灯台下暗しすぎる女
はぁ、やっぱりこの大学じゃないのかな。
でも、ならあの大学の広報CMは何なの? 絶対に彼の曲だと思ったのに。
何でこんなに調べても一向に手がかり一つ見つからないの? さすがにおかしくない?学内の公募で選ばれていること自体が嘘なんてことはさすがにないよね。絶対にない。あってはいけない。
いや、もしかして、そもそも彼(男性)ではなく彼女(女性)とか? でも、あの頃のアイコンは男の人だった。あぁ、もう本当に何もかもわからない。
だって、この講義を一緒に受けている可能性だってないことはないのよね? そうならば一刻も早く出てきて欲しい。切実なお願い。いくら大学に3万人も人がいるとは言え、あれだけの才能。すぐに見つかってもおかしくないはずなのに。本当にいくら探しても欠片ですら情報が見つからない。どういうこと?
本来ならこんな授業だって受けている場合じゃないんだけど、大学に入ったからにはやっぱり単位は取らないといけない気はするし、何か手がかりに使がる可能性もなくはないだろうし。
「はぁ.......」
しかも何? すぐ後ろでため息? いや、ため息を吐きたいのはこっちよ。これでは本当に何の為に大学に入ったのかがわからない。
って、また......あなた?
聞こえてきた溜め息に、つい無意識に後ろを軽く振り返ってしまったけれども。視界に飛び込んできたのはとりあえず知っている顔。
と言うか、何でそんなにげんなりとしてるいるの? そう言えば初めて会った時も何かネガティブで変なことを言っていた気が。
本当に何でこんな風にこの人と頻繁に遭遇してしまうのかはわからないけれど、やっぱりちょっと思ってしまう。暗いと。今日は特に暗い......。
まぁ、少なくてもこの人ではないことは確かでしょうね......。
言っては悪いけれども、この人からあんなにいい曲が生まれる想像が全くできない。
でも、今日はいつも隣にいるうるさい人はいない? だから益々暗く見えるのかも。まぁ、私としてはいない方が普通にありがたいんだけれどね。
だって、私のファンみたいだけれど、本人の前で愛華ちゃん、愛華ちゃんと、うるさすぎるんだもん。本当に冗談抜きで。
おかげで初めはもうバレてしまったの!?と焦りに焦ってしまった記憶がある。その後も本人を目の前にして愛華ちゃん、愛華ちゃんとうるさすぎて、分かった上で私で遊んでいるのかと何度も思ったから。
まぁ、蓋を開ければやっぱりバレてはいないみたいだから良かったけれども。これがいわゆる灯台下暗しというもの? でも確かに、普通は目の前にアイドルがいるなんて思わないか。
「はぁ......」
でも、本当にどこにいるのよ。大学側も個人情報だからいくらアイドルでも言えません? でもそういう回答が返ってくるってことはやっぱりこの大学にいるのよね。
って......気が付けば私も大きなため息を吐いてしまったし。あぁ、どこ? どこにいるのよ。
本当にうかうかしていたら他の子達に取られちゃう。きっと彼女達もこの大学に潜んでいるはず。絶対にそれだけは嫌。
あと、再度周りを見回していて改めて思ったけれど何だろう.......。
私、この大学に友達いないな......。
完全にそっちのこと忘れてた。
で、でも、まぁ、いいか。私の目的は彼を探すこと。彼さえ見つかれば大学なんてどうでもいいんだから。
それに、あの目つきの悪い女の子もいつも一人だしね。別に問題ないわよ。
でも、彼女。今日もまたキョロキョロとしているし、もしかして友達欲しいのかな?
こ、声かけてみようかな......。




