63.余波
七生、ショッピングに出かける。の巻
私の休日はアレンさんのところで働いていたときの条件とおなじ、週に2日だ。
屋敷に戻ると、オーガスタさんから新作が入荷したから見に来ない~?と伝達石に伝言が入っていたので、見に行くことにした。
デルレイに今日の予定を聞かれて答えたところ、必ずエルシーを連れて行くようにと言われてしまった。今日はどうしても外せない用事があるとかで屋敷から出られないらしい。
「えー、エルシーにも仕事があるのにそれを中断させて付き合わせるなんて悪いよ」
「俺が付き合えないときはエルシーを連れて行け。エルシーの仕事はナナオの世話係だ。いい加減、慣れろ」
「えー。でもさ~」と私が言いかけたところに、ヴェラさんが「ナナオさん」と遠慮がちに話しかけてきた。
「ナナオさん。エルシーが、ナナオさんは自分で何でもできてしまう方だから出番があまりなくて・・・と私にも相談してきております。外出のお供をさせてください。彼女は王都生まれですからこのあたりにも詳しいですよ。」
「そうですか。じゃあ付き合ってもらおうかな。」自分の行動がエルシーを悩ませていたなんて。デルレイが言うように、仕えてもらうことに慣れなきゃいけないのかなあ。でも、元の世界に戻ったときに自分でやるのが億劫になったりしたらどうしよう。
部屋に戻った私のところに、エルシーがお茶道具を持ってきてくれたのでウェルズ商会に行くので付き合ってほしいと伝えたところ、「わかりました!!」とそりゃあ嬉しそうに言われてしまった。
やっぱり、ヴェラさんやデルレイの言うようにエルシーに世話をしてもらう感覚に慣れたほうがいいのか~、とエルシーの様子をみて思う。
「本日は、ご購入の予定ですか?」
「オーガスタさんから新作が入ったと教えてもらったから見に行こうと思って。エルシー、もし欲しいものが見つかったら買ったらどう?私は、付き添ってもらうというより友達とショッピングという気持ちでエルシーを誘ったんだし」
「まあ・・・ナナオさん。友達だなんて」エルシーが目を潤ませたので、私はちょっと焦ってしまった。
「ナナオ、いらっしゃい。あら、エルシーと一緒に来たのね?」
「オーガスタさん、こんにちは。一人で出かけるのはダメだとデルレイに言われまして」
「相変わらず過保護なのねえ。でも、ようやく振り向いてくれた恋人ですものね。しょうがないか」オーガスタさんはうふふふと私を見る。
すいません、私は今とっても恥ずかしいんですけど・・・・。自分からは話してないのに、どうして周囲の人間が知っているんだろうか・・・・
「あのですね、新作が入ったと聞いて見に来たんですけどっ」私は、これ以上追及されたくないので用件を慌てて伝えた。
オーガスタさんは「あ、そうだったわね。・・・・ナナオ、今度ゆっくり聞かせてもらうわよ。そのときはフローラも一緒がいいかしらね?」とにっこり笑った。
私とエルシーがワンピースやらスカート、シャツ、小物などを見ていると店内に一人の女の人が入ってきた。金茶色の髪の毛と瞳が印象的で、豊かな胸元を強調するような服を着た女の人だ。
オーガスタさんが「まあ、いらっしゃいませ。お久しぶりですね」と女の人に声をかけた。
「久しぶりね、オーガスタ。夫が王都に出張になったので、私も久しぶりについてきたの。」
思わず自分のほどほどな胸と、女の人の豊かな胸を比較してしまった。あの人と比べたら、ほとんどの人は貧乳だな。
ふと隣で服を見ているエルシーに目をやると、なぜかエルシーが渋い顔をしている。
「エルシー、どうしたの?疲れちゃったんなら屋敷に戻る?」
「え?あ、大丈夫ですっ。ナナオさん。このワンピースかわいくないですか?」
エルシーが差し出したワンピースは確かにかわいい。きっとエルシーに似合う。
「いいんじゃない?きっとエルシーに似合うよ」
「そうでしょうか。ナナオさんはどのような感じがお好みですか?」
「私?そうだなあ・・・このシャツとスカートなんかいいなあと。こっちのジャケットもいいよね」
「いいですね。お似合いですよ」
「そうね。よく似合うと思うわ」後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはいつの間にかさっき見た女の人がにこやかに立っていた。
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デートの次の日の話です。
ほのぼの異世界話がモットーなので、シリアスにならないように
バランスよく書き進めたいです。




