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116 拘束具

「ほんとうですの⁉」


 食い気味に尋ねるマイス。


「ああ、ほぼ間違いないと思う。

 ついでに副会長の正体も分かったぞ」

「えっ⁉」


 驚愕するマイス。

 俺が何に気づいたのか、まったく見当もついていないようだ。


 一から十まで説明していたら時間が足りない。

 ソフィアを先に見つけなければ。


「どこですの⁉ ソフィアはどこに⁉」

「落ち着いてくれ、説明している時間がない。

 俺の予想が当たっていたら――」


 おそらく、ソフィアはすでに学園の外。

 早く行かないと手遅れになるかもしれない。


 俺はマイスを連れて全力ダッシュで学校の外へ。

 あたりを見渡して人影を探す。


「マイス! どこかに誰かいないか⁉」

「いえ……近くには誰も……」


 マイスは辺りを見渡してから、困った顔で眉を寄せる。


 アレを何処どこに運んで行ったのか、なんとしてでも突き止めなければならない。

 おそらく……いや、間違いなく。

 あの中にソフィアがいる。


「あの……ソフィアはどこに?

 わたくしは何を探せばいいのでしょうか?」


 状況を飲み込めないでいるマイスは俺に明確な指示を求める。

 やはり話しておいた方がいいか?

 しかし時間が――


「おい、ウィルフレッド! そんなところで何してるんだ?」


 不意に誰かが話しかけてきた。

 この声は――


「ダルトン!」

「あ?」


 呼び捨てにされて癪に障ったのか、苛立った表情になるダルトン。

 こいつのご機嫌を取っている暇はない。


「さっきここを誰か通らなかったか⁉」

「え? なんだよ急に?」

「いいから早く言えよ!」

「わっ、分かったよ……」


 俺の剣幕に気圧されて、ダルトンは困惑気味に話し始める。


「さっき、変なババアとすれ違ったんだ。

 髪の毛をでっかくまとめて団子にしてた……」

「そいつじゃない! 箱だ箱!」

「え? 箱?」


 おそらくそのババアというのは学校の先生だろう。

 俺が探しているのは老婆ではなく、箱だ。


「俺が探しているのは男だ!

 大きな箱を運ぶ連中を見なかったか⁉」

「それならあっちだ――」


 困惑気味にある方向を指さすダルトン。

 彼の指さした方には見慣れない物があった。


 大きな船の上に気球のようなものが付いている。

 形状的には飛行船に形が似ているな。


 あれが魔道艇?

 だとしたら、ソフィアもあの中へ……。


 目を凝らしてみると、わずかな月明りに照らされて、何かを運ぶ男たちの姿が見えた。


 あれだ!

 間違いない!


「マイス! あそこだ!」

「どこですの?!」

「あいつらが運んでいる荷物の中だ!

 あの中にソフィアがいる!」

「え⁉」


 男たちが運んでいるのは大きな物体。

 マイスもそれに見覚えがある。


「あれって確か……」

「そうだ、手動販売機だよ。

 食堂に置いてあった」

「あの中に……ソフィアが?」


 そうとしか考えられない。

 このタイミングで急に学園の外へ運び出されるのは不自然だ。

 理由があるに決まっている。


 その理由とはもちろん、ソフィアの誘拐。


 彼女を連れ去るためだけに、あの箱は存在していたのだ。


「でも……あれはたしか……」

「ああ、冷気を外に漏らさないって言う、

 そういう建前で作られたんだよな。

 でも……冷気を逃がさないってことは、

 熱も逃がさないってことじゃないのか?」

「え? え?」


 混乱するマイス。


 ソフィアは最強クラスの能力者。

 彼女がその気になれば、周囲の物を全て焼失させることができる。


 そんな彼女を誘拐するには、特別な拘束具が必要になる。

 どんな高温にも耐えられる特別な檻が。


 あの手動販売機はソフィアを閉じ込めておくための道具だったのだ。


「あの箱を作らせたのは副会長だ。

 この日のために、わざわざ用意させたんだよ」

「でも、あの中には……」

「ああ、いたよな。中の人が」


 その中の人こそが――


「ここで立ち話してる暇はない。

 さっさとあいつらから手動販売機を取り返して、

 中にいるソフィアを解放するぞ」

「でも……本当ですの?」

「俺が信じられないのか?」


 彼女の瞳を見つめて言う。


 少しだけ不安そうな表情をしていたマイスだが、すぐに迷いを振り払う。


「信じますわ――あなたのことを」

「それでいい」


 俺はマイスを連れて手動販売機を運ぶ男たちの元へ。


「おい! さっきからなんなんだ!

 俺を無視するなよ!」


 なぜかついて来るダルトン。

 こいつにかまっている暇はない。


「おい! お前ら! 止まれ!」

「え?」


 俺の声に気づいた作業員が振り返る。

 手動販売機を魔道艇に運び入れるところだった。


「その中に人がいるんだ!」

「ひとぉ?」


 怪訝そうな顔をする男たち。


 手動販売機は鎖で縛られている。

 何か特殊な魔法が施してあるようで、鎖は紫色に光っていた。


 魔道艇は近くで見るとなかなか立派で、それなりに大きい。

 木でできた船体と巨大な細長い気嚢きのうの間に、いくつもの太いロープが渡されている。

 気嚢きのうは皮か布を貼り合わせて作ったもの。何かが刺されば穴が開いて、中の気体が漏れ出てしまいそうだ。

 こんなので空を飛ぶのかと思うとちょっと怖いな。


「今すぐにその荷物を下ろして、中身を確認させてくれ!」

「でも……これは……」

「あら、ようやくお出ましね。ウィルフレッド君」


 後ろから女性の声がする。

 振り返るとそこには――


「ああ……アンタが副会長だったんだな。

 エミリー。いや、コルド・クルーク」

「ふふふ……私の正体に気づいていたというわけか」


 目の前にいる美少女は、野太いおっさんの声でそう言った。

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