表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何ももらえずに異世界に飛ばされたので何かやることないですか、なんてそんなぁ。  作者: 秋野PONO(ぽの)
第二章 魔物の森の白亜のお屋敷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/45

第13話 早朝の論争-2

「はぁ。新しい王か。波乱の幕開けだな。」


「なぁるほど。ここメール国がエグ•リリラと通じてるとするとメディナの立場はなかなか難しくなってくるね。ちょうど首の後ろを押さえられた形だし、メディナの首都も遠くない。チェックメイト、の状態に近い。それか万一メールとピュリ•ドルクと通じれば、西方からここまで一帯全てがエグ•リリラに通じる国になって詰む感じ。」


「その通りです。新王もピュリ•ドルクへ経済協定、援助、婚姻などさまざまな手段で働きかけを始めています。ピュリドルクを上手く成長させ、メールの国力を削ぐことで3国のバランスが崩れないようにするのが当面の課題かと。ミラザ公は上手くやり遂げるでしょう。平和の申し子と言われた方ですので。それのみならず周辺の諸国にも働きかけて援助之手を伸ばしているという噂もあります。」


エルフィールは自分のことであるように嬉しそうで自慢げだった。

「バランスか、確かにこれだけの大きな国が3つ以上あれば均衡させる平和もありうるね。新興国が安定していれば。ただ、」

うーんと悠は唸る。

「バランスって、いずれ崩れるものなんだよね。3者以上の均衡って、見ようによってはすごく危ういもの。平和の申し子ね。バランスが崩れたときの想定や長期的展望まであるものかしらん。」

悠はエルフィールの発言に「意識的に」「わざと」冷水を浴びせた。


喧嘩を売られたような顔をしたエルフィールは口をへの字にして反射的に何か言おうとして、一度踏みとどまった。ただ、その通りであるかもしれないとも思った。

新王の立帝に向けて、王都は興奮が高まると同時にピリピリとした緊張感が高まっているようにも思える。言葉に表しづらいその緊張感が何かの危機を読み取っているものと言えなくもない。

「ふぅ。そうかもしれません。均衡というものはできた時点から崩壊に向かって足踏みしているというわけですが。興味深い視点です。しかし今それ以上の策がないのも事実と私は思うわけです。我々は恒久的な国も、戦争の無い世界も、まだ1つとして経験してないのだから。」

エルフィールは悠の顔を見る。ホッとしたような顔をされているのは気のせいだろうか。


ふと、エルフィールはソワソワした気持ちになる。

「…もしかして今、私は試されたのかな。」


「ごめんなさい。出会った最初が最初だったので。忌憚なく話せる相手なのか、大事じゃない?」

「これはしたり。…ぐうの音もでない。」

エルフィールは破顔した。照れた気持ちを隠すことができない。


「それで僕は合格?」

悠はにこりと笑ったが何も答えなかった。


その様子を向かいの椅子で見ていたバリュバル、いつのまにか机に両手もぷらんと投げ出して突っ伏していて頬にレースのテーブルクロス跡がクッキリついている。

「俺には試験無いのかな?答えてやってもいいぞ。」

顔だけ悠の方に向ける。

2人の世界に入ってしまって空気のようになりつつあるのが嫌だったようだ。


「あはは。バルさんは「そんなこと言ったらダメ!」ってしたら聞いてくれそうだから大丈夫」

「もちろん、聞こう、友よ。」

その声が想像以上に優しく響いた気がして兄に叱られる妹のような気になった悠と、少し照れくさくなったバリュバルは、席を立ってお茶のおかわりを注ぎに厨房に消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ