エピローグ 森のはずれの領主邸
ヴァーグナー侯爵家は、ゲルグ国のはずれ、常闇の森との境に分領を持っている。長らく領主代理の家令が管理していたが、数年前に侯爵が代替わりするのを機に新侯爵の末弟が管理することになった。
元々小高い丘の上にあった屋敷は引き続き家令が管理することになり、新しい領主は常闇の森との連絡小屋があった森との境に新しい屋敷を建てた。
新たな領主は、王都で騎士を務めており、領地と行ったり来たりの生活だ。領主が帰ってきたときには、丘の上の屋敷で夫婦そろって過ごすこともあったが、領主の妻が一人の時は、基本的に森の脇の新しい屋敷で過ごした。
黒髪に黒目というゲルグ国にはない色味を持った領主の妻は、常闇の森の民だった。
末の息子とはいえ、侯爵家の息子が異国のしかも森の民と結婚することに人々は衝撃を受けたが、騎士団総長である第三王子を媒酌人にされてしまっては、表立って物申せる貴族はいなかった。しかも少し前に起こった鉱毒事件を解決に導いた立役者とのことで、多くの貴族は好意的にとらえていた。
社交界にどのようにデビューするのか、人々は興味津々だったが、肝心の騎士は騎士爵以外の爵位の継承を固辞し、華やかな世界とは距離をおいた。社交界に妻を連れて出ることもなかった。
領主の妻は、森と自由に行き来できた。
そして妻の親族も、その屋敷にたびたび訪れた。
領主夫妻の仲の良さは有名で、村人にも慕われ、村はますます栄えたという。
これにてこのお話は完結です。
1ヶ月間お付き合いいただきありがとうございました。
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一応続編の構想もあるのですが、その前に何編か短編を書いて勉強したいと思っています。
またポツポツ書いていきますので、時々覗きにきていただけると嬉しいです。




