表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/206

122 魔物解体

「れっ……レイブンだ!」


 ダルトンが声を上げる。


「レイブン?」

「言っただろ⁉

 近所の村に魔物が出て、討伐依頼が学校に来たって!

 あれがその魔物だよ!」


 そう言えば、そんなこと言ってたな。


 レイブンと呼ばれた魔物は巨大なカラスだ。

 俺が知ってるカラスと違うところは、サイズが10倍くらいあるのと、額に第三の目があることくらいか。

 後は普通のカラスと形状はあまり変わらない。


 こんなでっかいカラスに襲われたら、普通の人はたまったもんじゃないだろうな。


「ぎょえええええええ!」


 悲鳴にも似た耳障りな鳴き声を轟かせ、あろうことかコルドめがけて急降下するレイブン。

 一人だけ離れた場所にいるので、孤立して狩りやすい獲物と思われたのだろうか。


 最も目をつけてはいけない奴に狙いを定めてしまったレイブンは、大きな足でその身体を捉えようとする。

 しかし……。


「ぎょええええ……ぎょぼ⁉」


 その両足が標的を捉えることはなかった。


 コルドが放った水の弾丸がその身体を次々と貫いてハチの巣にする。

 黒い羽根をあたりに飛び散らせ、苦しそうに身体をくねらせるレイブン。


 しかし、さすがは魔物と言ったところか。

 今の攻撃では致命傷に至らず、何とか羽ばたいて態勢を整える。

 コルドを狩るのは難しいと考えたのか、翼を広げてUターン。

 さっさと逃げ出してしまった。


 死ぬまで戦い続けようとしないところがRPGとは違う。

 魔物だって生きているのだから、相手が強敵だと分かればとっとと逃げるだろう。


 だが、コルドは自分に危害を加えようとした魔物を見逃すほど、お人よしではなかった。


 彼女は新たに水の帯を発生させて、逃走するレイブンへと放つ。

 うっすらと差し込んだ朝日を浴びて七色に光るそれは、まるで虹のようにも見える。


 レイブンの足に接触すると、音もなく切断。

 たまらずに悲鳴を上げる奴の元へ、第二、第三の帯が放たれていく。


 両足に翼、そしてくちばし


 身体のあらゆる部位が切断され、地面へと落下するレイブン。

 墜落する間ずっと、まとわりつく帯によってもてあそばれ続け、大地にたどり着くころには原型をとどめない肉塊と化していた。


 ぼとぼとと麦畑に降り注ぐ血と肉。

 黒い羽根は風に運ばれて周囲に散らばっていく。


 まるで手品でもしているかのように、一体の巨大な怪鳥が跡形もなく消えてなくなってしまった。


 いや……消滅したわけじゃない。

 残骸は残ったままだ。


 しかし、その残骸が元は巨大なカラスだったと言われても、ちょっと信じられそうにないくらい徹底的に破壊されてしまったのだ。

 この間、わずか数秒のことである。


「ひっ……ひぇ……」


 ぶるぶると震えるダルトン。

 次は自分の番かと恐れおののいている。


 俺はにこやかに微笑んで、ぱちぱちと拍手をした。


「素晴らしい、さすがは副会長だ。

 あのレイブンを数秒で解体するなんて……。

 見くびっていましたよ」

「今のが切り札?

 だとしたら肩透かしもいいところね。

 あんな雑魚に私を倒せると思ったの?

 見くびられたものね」


 そう言って水色の髪をシャランと払ってたなびかせるコルド。


 レイブンは切り札でもなんでもない。

 ただ偶然ここへ飛んできただけ。


 そもそもこっちにはなんの手立ても残されていない。

 まったくの無策。

 こんな状態であんなのと戦ったら、一秒も持たないだろう。

 一瞬で肉塊へと変えられてしまう。


 うわぁ、やべぇな。

 本格的に困ったぞ。

 このままでは本当に詰む。


 もうごまかすのも限界だろう。

 口先だけで稼げる時間は、ほんの数秒がいいところ。


「申し訳ありません。

 実際に戦うところを見たことがなかったもので。

 実力を計りかねていたのです」

「次は何かしら?

 ケルベロス? アラクネ?

 それとも牛頭馬頭ごずめずとか?」

「いえ……」


 そんな強そうな魔物を使役できる人なんてここにはいません。

 というか、今の光景を見ていたら、どんな魔物でも近寄らないだろう。

 自殺志願者でない限り。


「そもそも魔物なんてけしかけてないんですよ。

 ここへ飛んできたのも偶然だし、

 ダルトンが一緒について来たのも成り行きです。

 あなたが思うような罠や作戦なんて、

 そもそも存在していないんですよ」

「見え透いた嘘を……」


 いや、全部本当のことなんですけどね。

 信じてもらえないだろうけど。


 雑談に乗ってくれそうなので、桧山のことを話題に上げればもう少し時間を稼げそう。

 なので、全て正直に話すことにした。


「嘘なんてついてないですよ。

 あなたのことは桧山から聞いています。

 彼によれば……」

「桧山と話した⁉ じゃぁ……組織のことも⁉」


 え? 組織?

 なんか話がまたややこしくなりそうな予感。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うわぁー。 やっぱり光景がめちゃくちゃ鮮やかに浮かび上がる。 細かすぎる書き込みってわけではなく、丁度いい文章量。 読み手にはっきりとイメージを持たせる。 たらこ様の中では、もしかした…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ