手から外れた。
「今がチャンスです」
シトラスイエローはプリンセスミラーにトパーズのマジカルストーンをセットする。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
シトラスイエローによる魔獣の浄化がはじまった。
「得意なことより」
「好きなことがいい」
「だけど」
「遊びもいいけど」
「学びもきちんとね」
「そう 人生は一筆書き」
「真っ白なキャンバスに」
「どんなふうに描こうかな」
「パパとママと先生も」
「おじいちゃんおばあちゃんも」
「そして 子供たちも」
「みんな同じ」
「世界の中に」
「暮らしているよ」
「個性を生かしながら…」
「トパーズの輝きでパワーアップ!乙女の勇気!トパーズ・フローラル・セラピー!」
シトラスイエローがレモンイエローの花を描き、魔獣に向かって放つと、魔獣は跡形もなく消えていった。すると、マジカルストーンが落ちてくる。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをアリスのプリンセスミラーに認識して、
「御影石。触ると不思議な予感がするマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
シトラスイエローが勝利宣言する一方で、
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
ベータとガンマはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
そこに、国語辞典が落ちてきた。
「『国語辞典 ジャポペディア』と書かれている表紙の裏に、『一年一組 藤村晴斗』と書かれています!今すぐに晴斗さんのもとに届けなければなりません!」
アリスは、落とし物を晴斗の元へ届ける。
「すいません、これ、落とし物です!」
「どこで見つけた?」
「図書室です!」
「僕が大切にしている国語辞典がどうしてこんなところに!?」
「実は、魔獣の材料になっていまして」
「本当なのか!?」
「そうですよ」
さかのぼること数時間前、つぼみたち一年一組では移動教室で音楽室へと向かわなければならなかった。
「じゃあ、行こう」
「先生が待っているからね」
「うん」
つぼみたちが教室を出ていったその時、学ランに眼鏡姿のベータとガンマが一年一組に忍び込んできた。
「へへっ、今がチャンス!」
すると、晴斗のカバンから国語辞典が出た。
「国語辞典ジャポペディア、見っけ!」
「よし、今日の材料はこれに決めた!」
「さあ、取り掛かるぞ!」
「ガッテンだ!」
つぼみたちが音楽の授業を受けている間、ベータとガンマが魔獣の生成に取り掛かっていたのだ。
「はっ!思い出した!」
「何でしょうか?」
「僕たちが音楽室に行っている間に盗まれたのだった!」
晴斗は、国語辞典がいつどこで無くしたのかに気づいた。
「とりあえず、ありがとう」
「どういたしまして」
アリスは晴斗に国語辞典を渡すと、
「そのことをつぼみたちに知らせなければならない」
「そうしましょう」
アリスと晴斗はつぼみたちの元へと向かう。
その場所である自習スペースには、つぼみたちが期末考査に向けて勉強していた。
「つぼみさん、沙奈さん、蘭さん」
「やあ、調子はどう?」
「テスト勉強は順調だよ」
「私もよ」
「ちゃんとやっているわ」
「それはよかった」
「やっぱりです」
アリスと晴斗がつぼみたちの頑張りに感心したうえで、
「ところで、最近モノが勝手に盗まれている事件は知っているか?」
「もちろん」
「実は、怪盗トリオが魔獣の材料にするためにやっていることに違いない。カメラや文房具といい、国語辞典まで盗んでいたなんて、何とも言えない人たちだと思う」
つぼみたちは怪盗トリオに警戒心を露にする。
そして、
「だから、モノは大切に使おう」
「例えば、鉛筆や消しゴムは小さくなるまで使うことね」
「毎日、モノに感謝しなければなりません」
つぼみたちはこう理解を示した。
「それじゃあ、期末テストに向けて頑張らなくちゃ」
「あと二週間ほど」
「お互いベストを尽くせるように」
「一日を大切にしていこう」
その後、つぼみたちは期末考査に向けて勉強を進めていくのであった。
空が茜色に染まったころ、プラチナの家ではカレンとチャミィがいた。
「ねむい」
「ボクがタオルケットを持ってくる」
数分後、チャミィが屋根裏部屋からタオルケットを取ってくると、
「おやすみ、カレン」
チャミィがカレンを寝かしつけると、
「コンコン」
突然、玄関のノックの音が響いてきた。
「失礼します」
「晴斗、もうお帰りなのか。カレンはもうすでに眠っている」
「ああ。ついさっきまで学校でつぼみたちと一緒に勉強していた。あと二週間で期末考査が控えているからね」
「今回のテスト、自身のほどは?」
「もちろんある」
晴斗は、チャミィと会話する。
「そういえば、今日、僕の国語辞典が怪盗トリオによって盗まれていた」
「何だと!?」
「でも、シトラスイエローに変身したアリスが図書室見つけてくれたようで。廊下でばったり会って渡してくれたから、一安心した」
晴斗はチャミィに今日のことを報告すると、
「怪盗トリオがいる時代の横中はきっとゴミで溢れているのだろう。モノを大切にしない人たちがこの時代には多くなっているとパルルから聞いている。最近は地球温暖化が進んでいるからね」
「えっ!」
「2119年のお話だ。今は安心してくれ」
と現代と未来の世界は様変わりするとチャミィは語る。
「じゃあ、トランプでもしようか」
「そうしよう」
その後、晴斗とチャミィはトランプの7並べのゲームをしていると、
「スペードのエースが出てこない、クローバーのエースが出てこない、あっ!ハートのエースとダイヤのエースがボクの手に!これ、どっちもベースが赤じゃないか!」
「どうかしたのか?」
「なんともないよ」
チャミィがハートのエースのカードとダイヤのエースのカードを持っているのに対し、晴斗がスペードのエースのカードとクローバーのエースのカードを持っていることに驚いてしまったのであった。




