第3話 バリュバルの事情
魔の森で、お供の少年とはぐれたバリュバルは目の前の光景に少々戸惑っていた。
連れとはぐれたのはまぁいい。この際置いておいても。問題はこの奇妙な人間だ。
訳あって魔の森への旅の途中だったバリュバルは奇妙な人間に出会ってしまったこの事態をどんな運命のいたずらなのかとため息とともに振り返っていた。
※※
あと2、3日ほど歩けば途中の村に着くだろう、と目論んでいたバリュバルは、小さな水辺に落ち着くと、今夜は野宿することに決めた。
荷物を下ろし小さいテントを設営し、魔よけの香を四方に焚く。
一息ついて携帯食を取り出したところで、ごく小さな煙の香を嗅いだ。自分の炊いているような魔よけ香ではない。
森の中で火を焚くことはあまり良いことではない。たいていの旅人は携帯食を持っているため、香以外の火種を起こすことはあまりしない。
そういえば、このあたりはクリプテッドベアの生息領域だったな。
クリプテッドベアは魔物には珍しく火をおこし獲物を焼いて食する森の知恵ある獣だ。
とある地方ではクリプテッドベアの炎で森や山が火事になることが多々あり、駆除に報奨金がかけられている害獣だ。ついでに毛皮はなかなか高く売れる。
狩っておくか。
バリュバルは身軽な旅だったので少々の路銀欲しさに立ち上がって長剣を抱えると気配を消しながら森の奥、匂いのする方向へ忍びよった。獣なみに気配を消せるのが彼の特技だ。
果たして、クリプテッドベアを発見し、ぱちぱちと爆ぜている焚火のそばに3,4匹ほどのクリプテッドベアを発見した。
手前は木々に遮られてよく見えないが、独特のきぃと木の軋むような声がするので間違いなさそうだ。
そっと忍び寄り、木々の裏から、一番大きそうな茶色の塊に長剣を振りかざし、切りつけ……。
切りかけ……。
すんでのところで切っ先を横に修正し近くの岩に剣をたたきつけていた。
「……でわぇあぁ?!」
叫んだ茶色い塊はクリプテッドベアではなかった。
突然響いた大音響の音と殺気の気配に、そいつ以外は蜘蛛の子を散らすように大慌てで四方に逃げ去った。
「っ!なんだ??!人間?」
なんでクリプテッドベアと一緒に焚火を囲んでるんだ???!!
訳が分からないというようにバリュバルは叫んだ。
「うわわ。なんなんですか、突然!!あいた!危ないうわわわ」
そいつに向かって剣を構えると慌てたように叫ばれる。
剣を構えたまま、それと向き合い、殺気を保ったまましばらく向かいあう。
時が止まったような沈黙が流れてた。よく見ると女性のようだった。
「……人間?魔物か?」
「失礼な!見てわかるでしょ!人間ですよ!!あなたこそ突然なんなんですか。あの子たち逃げちゃったし、大切なご飯がぁ。鍋こぼしちゃったあぁぁ」
あまりに驚いて火にくべていた鍋を取り落としたのだ。
いっときの間、バリュバルは自分が石像になってしまったかのように固まった。
「……それは悪かった。しかしなんだお前。なんでこんなところに。ここは魔の森だぞ。一人で魔物に囲まれて鍋をしている人間がいるとは思わないだろ普通。」
「そっちから見るとまぁ確かにそうなのかもしれないんですが、こっちにはこっちで言い分がですね。てかこれには深い事情がですね」
「……」
「……」
※※
悠、ユーと名乗った女の話はこうだった。彼女はモリアナ諸島からの留学生で、つい1週間ほど前にこの大陸についたばかりだそうである。
王都の学園に行くために乗り合い場所を頼んだのだが、魔の森のなかで、途中魔物に襲われて一人で放り出されてしまったのである。
話を聞きながら、まるでバリュバルは胡散くさいものを見るような目で悠を見つめた。
「で。話は理解したが、そのなりは」
悠は茶色のぼろ布をあまたからすっぽりかぶって胸の前で止めている。つまりかぶっている。
「馬車のひざ掛けですよ」
何を当然のことを、ぐらいの調子で悠は主張した。荷物も放り出してしまい、それしか手に持ってなかったと。
「ついでに川岸でこの鍋を拾えてラッキーでした。この子達火が起こせるみたいだし」
クリプテッドベアがその長い爪をこすると火が出現したのはさすがに悠も驚いたが、その火の上に意思を組んで鍋置き場をつくるのは本当に大変だった。
「理解はした。したが、よく考えてみてくれ。あまりにも紛らわしい。それでクリプテッドベアと並んでみろ、闇夜に紛れたらどう見てもクリプテッドベアの親分だと……」
「寒かったので」
悠は冷めた表情を隠しもせず言った。
「もう少しで人殺しになるところだった」
そのつぶやきは心からの安堵だった。人間とわかってみれば気安いが、ここは魔の森なのだ。
怪異でないとは限らない。用心深くバリュバルは悠から人ひとり分程度距離をとって腰を下ろした。
先ほどは気づかなかったが、隣に小さな猫がいた。用心深く猫に目をやると、彼女(彼?)はちらと目を向け、こちらになど興味ないというように悠の方に目線を戻しバリュバルとは反対側の悠の左隣に移動した。
※※
猫と悠の話は2日ほど前にさかのぼる。
気づけば悠は波止場に倒れていた。ちょうど大型の船の荷ほどきの最中で荷物の影で誰にも気づかれなかったということであるようだった。
「う。うーん」
まぶしい光が目に焼き付くように輝き、悠は身じろぎしながら体を起こした。ぼんやりする頭を振りながらからだを起こしたところで誰かに声をかけられた。
「あれ?どうしたんですか!?」
人の好さそうな丸眼鏡の男が悠を心配そうに見ていた。
「あれ。ここはどこ。私……。!!!あああああ!結局何ももらえなかった?!」
がば、と身を起こすと男は気の毒そうにこちらを見る。
「何も?あ、先日来てた配給のパンです……?次は1週間後ですね。でもあなた物乞いには見えない服装ですよねぇ」
男は不思議そうに、また多少疑わしそうに悠を見る。悠は慌てて取り繕った。
「あ……いえいえ。こっちの話です。えっと」
どうしよう。ここどこ?私は誰?港みたいだけど、なんでこんなところに倒れてたの。
聞きたいことはたくさんあるのだが言葉が出てこない。
そのとき、悠のそばの積み荷の影から「にゃー。」と小さな声が聞こえた。
1匹の猫が紙を加えて悠にすい、と頭を摺り寄せてきた。
「あれ。猫ちゃん。どこかで。」
長い夢を見ていたようで頭がはっきりしない。ぼんやりする悠を後目にぐいぐいとまるで読めと言わんばかりに口にくわえた紙を悠に押し付け、悠が紙をとると、するっと荷物の影に入り込んだ。よく見るとリュックが転がっていた。
「あれ。それ、推薦状じゃないです。あ!!!!!先日来た留学生さん達のお仲間!!??ダメでしょそんなとこで寝てたら!王都行きの場所が昨日出ちゃったでしょ??もしかして乗り遅れたの……?」
「えっ。あっ。えーっと」悠は紙をまじまじと見る。確かに何やら文字が記載されている。
が、読めない。ただ、ちゃっかり話に乗ることにした。
「そ。そうです。のんびりしてたら乗り遅れちゃって・・あはは。」空気を読んで調子よく話を合わせるのは非常に大得意な悠であった。
「やっぱり。そりゃ大変だ!今日次の便でるから、ちょっと寄り道するやつだけど、最終的に王都までいくから!そこの角曲がったところだよ!わかるよね!もうすぐ定時刻だから急いで!」
「ぴゃ。まじすか」
悠は急いで立ち上がった。自分のものらしい?リュックをかつぐと指さされた方に走りだす。
不思議なことに、猫はそのままついてきた。
「ありゃりゃ。よくなついた猫だな。従魔師か」
男は去っていく悠を見ながらひとりごとを言った。
数刻後、悠は程よく揺れる馬車の中にいた。どうしようという思いはあるものの、とにかく王都?と言われるところに行こう。そう思ったのだ。
猫は、ついてきた。
場所の中には人の好さそうな老婦人が一人、少女と猫一匹を物珍しそうに眺めてきた。
「あらあらかわいいお二人さんのご同乗者さん。猫さんよくなついてるわね。飛び出ちゃったりしない籠に入れなくて平気?」
老婦人は気前良さそうに自分の持つ深型の籠バックをちらと見せながらニコニコと尋ねてくる。
どう答えたものかと悠が思案していると。
――必要ないです。従魔師ですから!って言って!!さあ。
頭の中にぐわんぐわんと反響するような声が響いた。
慌てて当たりを見回すが揺れる馬車の中には老婦人以外いない。
その代わり、猫がにゃ、と声を上げて悠の左手に前足を載せていた。
――え。今の、この猫?
――そうよ!!!おマヌケさん!!!!!私よ!ついてきてあげたの!ありがたくお思いなさいな!
猫の言うことはこうだった。
あなたがあまりにも間抜けにだったので、かわいそうになって私がついてきてあげたの!!!
実際のところ、猫はこのように簡潔に結論は言わず、グダグダ考えてて結局何も能力をもらえないという前代未聞の事態だとか、まぬけそうだったから私がいないとのたれ死に、だのとかほんとは助けてなんてもらわなくても自分で抜け出せたのに、だの鼻息荒く説明ながらのもっとずっと長い文章だったのだが、悠はあまりの展開に全部聞き流した。
――え……そ……そんな。夢じゃなかったんだ。いいことしたのに報いがこれなの。おまけに助けた 猫に馬鹿にされるわ何ももらえないまま異世界に飛ばされるなんて。
――そうでしょ。なんだかあんまりかわいそうだったので主様に頼んでついてきてあげたの。感謝してよね。
――そしてこんな高飛車な同行者にツンツンされるかわいそうな私。。。
もはや悠はため息しかでない。
――あ、そうそう。かかさまからよ。あんまりかわいそうだから、一応おまけで能力つけといたって。適当なの選んだから、しっかり扱いなさいって。
え?キラキラした目で悠は猫を見た。
ちょっと身体強くしといたげる。
チョトカラダツヨクシタゲル
そんなのはいらない・・。体はもともと強いし。
そのなんともよくわからない言葉にこんどこそ悠はため息もでないほど、消沈していた。
――と、これって会話が成立しているの。声出してないけど。
――そうよ。あなたと私の間では心で会話ができるの。魂がつながってるからね。ちなみに私の名前はメルセデス、5歳の女の子よ。よろしくね。
ちゃっかり自分の名前を名乗って猫、メルセデスは器用にウインクした。
――これからどうしよう。
実際のところ、これらの頭の中での会話は一瞬だった。
悠は急いで老婦人に言う。
「ご心配には及びません。私は従魔師?てやつで。あ、おじいいちゃんがそうだっただけで私は素質をちょっと受け継いだけでこの子しか扱えないんですけど。なので、賢い子なので大丈夫です。お気遣いありがとうございます!」
そつなく悠は答える。
老婦人は目も丸くして悠と猫を交互に見えていたがやがて納得したと見えて「そうなのぉ。賢い猫ちゃんなのね。」と言った。
老人と悠はしばらく馬車から見える景色について何でもない話をしていたが、やがてそれも飽きてきてゆったりと思い思いに過ごした。
悠も、人と話すことで少し落ち着いたためしばらくじっと窓から外を見ていた。
ふいにそれはやってきた。
ぐーっと木がきしむような音を立て、馬車は何か激しくぶつかった。
窓際にいた悠は窓ガラスの割れる音ともとに自分の身体が外に投げ出されたことに、一瞬ののちに気づいた。
「きゃー。大丈夫?!」老婦人の悲鳴が聞こえる。
「コカトリスだ!」
コカトリスと言われた馬車にぶつかったもの、は大きなダチョウのような(と鳥の知識の薄い悠は思った)生き物で、転がり出た悠を大きな咆哮を上げながら追いかけてきた。なぜか初見から怒りマックスのように見える。
「ぎゃー!」悠は必死になって逃げた。猫が「ふー!」と小さな体で精いっぱい威嚇しながら、悠と一緒に逃げていた。
そう、気づけば馬車から遠ざかり街道を外れ森の中へと入ってしまっていた。
「ぎゃー。なんでこっちくんのよぅ。最悪さいあくー!」
――おおお、落ち着いて!今なんか呼ぶから!!
逃げながら猫は「にゃあにゃあ」と悠の周りをかけ周りながらと精いっぱい大きな声で鳴いた。
なおも逃げる一人と1匹。ほどなく、茂みの中からしゃっ、と何かが飛び出てきた。
悠の猫より2回りほども大きそうな茶色い生き物である。それも1匹や二匹では無い。数える限り10匹以上悠の前で大きな鳥を、威嚇している。
鳥は、しばらく悠の前でドカドカと前足を踏み鳴らしていたが、その大群に、体勢が悪いと見たか、じりじりと足踏みを緩やかにし、しばらくこちらを見つめ、最後には森の中に消えていった。
――彼らは森の狩人、クリプテッドベアよ。あなたたち、助けてくれてありがとう。
悠にはにゃおん、としか聞こえなかったが、礼を言ったのは獣には伝わったらしい。
クリプテッドベアと言われた生き物、悠の見立てではベアというよりは、むしろネコ科でなくまん丸い耳と茶色い体躯はイタチかな、ぐらいのかわいらしさにしか見えなかったがそれらは、一斉に「ふぃー。」と息を吐くような声で鳴いてご挨拶してきた。
※※
「てことで、荷物がなくなっちゃったので、ついでに推薦状も荷物の中なので、途中の村か、ノワティエの領主様のところにいくのです」
聴き終えるとバリュバルは納得したというようにゆっくり頷いた。
「ふむ。荷物か。馬車が村や領主の屋敷を経由しているといいがな」
「それなんですけど。領主様のところには寄るって確か言ってたんですよ。馬車?経由地?なんかで必要だからって」
「そうなのか?そうすると届け物でもあったか。村はあと2日ほどの距離だから迷わなければ明後日には着くだろうな」
半分こぼしてしまった鍋の無事だった部分をかき集めて、再び火にかけ、二人は火にあたりながらぽつぽつと会話する。
「それにしても留学生か。運が悪かったな。今、王都行きは便が少ないからな」
「そうなんです?」
「ああ、王の代替わりで王都は大混乱、大混雑だよ。治安的にも物騒なので小さな村や港からは向かうものが少なくて便を控えている。来年には逆に増えると思うが。」
バリュバルは減ってしまった鍋の中身を多少不憫に思ったのだろう、野営場所に戻ってしばらくして帰ってきたときは行李をもって来て、中から筒のような白い棒り出した。そのまま小さなナイフで器用に先端をなんどか削り取り、「いいか?」と許可を取って鍋の中に放り込む。
「クズの実を練った餅だ。すぐ煮える」
どうも、とつぶやいて悠は皿がないことに気づく。
バリュバルは行李の中から陶器の小さな皿を二つ取り出して顎を鍋の方に向ける。
「それにしても、荷物も武器も無いのはさすがに気の毒だな。そこそこ魔物もいるのでよく無傷でいられたな。よく見りゃ魔物除けの香もない」
「あ。この子がいるので。ね、メルセデス、ご挨拶」
悠は自分の後ろに伏せているメルセデスの頭をなでた。猫は顔をバリュバルの方に向けるといかにもめんどくさそうに「にゃ。」と一つ鳴いた。
実際のところ、ギリギリバリュバルからは手が届かない位置、かつ何かあれば一瞬でとびかかれるように顔と前足を向けて寝転んでいるのは内緒だった。
なるほど従魔師か。とバリュバルつぶやいて手を伸ばそうとするが、とたんにメルセデスに、「ふー。」と威嚇されて苦笑して手を引っ込めた。
「あなたはなぜこの森に?」
こんどはバリュバルは打ち明け話をする番だった。
「俺は旅の途中だ。一族の生きた証を集めて、故郷に返してやるために。」
言って行李から一揃いのペンダントを取り出した。銀色のワイヤーのような紐に赤いルビーのような石がついている。大小さまざま4つほどの美しいペンダントだった。
悠はへぇ、と興味深そうにその石を見る。
「綺麗ですね。」
バリュバルの方と言えばその反応にいささか驚きを隠せないでいた。
「知らないのか。精霊の民、「エグ・リリラの魂」だ。
「へ。へえ、ごめんなさい。ほんとに疎くて。
3日前にこの世界に来た悠にはなかなかに難解な会話だった。
バリュバルは、なるほど、西方の島々には我々の知らない独自の文化があるという。知らないのも無理はないか。
と勝手に解釈する。だが、説明は面倒だった。
「ま、まぁ。その一族にとって大切なものだ。血族ごとに色が違う。一族のものにしか見分けはつかないがね。故郷にこれを連れ帰ると約束したので集めながら旅をしている。ノワティエ公の屋敷にはさまざまな珍品、奇品が集まるというが、そちらにも一つ保管されていることが分かったので譲り受けようと向かってる最中だった」
そんなことを話ながら鍋の中身を空にすると、焚き火に薪代わりの小枝をくべる。いつの間にかクリプテッドベアたちが周りでキィキィと鳴きながらくつろいでいるが、2人とも気にする様子はない。
「さて。」バリュバルは膝の砂をぽんと払い、立ち上がる。「あと2日ほどで村に着く。行き先は同じだ。できれば、共にいかないか?」
「喜んで!」
2人はにっこり握手する。
「これを。」バリュバルは長剣を柄を向けて悠に渡す。このままではあまりに心もとない。
「こっちでもいいんだが、長年使っていて、サビがあり扱いずらい」
苦笑してバリュバルは自分の腰に差したダガーに手をかける。
「じゃ、この先に野営している。明日の朝ここで落ち合おう」
「え、え。も、戻っちゃうんです?」悠はとたん心細くなった気持ちがして言った。
ぱち、とバリュバルは一度瞬きする。
「ん?うん」
バリュバルは軽く伸びをする。
「こちらに、来るか?」ゆっくりとした言葉で言う。
不安そうな悠の顔を見ながら手を伸ばし、指先がさらと髪を撫でる。そのまま、左手を悠の頬を当て顔をすっと近づけ·……。
ゴッ!と音がしてバリュバルはのけぞった。
悠の、渾身の蹴りが腹にクリーンヒットしていた。
悠は言葉も出ずにハァハァと息を荒げている。他人に、蹴りを食らわしたのは人生で初めてのことだった。
「いたい」
「どうぞあちらにおかえりくださいっ!」
しばらく後ろを向いて腹を押さえていたバリュバルが恨めしそうに振り向いた。
「今の、そういう流れじゃないかな……」
「全然全く違います」
「惚れてくれたから一緒に寝たいのかと」
「違います全然。惚れる要素も無いので」
バリュバルは戻っていった。がっかり、とその後ろ姿に書いてあった。




