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四話 経験値ザクザク系レアモンスターが街に行こうとする話

 《【全魔法】と接続。[空間中位魔法:空間拡張]を使用します。》


 ドラゴンの皮と鱗、獣の毛皮、木の皮などで作った鞄に、道中狩った魔獣等を入れる。


 肉は普通に腐るので、師匠の時間魔法に任せる。なんでも俺のレベルでは時間魔法はまだ使えないらしい。


 人間の姿になって、服装は旅人風。腰に太刀を差して、背中に鞄を背負う。


『ほら、キビキビ歩け。日が暮れてしまうわ。』


「師匠が虎になって乗せて走ってくれれば一瞬なんですけどね。」


『戯け。何処の世界に弟子を背中に乗せて走る師匠が居るか。』


 師匠はなんかちっちゃい虎に変身して、肩に乗っている。かわい。


『………』


「ん?どうしたんですか?」


『タケ。貴様儂が心を読めるのを忘れておらんか?』


「そういやそうでしたね。」


 ああ。かわいいって言ったから照れたのか。


『照れとらんわ!』


「【神速】、ずっと使えれたら楽なんですけど。」


『連続で40秒も使ったら脳が焼き切れるぞ。並の人間なら3秒も持たんがな。』


 樹海の奥の方で、何かが光った。


「なんだ?発光する魔獣でも居るのか?」


『いや、これは………外じゃな。』


 おお!!洞窟から此処まで二週間!漸く外か!


「【神速】!」


 一瞬で森を抜けきる。


 広がっていたのは広大な草原。


 遠くに山が霞み、いつもより強い日差しが俺を照らす。


 ん?ちょっとヒリヒリする。


『デーモンの癖にまともに日光を喰らって死なんとはな。』


「え!?」


『今まで木々に覆い隠されとったから殆ど当たらなかったようじゃ。』


「そういう怖いことは先に言って下さい!」


『言う前に【神速】で突っ走ってしまったんじゃろうが。少し焦ったわ。』


 なんで俺平気なの?


 《デーモンは基本的に日光に当たると塵になります。回避方法としては、神の加護を受ける、魔道具を使う等が挙げられます。》


『ああ。そう言えばタケには魔神の加護があったな。』


 え、初耳。


『別に鍛錬するものでも、珍しい物でも無い故な。まあタケはのは少し強いようじゃが。』


 ああそう。まあいいか。


『それよりナビ。次はどちらじゃ?』


 《回答不可。主の質問以外は受け付ける事ができません。》


 ナビさん。師匠の質問にも答えてやってください。


 《承諾。主の意思を確認。次は北北西に直進。暫くすると道が在るので、其処に合流します。》


『可愛くない奴じゃのう。』


 苦笑しつつ、言われた通りに歩く。


 そういえばナビさんって、感情とかあるのかな。


 《回答。【みちびくもの】による声は神の分身と言われます。実際は少し異なりますが、私に「魂」と「精神」は確実に存在しています。ただ、私には「肉体」が存在しない為、現世の生物ほど魂と精神の外的要因による形質変化。主が「感情」と定義する反応は起こりづらいと言えるでしょう。》


 あ、一応ありはするんだ。ちょっと何言ってるか分からないけど。


 《説明。「魂」、「肉体」、「精神」は生命を創る三要素と言われ、其々が共鳴し合って一つの人格を………》


『五月蝿い奴じゃ。そんな事聞いとらんわ。』


 《承諾。説明を中止します。》


 あ、道だ。轍がある。


 《右に道なり。暫く先の分かれ道は左折です。その先、目的地周辺です。》


 本当にカーナビみたい。


『かーなび?なんだそれは。』


「前世の世界に在った道具です。空高く飛ばした道具で自分の位置と目的地の位置を把握して、持ち主を目的地まで誘導してくれる、電気の力を使ったからくりです。」


『ほお。魔力が無い世界だと言うのに物凄い物を創るんじゃな。』


「他にも凄いのありますよ。例えばどれだけ離れていようといつでも会話できる機械、魔法を使わず空を飛ぶ機械から、街を一つの吹き飛ばすほどの爆発を放った後、毒を撒き散らす最強の兵器まで。」


『えげつない世界じゃの。』


「月に降り立った人間もいますし……」


『待て待て月に降り立った!?どうやって?儂はいくら飛んでも届かず、だんだん空気が薄く、気温が低くなって来たから引きかえしたんじゃが。』


「ロケットの仕組みは詳しくないんでわからないですけど…………」


 ◆◇◆◇


 暫く進むと、分かれ道。ここを左っと。


 師匠と喋りながら歩いていると、遠くに城壁が見えた。


 《城塞都市アンタレス。漁港が有名で主な収入は海鮮類。中立地帯に位置し、民主制が成立している国家です。西大陸に展開する傭兵団“雷鳴団”の本部が在り、更に冒険者ギルド“ホワイトタイガー”の本部も存在する大都市です。名物は年に一度の“獣神祭”。この都市から少し離れた樹海に居るという神獣の伝説をモチーフにした彫刻や絵画、工芸品等が人気を集めています。》


 師匠じゃん。


「師匠、名物になってますよ。」


『……少し照れるのう。まあ儂、最強じゃし仕方ないか。』


 城壁に近づくと、行列。


「なんの行列ですか?」


「ん?ああ兄ちゃん、初めてなのか。これは街に入る為の行列だよ。入る前に全員調べられるんだ。身分証を提示できるか。できないなら魔道具で、犯罪歴は無いか、悪魔等の化けた姿では無いか。もし悪魔でも街に入られようものなら何が起こるかわからんからな。」


 え゛。


(モロアウトでは無いか。)


 わっなんだ。師匠の念話か。どうしよう。


 《提案1。鳥等に変身して侵入。その場合「犯罪歴」が付くので、今後人里での行動が制限されます。》

 《提案2。誰か身分証を持っている人を殺し、【変身】でその人に成り代わる。》

 《提案3。強行突破。》

 《提案4。種族進化をする。》


 2,3は論外。2とか発想怖すぎだって。1か4だけど……種族進化って?


 《レベル300に成れば種族進化が可能です。その場合約6%で【完全偽装】が習得可能です。【完全偽装】であれば魔道具も突破できるでしょう。》


 6%って……確率ひっくいな。にしても300か。今235だから……え?遠い。


 師匠。ちょっとレベル上げるね。


『レベル上げなら丁度いいのがおるわ。』


 精神と時の……じゃなかった。時の神社。


「レベル上げに丁度いいのとは?」


『タケ。貴様以上に最適な者が何処にいる。[召喚魔法:スライム亜種]』


「え?」


 目の前には、自分。


『ミラー・スライム。敵をコピーする魔物じゃ。ステータスもコピーするから得られる経験値も自分を殺した時と同じ。剣術もコピーできる。じゃが、スキルは無理。余裕じゃろ。』


「[上位火魔法:HELLFIRE]」


 師匠。さっきから話しかけてるの、偽物の方ですよ。


 師匠の目の前で、スライムが【全魔法】のスキルで消し炭になる。


『あ。すまんすまん。ぱっと見わからん故な。』


 《レベルが上がりました。235 → 423》


 はああああああああ!?

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