第18話 美味しい記憶
「大丈夫ですかお嬢様」
パパにべったりくっついてる私にミレイユが聞いてきた。
「うん。大丈夫」
馬に揺られながら私は答える。
今、私たちは精霊の森に来てる。
精霊王様に会うために。
最初に来たときは物凄く綺麗で嬉しかったのに。
今は全然嬉しくない。
森の中は綺麗な光がフヨフヨと浮いていて。
いっぱい木が生えている。
たった一日で考えが子供っぽくなった気がして私は泣きそうになる。
なんで急に?
精霊王様に頼めば私の記憶が無くなるのも止まるかな?
ソワソワしながらパパにくっついて、私は馬に揺られていた。
「そろそろ精霊王様の領域につく。いいかいレティ。
失礼のないようにね?」
パパが言うので私はコクリと頷いた。
木がいっぱい並んでいた場所から、木が少ない場所にでる。
太陽の光が降り注いでてとっても綺麗な場所。
まあるい広場みたいな場所の中央に。
銀色の毛に青い瞳のとっても綺麗な虎さんが立っていた。
うちの領土の守り神。
氷の精霊王様。
パパが私をぎゅっとする。
「精霊王様の前で言葉を発してはだめだよ?」
ここに来る前にパパが言っていた。
だから私は黙ってる。
精霊王様は私を見ると
『成程。なかなか面白い魂だ』
精霊王様の言葉とともに――何かが私の中に入ってくるのだった
■□■
ふよふよふよふよ。
私は浮いていた。
空に。
身体がふわふわと変な感じ。
真っ白い空間に私は一人でぽつん。
パパは?ミレイユは?セクターさんは?神官長様は?
怖くなってキョロキョロすれば
『大分一体化してしまっているな』
知らない人が立っていた。
銀髪のながーい髪。
綺麗な青い目。
どこかでみたことある。
あ、目が虎さんと同じなんだ。
「一体化?」
私が聞けば男の人は頷いて
『以前の記憶を呼び覚ます。
何でもいい。
何か前の世界のモノを思い出してみるがいい』
「前の世界?」
『好きな遊びや食べ物。
何か一つくらいあるだろう?』
男の人に聞かれて私は考える
「えーっと。
木のぼりが好きだよ!ミレイユにはよく怒られるけど。
あとりんごも大好き」
私の言葉に男の人がため息をついた。
『今のお前の話をしてどうする。
前の世界の話だ』
「あ、そっか。えーっと。えーっと」
「何が好きだったろう。
よく大好きでパパに作ってもらっていた物があったと思う。
こうーーちゅるちゅるするやつ」
『ちゅるちゅる?』
「うん。ながーい麺をこうやってちゅるちゅるって食べるの。
あったかくてあつあつのスープの中に入ってて」
『ふむ。パスタか何かか』
「違うよ!
くるくるが浮いてて、たまごとコーンともやしが一杯入ってて……。
お肉も入ってた!」
『味を想像してみろ』
味。味。味。
考えて私は思い出す。
そう味噌だ。
味噌味。
口いっぱいににんにくのきいた味噌スープの味が広がってちょっと幸せになる。
濃厚な味噌とパパ秘伝のスープ。
パパが作った味噌ラーメンは美味しかった。
うちのお店の一番の名物だった。
よくお店の手伝いをしていたけれど注文で味噌ラーメンと餃子のセットが売れてた気がする。
昼間からあんなにんにくたっぷりでもいいのだろうか、と私の方が心配になったほど。
ああ、そう言えばこっちの世界に来てから食べてないな。
味噌ラーメンは無理にしても味噌くらいは食べたいな。
なんだか幸せな気分になりながら私が目をあければ……
何故か精霊王様がラーメンを虎の姿で食べている。
え、何それずるい。
私は思わず突っ込むのだった。








