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アイドルだってラーメンを食べます


 何だ。何で晩御飯まで俺はこいつと一緒に食べている。

 文句を言いつつも俺、気持ち悪いぐらいにこいつと一緒にいないか.......。

 いや、よく考えると相当やばいぞ、これ。


 「おい、鉄也。お前って本当にここの炒飯好きだよな」

 「あ? 悪いか?」

 「あれ? でも、いつものラーメンは? しかもその炒飯ってハーフサイズじゃね? 晩飯にそれだけで足りるのかよ?」

 

 それにしても本当にいちいちうるさいなこいつは。

 食えるものなら喜んで食べている。

 ただ、金が......。金がないから仕方がないのだろうが。

 給料日まであと一体何日だよ。


 とりあえず取り放題のザーサイでかさ増しをさせてもらう。

 何も問題はない。取り放題なのだから。


 ただ、本当に切実に思う。何で俺がこんな思いをしなければならない。本来であれば俺は一生遊んで暮らせるぐらいの金を既に手にしているのではないだろうか。いや、さすがにそれはいいすぎか。


 「いや、今日はそういう気分なんだよ......。ほっとけ」


 だとしてもだ、だとしても何で俺がお金に困らなければいけない生活を送らされている.......。


 正直な話、俺が高校時代に作った曲の印税はおそらくものすごい金額なはずだ。しかもカラオケ印税などに関しては今もそれなりには通帳に入ってきているのではないだろうか。


 くそっ、それが何で。


 俺が、俺が、当時未成年でなければ全てが俺の通帳に入ってきたはずなのに。


 何で、何で全てが親の通帳に.......。


 そして何があんたの社会勉強が終わるまでは一銭たりとも渡せないだ。

 せめてその金から仕送りぐらいはして欲しい。いや、するべきだろう。


 何でバイトもそれなりに入れているのにも関わらず俺は、ボロアパートで常に金のことを考えながらこんなカツカツな生活を送らなければならない。

 まぁ、親が散財している姿などを見受けた記憶はないから、貯金自体は本当にされているのだろうが、だとしてもおかしいだろう。


 何で炒飯についているスープにこれでもかとありがたみを感じなければならない......。本来であればタワーマンションに住んで毎日お寿司やステーキを食べていてもおかしくないはずの俺が何で.......。


 「へへ、まだかなー」


 そして何だ.......。

 なんでそんな俺を尻目に、こいつはこんなにも楽しそうにニヤニヤとしていやがる。

 それもまた鼻の下を伸ばしに伸ばした気持ちの悪すぎる顔で。色んな事が溜まりに溜まってイライラがもう極限状態に差し掛かりそうなのだが。食ってる物もやけに豪華だし。セットに何デザートまで追加してやがる。


 「何がまだなんだよ」

 「ん? 何だと思う?」


 そしてうぜぇ。うざすぎる......。マジで殺したい。

 何でわざわざ聞いてしまったんだ俺。


 「夏乃ちゃんからの返信まだかなー。へへっ、今ごろ探している人が見つかっていればいいなー」


 あぁ、そういうことか。あの計算高そうな女が相手か。こいつ、もうすっかり沼に落ちてしまっているな。可哀そうに。いや、完全なる自業自得か。

 とりあえず完全に自分の世界に入っているっぽいから無視だ。それにこいつにこれ以上は絶対に巻き込まれたくはない。


 「はぁ」


 でも、それにしても今月は本当にキツキツだったな。

 もう少しバイト増やすか? それともバイト先を変えるか?


 と言うか、バイトで思い出したけど。

 何かこの前、店長が今度また新しい女の子のバイトが入ってくるとか言ってたっけ。

 しかも、かなり可愛いとか言ってた様な言ってなかった様な。

 面接の時に見たとか言ってた奴は小動物系?の女の子だったとかも言っていたな。


 まぁ、入ってきたところで俺には関係ないけどな。俺はもう女性は信じない。絶対に信じない。特に小動物系っておそらく結衣ちゃんみたいな子じゃないのか? 尚更信じない。信じるわけがない。


 「夏乃ちゃんって何か俺に気がある様な感じがするんだよなー。もしかしてあえて焦らされてんのかなこれ。なぁ、鉄也どう思う? って、お前にはそういうのはわからないか。はっはっはっ、すまんすまん」


 うざい。無視。

 

 あと、珍しくてさっきからちょっと気になっていたけど。女の子がいる。カウンターに一人で座っている深く帽子をかぶった女の子。

 この店では初めて女の子を見たと言っても過言ではない。


 しかも猫舌なのか何なのかはわからないけど、いちいちラーメンの麺をふーふーしながら食べたり、一口がかなり少なかったり、何か見ているとリスみたいな仕草で可愛いな。

 ラーメンってあんなに一生懸命な感じで食べるものだったっけ?


 まぁ、何でもいいけど。とりあえず、このハーフサイズの炒飯って半額クーポン使えるのかな。

 使えるよな。使えないって書いてないもんな.......。


 って、あの娘。水を倒した。と思ったら何か今度はすごいアワアワとしている......。

 

 だ、大丈夫か? って、キョロキョロとしてるけど店員さん呼ばないのか? 


 多分、奥の厨房に普通にいそうだけど......


 え? これ俺が店員さん呼んであげた方がいいのか?

 

 ま、まぁ何か困ってそうだし呼んであげるか。


 でも、前から思ってたけど相変わらず人少ないな。このラーメン屋。ごはん時にこれって経営大丈夫なのか?


 味は普通に悪くはないと思うんだけどな。


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