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何ももらえずに異世界に飛ばされたので何かやることないですか、なんてそんなぁ。  作者: 秋野PONO(ぽの)
第一章 それぞれの出会い

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第7話 大きな世界の形

この大陸は、東方に「古代大陸」、中央に「中央大陸」、西方に「魔大陸」といわれる3大陸を持つ。

「古代大陸」にはかつて「天の上の人 オリアルラ」という人種がいた。

古代大陸にかつて住んだオリアルラは、戦いに優れた種族だった。魔物が多く人の住む土地の少ない古代大陸で何千年も生き延びた人類のオリアルラ。伝説によると、古代のオリアルラ族は銀の髪、輝く瞳を持ち、四本の腕、3つの目を持ち、馬よりも速く草原を駆け抜け、丈夫な体躯、寿命も長かったという。


古代大陸は過酷な環境である。800年ほど昔、温暖な気候を求め、オリアルラは中央大陸に多くが移り住んだという。

「中央大陸」には先住者としてライビアラ(オリアルラの古代語で「真理を知り、生きる人」という意味らしい。)という種族が住んでいた。細かくは100種類以上の民族を持ち、髪、瞳の色もバラバラ、総じてオリアルラより圧倒的脆弱で寿命も半分の100年ほどしかないが、頭がよく手先の器用な民族が多く、建築から移動手段や生活用品まですべてがオリアルラより品質よく、その技術を学ぶことで折り合い良くオリアルラとライビリアは共存していた。


ライビリア達は長い寿命、戦いに恵まれた体躯のオリアルラたちを「天使」とあがめ、信仰の対象になる地域もあったほどだった。

彼らは大きな争いもなく、数百年ほど平和に暮らしていた。


しかし今から120年ほど昔、西方からの侵略者たちによってその平和は破られた。

西方からの侵入者たちは少しずつ中央大陸をむしばんでいった。西方は砂漠と凍土の同居する、およそ生きづらい土地であったので、以前より悪魔たちは中央大陸の豊かな国土を狙っていたのだ。中央大陸の人々は彼らを「エグ・リリラ」と呼んだ。悪魔と交わった者たち、という意味だそうだ。

黒曜石のような黒い髪に白い肌、瞳は血のように真っ赤な悪魔たちは怪しげな術を使い、中央大陸の西、随所にひそやかに移住し始めて、気づいたときにはかなりの数になっていた。

徐々に小競り合いが激化し、今から数十年ほど前まで長く戦争状態であったが、東方の民族の活躍もあり、また西方の魔の大陸にもいくつかの国家が興ったこともあり、ここ十数年は休戦、小康状態であるという。


…というのがエルフィールから聞いた話をまとめたところであった。

「なるほどぉ。バルさんを見て魔の民とかなんとか言ってたのはそういうことなんですね。」

「うむ。そうなんです。瞳は器具を使って隠しているようですが、あそこまで特徴が出ていると髪を隠すのは難しいでしょうしね。純粋なエグ・リリラ族の真っ黒な髪の毛は非常に染まりづらいんだそうです。このあたり以外では非常に糾弾が激しいから東方では染めたり帽子などで隠すものが多いですね。」


「私も髪は黒いわ。」

「あなたのその髪と肌の色、容貌は全く違いますよ。彼らの肌は色素を抜いたように白く、体躯、手足が大きく、顔は鼻筋が通っていて目が落ちくぼんでるしょう。あの御仁は典型的なエグ・リリラ人を表していてわかりやすい。そんなことより、ここからが重要です。」


エルフィールは苦笑して説明したが、真面目な顔に戻って人差し指を立てる。


「エグ・リリラの民は価値観が我々とは違います。性に奔放で家や婚姻の概念が薄く、気に入ればだれとでも交わります。エグ・リリラの移住者の多い地域では風紀の乱れが深刻です。中央大陸に住む多数種族のライビリアとの間にも交わりはありますが子供は非常にできにくく、できた子供のほとんどに、このような言い方をするのは好みませんが・・・、精神異常や薄弱が見られるため、悪魔の血と言われています。」

悠は驚いてエルフィールを見る。

「なので、知らずに数日とはいえ旅をされていたあなたを大変心配しました。ご安全だったということでこの度は杞憂に終わりましたので心から安心しているのですが、これからも安全とは言えないので重々にお気をつけください。」

「心配していただいてありがとうございます。よくわかって助かりました。」

悠は笑みを浮かべてエルフィールにお礼を言った。

講義を終えたあと、メルセデスと悠は焚火の火消しと次の日の食事の携帯食の作成に取り掛かるため、と座を辞した。


ーなんだか、あのバリュバルは危ないやつってことはわかったわ。わたくしもあなたを守ることを考えなきゃ。

メルセデスはまるで悠の保護者のような真剣な顔で悠に前足をかける。悠は苦笑してその頭をかるくなでた。

ーそう?一方的に全部ほんとだと信じていいものかな。

食材を整理しながら悠は思念でメルセデスと会話する。

ー第一に、天の上の人オリアルラ、だっけな、その民族のことをよく言いすぎだわ。「善良な性質を持つオリアルラはライビリアともうまく共存していた。」って言った。そんな種族や民族全体を「善良」なんて普通は評さない。人間なんて善良なものもいれば悪いのもいるし。言い切ったのは客観的な説明じゃなくて、かれのただの主観だよね。あの説明の中にはそういう部分が随所にあった。

あと。

ー隣にいたリィンさんの表情をみた?

ーいいえ。

ーなんか、なんか言いたげだった。

悠は満天の星空を見上げてため息をつく。


ー大体、この世のすべての歴史が人間の歴史である以上、さまざまな見方があるわ。事象が一つでも人間の数だけ民族とか部族の数だけ視方があるのが普通でしょ。

最も

光と闇、闇とされた方の見方から見れば闇の方が本筋かもしれないけど。

3つの民族、事情がよく呑み込めない以上、いづれかに肩入れするのは避けるべきだとは思うが、一方的な見方に、予想せずして悪意に触れてしまったような気がして、心が落ち着かない悠だった。

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