八話 経験値ザクザク系レアモンスター達の冒険が始まる話
其奴は現世の時間で約半年前に生まれた。
じゃが魔法で実質、もう六千年以上の付き合いじゃ。
無論六千年もあればより親しくなろう。
名前はトミカワタケシというそうじゃ。
無駄に長くて呼び難い故、タケと呼ぶこととした。
儂はもう何十万年も生きとるが、タケは今までの生で最も長い時間伴にした生き物であろう。
97年目で儂の剣術はほぼ覚えたが、言われたことをどんどん吸収するタケに、どこまで入るのか試してみたくなった。
十年毎にどんどん精度が上がっていく。そしてたったの六千年で、儂の頬に傷をつけた。
たったレベル200と少しの者が、この儂にじゃ。
信じられるか?
幾ら儂がスキルを使っていなかったといえ、そんなことは普通あり得ない。
本人はわかっていないようだが、神である儂に傷をつけるより、他の生命を全て滅ぼすほうが圧倒的に簡単だろう。
儂は最強。
絶対に最強無敵の存在。
それに奴は届いたのだ。
奴は将来、儂をも超える存在になるやもしれん。
儂は獣神。ならタケは魔神かの?
楽しみでしかた無いわ。
このペースなら、近い将来来たる戦も生き残れるじゃろう。
タケは強く、優しく、賢く、勇敢な戦士。
儂を超えれるかもしれん、類稀なる存在。
タケは世界を変えるやもしれん。
それを最も近くで見るのは儂でありたい。
師として誇りを持って、隣に立ちたい。
決して人間の女なぞにその席を譲ってなるものか。
「貴様、サワキタと言ったな。」
「あ、ナナでいいですよ。」
「そうか。貴様、冒険者ランクは?」
「S」
「ゑ?マジで?」
「半年でSランクは史上最速だって。」
「なるほど。レベルは?」
「112。」
「高。」
「言っておくが、儂とタケの方が圧倒的に強いぞ。貴様のスキルと技術次第ではあるが、少なくともレベルは圧倒的に上じゃ。」
「え。凄いですね。私は先輩の捜索以外はダンジョンに入り浸ってたのに。」
「儂らについてくるつもりじゃろう?ついてこれるのか?言っておくが儂はいざという時タケは守るが貴様は守らんぞ。」
「どうしたんですか師匠。さっきから言い方に棘がありますけど。」
自分でも何故こんな機嫌が悪いのかわからん。ただ、この女とタケが話しおるのを見ると、如何にも腹が立つ。
「足は引っ張らないように気をつけます!!」
「ついてこれなければ置いていく迄じゃ。」
◆◇◆◇
冒険者ギルドに行くと、冒険者達がベロベロに酔っ払っていた。
「おぉ〜う兄ちゃん。ギルドの酒を飲み尽くしてやったぜ!」
「ばららろう!飲み尽くしたのは俺らぁ!」
「まじですか。いくらになりました?」
「327879Rですね。余裕で足りますよ。さて、御用は何ですか?」
「パーティー登録をお願いします。」
「かしこまりました。」
「えーと、タケシです」
「ナナです。」
「…ファリアじゃ。」
「え、ナナって〈瞬殺〉の……まあいいか。はい。登録しておきます。」
なんか二つ名付いてる件。
「クエストは……初めだし薬草採取とかで……」
「つまらんわ。」
「先輩、こっちの狂龍討伐とかどうですか?」
「ランクS+じゃん。俺受けれません。」
「パーティーランクはメンバーごとのランクの平均ですからね。E、E、SだとCランクパーティーです。」
「二人共私より強いのに。」
「……CランクだとB以下のクエストが受けれるので、この下位炎竜討伐とかはできますけど…あとは新人冒険者指導とか…」
「儂ら新人冒険者では?」
「普通Cランクパーティーは新人冒険者じゃないんですよ…」
「この獄炎龍の鱗採集とかで良くないですか?」
「ほう。面白そうじゃな。」
「流石にEランク冒険者には荷が重いですよ。ナナさんはともかく、お二人は新人じゃないですか。」
「二人共私より強いって言ってるじゃないですか。」
「いえ流石に実績も経験もないEランク冒険者にそう易々と高難易度クエストを紹介できないんですよ。それに史上最高の天才弓術士と呼ばれたあなたより強いと言われても中々…」
「要は実力を見せればいいという訳じゃな。ならば真の姿に…」
「師匠、流石にそれは拙いですよ。」
「ううむ…」
◆◇◆◇
へえ。シロのやつ、楽しそうなことしてるなあ。
異界の転生者二人と冒険者とか…しかも二人共かなりの逸材。女の方は「愛神」の【器】だし、男の方に至ってはなんだこの【器】の数。「魔神」「魔王」「空ノ覇者」「真魔」…他にも増えるかもな。
この男は一体前世でどれほどの善行を積んだのやら。
おっと。困ってるな。そうだ。面白いこと思いついた。
シロ〜。こないだのお返し。僕からのプレゼントさ。
「運命神」の【完成した器】として、この僕が君たちの冒険を面白おかしくしてあげよう。
先ずはそうだな…よし。こうしよう。
「【運命操作】」
彼の者達に、楽しい楽しい運命が在らん事を♪




