114 桧山の豚化と副会長の関連性
「なぁ……その話本当なのか?」
「ああ、本当だ。
この状況で嘘なんてついても意味ないだろ。
俺のことを疑ってるのか?」
怪訝そうな表情で首をかしげる豚《桧山》。
別にこいつを疑っているわけじゃない。
ただ……どうしても引っかかるのだ。
副会長はスキルの力によって生成した水の温度を調整できる。
つまり……氷や水蒸気も発生させられるのではないか?
桧山はできないと断言していたが……。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。
引っかかっているのは副会長が生成できる水の温度。
それは一定ではないということ。
自分の意思で冷たい水や暖かい水も出せるのだ。
つまり――
「なぁ、さっきからどうしたんだ?
難しい顔をして黙り込んで」
桧山が言う。
頼むから話しかけないでくれ。
ちょっと考えをまとめたいんだ。
「申し訳ありません、お豚さま。
少し静かにしてくださいませんの?」
「あ? 誰だよテメー」
「申し遅れました、わたくしはマイス・フィルド。
フィルド家の嫡子であり、電撃の使い手として――」
「あっ、アンタが!」
どうやら桧山はマイスを知らなかったらしい。
学校一の有名人だぞ、この人。
「なんでマイスを知らないんだよ?」
「いやぁ、俺が豚化した時はまだ、
そこまで強くなかったと思うんだ。
顔を見るのはこれが初めてかも」
「え? そうなのか?」
マイスに尋ねると彼女は困った顔で眉を寄せる。
「わたくし自身、自分がいつどれだけ力を付けたのか、
正確には把握していないのでお答えしかねるのですが。
ソフィアさんと模擬戦をするようになったのは確か、
昨年の頃だったと思いますわ」
「ふぅん……」
つまり、彼女の存在が全校生徒に知れ渡ったのは、それくらいの時期というわけか。
「そう言えば桧山。
お前はいつから豚になったんだよ?」
「あ? 確か去年だか一昨年だったかな」
随分とアバウトだな。
人生観が一変するようなできごとなんだから、いつ起こったのかちゃんと覚えてろよ。
「あっ、思い出した。
一年半前だな」
「…………」
マイスが有名になるちょっと前か。
「マイスはこの豚が誰なのか知ってる?」
「いえ……しゃべるお豚さま自体見るのが初めてで……」
「コイツの正体が生徒会長だって言ったら驚く?」
「え? このお豚さまが⁉」
驚愕するマイス。
そりゃ驚くよな。
「確か一昨年くらいに生徒会長がお隠れになって、
それ以降は副会長が実権を握ったと聞いていました。
今の生徒会の面々が着任したのも確かその少し後で……」
「行方不明になった会長ってどんな人だったか覚えてる?」
「いえ……わたくしはほとんど関わりがなかったので。
でも、いい話はあまり聞きませんでしたね。
傲慢で、独りよがりで、身勝手で、自己中心的な人物だと」
「なんだと⁉」
檻の中で桧山が怒鳴る。
この様子だと、マイスが聞いた評価は信ぴょう性が高そうだ。
「会長の横暴に耐えかねて、
次々と生徒会役員が辞していったと聞いています。
でも……今の副会長が任命されてからは、
入れ替わりもなくなったと」
「副会長が就任したのは?」
「ええっと……確か……」
「俺が豚化する少し前だ」
桧山が答えた。
「なるほどな……」
俺は桧山に視線を向けて、じっと彼を見つめる。
「なっ、なんだよ?」
「もしかすると……だけど。
副会長のせいでお前が豚化したのかもしれないぞ」
「え? マジかよ⁉」
まったく根拠はないが……なんとなく。
副会長の動きと、桧山の豚化は連動している気がする。
「副会長は最初からソフィアを狙っていたのかもな。
何かしらのスキルでお前を豚化して力を奪ったんだ。
そう考えるとしっくりくるだろ?」
「ううっ……マジかよ」
こいつが豚化した原因が副会長にあるとは限らないが、彼女が最初から一貫してソフィアを狙い、生徒会のメンツもそれ目的で集めたと考えると納得がいく。
奴らはなんでも言うことを聞く傀儡だった。
俺を殺せと命じられて素直に応じるくらいだからな。
彼女は少しずつ計画を練り、たまたま俺が来た日に計画を実行に移したのだ。
かねてから練っていたソフィア誘拐計画を。




