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二話 戦闘力つよつよ系虎モンスターに鍛えられている悪魔の話

『余裕だったろう?』


 は、はい。


『【神速】は元々扱いが難しすぎるスキルでのぅ。たった4ヶ月で動体視力が適応したのはお前の才能じゃな。誇って良いぞ。』


『じゃ、次は【変身】じゃな。成功度はステータスに依存するから今まではできんかったが、もうできるじゃろ。』


 じゃ、【変身】


 ドロンと、黒い煙がでる。


 前世の自分の姿になる。


「おお!人間の体!喋れる……って全裸!!」


『ほれさっさとそのお粗末な物を隠せ。儂に人間の男に興奮する趣味は無い。』


「え……服無いんだけど。」


『【変身】は服も含めてできるわ。要はイメージじゃ。儂も使えるぞ。ほれ。』


 ドロンと黒い煙が出て、中から出てきたのは着物を着た白髪虎獣人幼女。


「え!?師匠メスだったの!?」


「儂に性別は無い。なんせ神獣じゃからな。ほれ。」


 ドロンと黒い煙がでて、中年のイケオジに変身する。


「こちらでも良いぞ?」


 服をイメージして……出来た。Tシャツジーパン。


「虎の姿でお願いします。」


「妖艶な遊女にもなれるぞ?相手してやるには相応の代価が要るがな。」


「結構です。」


「なんじゃつまらん。」


 そう言ってドロンと白虎に戻る。


『まあ冗談はこれくらいにして、次は……【改悪】【改善】か。これはな。儂も知らん。』


「え?」


『聞いたことも見たことも無いわ。自分で研究しろ。』


「え〜じゃあ、【改悪】!」


 近くの石に使ってみる。


 《警告。【改悪】を本当に使用しますか?》


 え。何それ怖い。どんな効果なの?


 《【改悪】【改善】に対する「世間一般に知られている情報」は存在しません。》


 分からないんだ?


 《分からない訳ではありませんが、主に提供できる情報の条件を満たしていないため、話すことはできません。》


『めんどくさいやつよのぅ。』


 じゃあ、使用する!


 《【改悪】を使用します。離れて下さい。》


 え。


 黒い靄が石を包む。周りの魔力をどんどん吸い込んでいく。


 俺の魔力もごっそり喰われる。


 《【改悪】、完了しました。一般堆積岩 → 呪黒石。》


『なんじゃと!?』


 え、なに?なんですか師匠。


『呪黒石は文字通り、呪いが籠もった鉱物じゃ。其れには魔力が無理矢理押し込まれていて、下手すると大爆発を起こしかねない代物。近づくだけで並の人間なら魔力が奪われて死んでしまうわ。貴様は大丈夫のようだが、絶対に人里で使うなよ。国を滅ぼすことになるぞ。』


 やばい。


「か、【改善】!」


 《警告。【改善】を本当に使用しますか?》


 はい!


 《【改善】を使用します。》


 今度はさっき以上の魔力が奪われる。うわっ目眩が…


 《【改善】、完了しました。呪黒石 → 天祝石》


『………天祝石は稀に天から降ってくる神の秘宝だ。魔力を整え、恵みを齎す効果がある。それを媒介に魔力を使えば威力が増大し、土地に埋めれば200年は土地が死なないと言われている。全く。馬鹿げた男よ。』


 直後、魔力切れで意識を失う。


『やれやれ。仕方ないのう。』


 ◆◇◆◇


 いつの間にか姿がいつものコウモリモドキに戻っていた。


 変身、魔力を使うようだ。まあ俺の魔力量なら回復量が消費量を上回るから、今みたいに魔力切れにならない限り平気なようだが。


「おう。起きたか。」


 目の前にさっき見た白髪虎獣人幼女がいた。


 師匠、何してるんですかそんな格好で。


「いや、この小さい手の方が作業しやすくてな。ほれ、貴様が寝てる間に作ってみたぞ。」


 渡されたのは太刀。


「柄は霊魂樹……この樹海の中央にある大木の枝を使い、刀身には先刻の天祝石を【錬成】したものを。ついでに儂の生え変わり前の牙を使った伝説級の一品じゃ。銘は……そうじゃな。“神祝刃”とかで良いか。」


 な、なんで太刀?


「魔法は【導】、【全魔法】のお陰で最強故、儂の剣術、『雷獣流』を伝授してやろう。魔力は回復してやるから、人になれ。」


 剣術!?俺ズブの素人ですけど!?


「妙な癖が付いてるよりは素人の方が教えやすいわ。」


 ドロンっと。


「なんでそこまでしてくれるんですか?」


「今更じゃな。気に入ったからじゃ。お前のことが。この技を誰かに伝える時は、伝えても良いと思える者に伝えよ。」


「ありがとうございます。」


 こうしてスキル訓練の次は、剣術訓練へと移行するのだった。


 ◆◇◆◇


 ドロン。


 師匠が今度はスタイリッシュな、長髪の女剣士に変身した。


 後ろで括ったその艷やか黒髪に、気持ち程度の軽い鎧。ぶっちゃけ結構好みだ。


「ん?儂に惚れたのか?相手して欲しいなら儂より強くなることだな。」


 あ、心読めるんだった。


「いえ惚れた訳では。見た目が綺麗だなと思っただけです。前世では一応恋人いましたし。」


 童貞で終わったけどな!


「はっはっは。なんじゃ童貞だったのか。」


 心読めるの厄介だな。


「何が厄介なんじゃ?言ってみい。」


「それより早く、剣術教えてください。」


「分かっとる分かっとる。じゃあ、まず基本の型じゃ。

 雷獣流には大きく分けて3種類の型がある。上段、下段、抜刀じゃ。中段は無い。

 簡単に言うと、上から、下から、そして居合じゃ。

 ま、全部極めるのなら何十年掛かるやら。別に儂は何十年も相手してもいいが、少し都合が悪いでな。魔法を使う。」


 魔法?


「[獣神位時間魔法:時の神社、雷鳴と竹林]」


 視界が歪む。


 いつの間にか神社の本殿の前に立っていた。


「ここは現世と幽世の間でな。時の流が遅いんじゃ。ここでは100年も、外では1日程よ。」


 なんかドラゴ●ボールで見たぞそんなの。


「安心せい。腐っても伝説級悪魔である貴様の寿命は無限じゃ。何千年でも相手できるぞ。」


 ………ゑ゛?


「はいまず素振り一億回!」


 イカれてやがる!!!!

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