朗報
―その頃、陸上自衛隊現地派遣部隊―
「入り口は死守しろ!感染者を近づけるな!!」
石倉は、高層ビルの入り口付近に停車していた車を盾にしながら、銃を撃っていた。
入り口の前には、軽装甲機動車がバリケードのように止め、機関銃を撃っていた。陸自隊員は防衛体制で戦っていた。
尾崎がやって来た。
「負傷者2名が無事戦線から離脱しました!!」
石倉は銃を撃っていたため、聞こえなかった。尾崎は怒鳴った。
「隊長!!負傷者2名が離脱しました!!」
石倉はやっと気づいた。「そうか!!分かった!!」
尾崎は報告を終えると、ビル内に入った。
「撃ち続けろ!!敵はまだ大勢居る!!」
石倉は1つ不満なことがあった。戦場と違って敵は銃を持っていない。だが、全員命知らずの連中で、噛まれれば、それでお終い。まったく、どっちがいいか分からん!!
感染者たちは、奇声を発しながら次々と突撃してきた。
「隊長!!機動車の機銃の弾丸が切れた!!」
永田が叫んだ。
「車内に予備弾倉のベルトがあるはずだ!!」
永田は車内に入った。ベルトを持って機銃を装填した。
感染者が1人機動車の車体を上がり、機銃の前に立った。
「くたばれ!!」
永田はゼロ距離で機銃を撃った。フルオート射撃で放出された弾丸は、感染者の腹部に次々と貫通した。腹が裂け、内臓が飛び出した。
感染者を1人殺したことを確認した永田は、感染者を次々と撃った。撃たれた感染者は、映画のように死体は残らなかった。全員、体が引き裂かれた。
「や、やめろおおお!」陸自の1人が感染者に首を噛まれた。感染者は、首の筋肉を食いちぎった。
陸自の傷口から血が噴出した。
石倉は即座に感染者の頭を撃ちぬいた。噛まれた隊員に、大勢の感染者が飛び掛った。
感染者たちが、陸自の服を引き裂き、隊員の腹部に指をめり込んだ。
そして、腹を引き裂いた。胃や腸が露出した。
「許せ!!」
石倉は、陸自の頭を撃った。
「隊長!!感染者の数が多すぎる!!このままじゃ弾薬が持たない!!」
石倉は周りを見た。感染者の数はすでに陸自を大きく上回っていた。
これまでか。石倉はそう実感した。
「ビルに入れ!!交戦中止だ!!」
陸自は次々とビル内に入った。
「永田!お前も入れ!!」
「時間を稼ぎます!!」
永田は機銃を撃ち続けた。石倉は、通信機が機動車内にあることを思い出した。
機動車まで走り、中に入った。
「あった!」
後部座席に通信機があった。
「永田!ビルに入るぞ!!」
永田は機銃から離れ、ビルに向かった。石倉も外に出ようと思った瞬間、感染者が一人襲ってきた。
石倉は頭を撃ちぬいた。
そして、一目散にビルに走った。
石倉が入り口に入ると同時に、ガラスの扉が閉まった。
感染者たちはガラスの扉に体当たりしたが、びくともしなかった。
「1階のガラスは全て強化ガラスでした」
尾崎が丁寧に言った。あれを見れば誰だってわかるわ。
「念のため、シャッターを閉めろ」
受付の制御版でシャッターを閉めた。
石倉は生き残った隊員の数を見た。自分を入れて9人か。少ないな。
「本部より通信です」
隊員の1人が通信機を持ってきた。
『こちら本部。現状報告を』
「生存者9人。弾薬不足。感染者の数は大勢。渋谷はもう駄目です」
『現在位置の報告を』
「分かりません。見知らぬビル内です」
『了解、こちらで位置を特定する』
しばらく沈黙が続いた。
『位置の特定に成功した。撤退用ヘリとニンジャを送る』
撤退用?つまり……
「つまり撤退できるんですか?」
『そうだ。真紅計画は第4段階に入る。現地隊員は全て撤退させろと命令だ』
丁度、ヘリコプターのプロペラ音が聞こえた。
『こちらニンジャ。何か合図を頼む』
うれしい通信だ。
「屋上に行く」
石倉がそう言って隊員たちを連れて行こうとした。
そのときだった。
窓が割れる音がした。
感染者たちがビル内に入り込んだ。
「急げ!屋上に出ろ!」
石倉が言う前に隊員は走っていた。
石倉は感染者を次々と撃ちぬいた。
感染者たちが続々と侵入してきた。
「来い!この俺が相手だ!」
石倉は撃ち続けた。が、弾が切れた。
「小銃がなくったって、拳銃があるぞ!」
ホルスターから拳銃を出そうとした。
その時、後頭部に激痛が走った。
そして、意識が途絶えた―――




