表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

エピローグ的な、何か

 本作をお読みいただき、ありがとうございました。今話をもって、本作を完結させていただきます。

 考えているストーリー量から考えると、だいたい1章の終わりと言ったところでしょうか。

 キリの良いところだと思うので、ここで締めさせていただき、他の作品を進めたく思います。


 最後となりますが、誤字・脱字、感想、評価などありましたら、よろしくお願い致します。

 リナ──いや、アンリに揉みくちゃにされたシオンの耳に、スマホの着信音が届いた。しかし、この着メロはどうだろうか?


 ──ダーハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!


 前触れもなく、空間を震わせる大笑いが、スマホから流れてきた。


「があ!?」

「!?」


 向い合わせで抱き締めたまま、目を点にして見つめ合う2人。その表情は呆気にとられていた。


 音源を確認したシオンは、スマホを取り出し画面に出ている通話ボタンの【拒否】をタップした。


「があ。シーちゃん、切って大丈夫なの??」

「いや、かなりふざけた着信だったから……いいんじゃねぇ?」


 ケロッと言うが、スマホ来ていた着信には『神さま』と出たいた。それを悪ふざけだと断じたシオンは、大物かもしれない。


 しかし、電話の主は"普通"ではない。


 ──ヒャッハアァァァァァァァァァ!!


 次に聞こえてきたのは、某世紀末に出てくるモヒカンのような叫び声だった。


「「…………」」


 2人して沈黙する。次は、リナが細い人差し指を当て、通話を『拒否』した。再び静かになる空間。


 2度あることは3度ある。ことわざの通りに、またも着信が入った。


 ──ククク……クハハ……クアッハハハハハハハハハ!!


 鬱陶しく感じた2人だが、放って置いたらまたかかってくると、本能的な部分で感じ取ったのか、嫌な顔をしていた。


 ふと視線が合い、どちらからともなく溜め息をついた。


 地面から腰を上げ中腰になり、スマホを土の上に置くと『通話』ボタンを押し、駆け足で10mほど離れた。2人が耳を塞ぐと同時に、スマホの画面からオーガに負けず劣らずの大男の姿が映し出された。


 プロジェクターを思い浮かべると、分かりやすいだろう。


『アイム マッスゥゥゥゥゥゥゥゥル!!』


 あまりの五月蝿さに、耳を塞いでいない感覚に陥った。耳には手の感触があるので、塞いでいるのは間違いない。


 アブドミナル&サイと呼ばれる、『腹筋と脚を強調するポーズ』をホログラムの向こう側で取っていた。ムキムキに膨れ上がった筋肉、黒というより焦げ茶色系の皮膚の色。ニカッと笑った口からは、嫌味なくらい白い歯が光っていた。


 その姿を直視するハメになった2人は、地面に膝をつけ吐き気を堪えていた。彼らは、ボディービルのポージングには興味などない。健全な青少年・少女で興味を持つのは、1部くらいではないだろうか?


 そんな2人の様子に気付かず、リラックスポーズを取り語り出した。


『よく、第1階層をクリアした』


 ニカッと笑い、片手の親指を立てた。


『このダンジョンが生まれ──早、1000年。お主たちほど、我を期待させた者はいない!』


 フロント ダブルバイセップスを決めながら誉め言葉を贈るが、その姿自体が"罰ゲーム"のように2人は感じていた。


『そんなお主たちに、我からのプレゼントを贈ろうぞ!!』


 何のプレゼントか分からないが、2人の心を代弁すると「そんなモノはいいから、ポージング(ソレ)を止めてくれ」といったところであろう。纏う雰囲気がそう語っている。


『ム~~ン!!』


 サイドチェストと呼ばれる『胸を横から見せるポーズ』で、褒美を贈っているようだ。興味のない2人には、悪夢でしかない。


 瞑っていた目を開き、「カ~~ッ」と気合いを入れた瞬間、地面に置かれたスマホは、オレンジ色の光の粒を周囲に浮かべていた。その粒は次第に、画面の中に吸い込まれていき、数秒後には消え去った。


『これでよし! 汝の使い魔の上限が、『2体』になったぞ!!』


 そう言われて、自分の使い魔がリナだけだったことを思い出した。他に使い魔を増やそうという気にならなかった事を、今更ながら疑問に思ったのだった。


 ゲーム感覚の抜けていない時だったら、女の使い魔を探して"ハーレム"を創ろうと考えていただろう。【D契約の儀式】が解放されて直ぐ、リナを仲間にしたがそれ以降、他に使い魔を作ろうという考えが無かったし、浮かばなかった。


「(まさか、無意識領域に働く"何か"があるのか?)」


 真っ先に考えたのは、そんな事だった。


『ハーハハハハハハハ!! もし、ハーレムを創るなら、もっと上の階層まで攻略するのだ!!』


 マッスルと名乗った筋肉男の言葉を聞き、リナの視線が強くなった気がしたシオンであった。元気よく、上の階層と言っているが、正確には"下の階層"になる。このダンジョンは、潜っていくタイプである。


 周囲の気持ちを考えず、自分勝手なことを言うマッスルに、不機嫌になったのは間違いないだろう。睨み付けるようなキツイ視線が、マッスルに向かっている。


『最下層を攻略した時、汝らの願いを1つ叶えてやろう』

「少なくないか?」


 間髪入れずに突っ込んだ。1人に1つか、チームで1つなのかでは、攻略難易度次第では釣り合わないのだ。


『案ずるでない!!』


 バック ダブルバイセップスを決めるマッスル。ムダに気合いが入っているのか、筋肉がピクピクと動いていた。


『1人1つ、何でも叶えよう。この世界内(・ ・ ・)においてはな。そこの娘の主たるお前は、願うなら"元の世界"に戻してやろう』


 その言葉を聞いた瞬間、シオンは隣にいるリナ (アンリ)と日本で再び過ごせると思ってしまった。


『ただ、そこの使い魔はダメだ』

「ど……どうしてだ!?」

『使い魔である汝は、薄々感じていたのではないか?』

「があ。分かっているの……」

「どういうことだ?」

『汝の使い魔は、向こうの世界では死んでいるからだ。もっとも、今ではなく……数年後の未来の話でだがな』


 数年後に亡くなる幼馴染が、今の自分と一緒にいることが明らかにおかしい。まるで、時間軸がズレているように感じたのであった。彼の表情が固くなり、噛み締めた唇と顔が、若干だが青白くなっている。


 腰に手を当てて胸を張り、身体の正面の筋肉を引き締め上げたマッスルは、シオンを見て含みある言葉を吐いた。


『世界は広く、ダンジョンは多い。故に、どのような願いにするか、時間をかけて考えるが良い』


 そう言うと、マッスルはアッサリと通話を終えた。取り残された2人の纏う空気は、重く澱んでいた。何処から話し合えばいいのか、分からない状態だったのである。


 先ほどまで、ムダに騒がしかった空間は、今では通夜の席のように静かになっていた。認めたくないが、マッスル自身がかなり濃いキャラである証拠だろう。


 この場にいても、することがないと判断したシオンは、地面に置いたスマホをホルダーに収め、いつの間にか現れていた扉をリナと共に潜った。その様子は無理矢理に、意識を切り替えようとしているかのようであった。


 次の階層に向かう階段を降りきると、目の前には5m四方の小部屋があり、正面には扉があった。小部屋と言うべきなのだろうか?


 その部屋の床の中央には、丸い、直径2mくらいのうっすら輝く"光の円"があった。


「これが……説明にあった『転移陣』ってヤツか?」

「があ。たぶん、そうだと思うの」


 現状のリナは、借りてきた猫のように、大人しかった。


 2人並んで円陣の中に入ると、スマホに「ピコン」と着信が入った。確認すると画面には新たに、1つのアプリが追加されていた。


【D転移陣】


 安直すぎるネーミングだが、簡単にどういったモノなのか、分かりやすいだろう。タップすると『マイルーム』と出ていたので、それを押した。


 今までにないくらい速度で、転移が開始された。



 光が収まったとき、半日ぶりの室内とはいえ、異常に懐かしく感じてしまった。話し合うこともせず、惰性のままで風呂と食事の準備を行った。


 全ての作業と食事を終え、2人揃ってベッドの上で並んで腰掛けていた。


「お前としては、どう考えているんだ?」


 詳しい部分を口に出さないが、それでも通じるだろうと思っているのだろう。


「があ。たぶん、私の運命を変えようにも『このダンジョンだけの願い』では、不可能だと思うの」


 その言葉にリナの方に振り向くシオン。驚いている顔を見て、1つ溜め息をついたリナの仕草は、何故か艷気があった。


「があ~。あの筋肉の言っていたことを、しっかりと聞いてなかったの? 『世界は広く、ダンジョンは多い。故に、どのような願いにするか、時間をかけて考えるが良い』と言っていたの。

 ハッキリ言って、私たちの攻略しているダンジョンは、世界中にあるダンジョンの1つ(・ ・)ってワケなの」

「変な言い方だと思っていたが、そう言われるとそう思うよな」

「があ。仕方がない部分かもしれないの。死ぬ前の私は、シーちゃんより4つも年上だったし、2年とはいえ、社会も多少は知っているから仕方ないかもしれないの」

「小学生のときから、大人っぽくなってきていたのに、今となっては完全に"上"ってか……」


 艷気を含んだ笑みを浮かべ、自身にもたれ掛かるリナを見つめる。片腕が、柔らかい幸せに包まれて、鼻の下が伸びそうなシオンであった。


「があ~。ちなみに、私の身体は死ぬ前と全く変わらないの。シーちゃんが夢中になっている"おっぱい(コレ)"も、高校を卒業する頃には手にしていたものなの」


 リナの肉体を一言で表すなら、『サキュバス』としか言えなかった。シオンは自身の腕を挟んだ上で強調されている、最終兵器から逃れる術を知らなかった。逃げる気はない、というべきか。


 流し目で見つめられ、両手で押し付けるように腕は挟まれた。幸せに包まれた腕を抜く気はなかった。


「たぶん……使い魔を増やしていかないと、攻略が不可能になっていくと思うんだが」

「があ。大丈夫なの。その娘たちが、シーちゃんと関係を持っても、私が1番なのは不動なの」

「(何処からくるんだ? その自信は?)」

「があ。シーちゃんのここが、元気なのが理由なの」

「はぅあぁ!?」


 シオンの元気な部分に優しく触れ、その感触に驚いている彼を押し倒す。迷いない動作に翻弄され、ベッドの上に仰向け状態になる。言葉を発することも出来ないまま、リナに主導権を握られる。もっとも、ベッドの上で主導権を握った試しは1度もない。


 小学校の卒業と同時に、別の場所で暮らすことになった2人は、ダンジョンでの再会を夜通しで語り合った。ちなみにシオンの枕は、目覚めたときには湿っており、いつも通りの夜になったようだ。


 そんな2人は気付かなかったが、机の上に放置されたスマホの画面には、彼らのステータスが表示されていた。



 ────────────────────

 シオン

 LV28


 筋力:16

 体力:14

 速さ:14

 魔力: 8


 SP:0➡12

 DP:8000


 スキル

 〈剣術〉LV7

 〈体術〉LV5

 〈罠解除〉LV4

 〈精力増強〉LV6

 〈忍耐力〉LV7

 〈連携〉LV2

 〈精神耐性〉LV2

 〈光魔法〉LV2


 パーティースキル

 〈使い魔との絆〉


 称号

【蹂躙される者】【現実を知り、絶望する者】


 ─────────────────────


 リナ 愛する鬼(ディアレス)

 LV15


 筋力: 96(+6)

 体力:116(+6)

 速さ: 76(+6)

 魔力: 0


 スキル

 〈剣術〉LV4

 〈体術〉LV7

 〈腕力強化〉LV5

 〈体力増加〉LV6

 〈精力増強〉LV8

 〈盾術〉LV3

 〈連携〉LV3


 称号

【蹂躙する者】【最凶の女】【恋を知り、愛を育む者】


 ─────────────────────

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ