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彼女の視線は人によっては超絶ご褒美


 「困っちゃうぜ本当に。やっぱり頼りがいのある俺みたいな男はいつも損しかしないんだよな」


 何だこいつさっきから本当に......。

 ただでさえバカ面の癖に、鼻の下が伸びに伸びて見るも悲惨な顔面になっている。


 「は?」

 「なぁ、鉄也もそう思うだろ?」

 「だから、何がだよ」


 何でもいいが、さっきからお前に言っている通りその席から早くどいてほしい。俺はさっきのが今日最後の講義。早く帰りたくて仕方がないのだが。

  こいつには講義が終わって教室から続々と消えていく奴らの姿が見えていないのか? 明らかに見えているよな。

 外の景色を見ても完全にもう陽は落ちているし、何で腰を上げてくれない?


 「ま、俺みたいに優しすぎるのもある意味では罪なのかもな」


 駄目だな。これ一発殴るか。でも、ついさっき一発殴ってこれなんだよな。

 じゃあもうどうしようもなくないか、これ。

  

 「それにしても夏乃ちゃんも運が良かったよな。なんせ、俺という頼りになる先輩を入学早々にもう見つけてしまうんだからよ」

 「夏乃ちゃん?」


 夏乃ちゃん? 誰だその入学早々に、こんなにわかりやすいジョーカーを引いたバカは。

 

 そして何故さらに深く席に腰をかける? もしかして意図的に俺をキレさせようとしているのかこの男。心配しなくてももうキレにキレてるぞ。


 「あれ? もしかして鉄也、その感じは夏乃ちゃんに名前も教えてもらえてなかったとか~?」

 「名前?」


 いや、今度は何だその顔。

 何故こいつそんな風に悦に浸った優越感丸出しな顔を俺に向けてくる......。

 言っては悪いが俺はお前に何一つ負けていないと思っているのだが。

 しかも何だそのむかつくコーラの飲み方......。

 やばいな。真剣にまた手が出そう。出しても意味ないことがわかったから出さないけど。駄目だ、血管がキレそう。


 「ほら、輪転機の美人ちゃんだよ。でもそうかぁ、鉄也は教えてもらえてないのかぁ。俺だけかぁ。何かそれは申し訳ないなぁ」


 あぁ、あの女か。

 こいつは俺と違って見事に手玉に取られた様。本当にわかりやすい。

 俺は別にちょっとあの時はおかしくなっていただけで、何一つ手玉になんて取られていないからな。こいつとは全くもって違う。


 「で、何を頼まれたんだ」

 「すまん。それはさすがに鉄也にも言えねぇ。ご褒美の為にな」


 まぁ、とにかく関わらないでおこうと思う。

 巻き込まれた時点で負け、こいつみたいな奴が実際にキャバ嬢とかにお金を絞りに絞りとられるのだから。そのニヤけただらしない面がもうこいつの未来の全てを物語っている。


 「おいおい何だよその目は。悪いって鉄也。お前にもまたいづれは手伝わせてやるからよ。だから嫉妬はすんなって。な、男の嫉妬ほど醜いもんはないぜ!」

 「いや、まじで殺すぞお前。嫉妬なんかするわけないだろう......」

 「はい、はい」


 いや、本当にやばい。こいつに余裕な感じを見せつけられるとマジで身体が震える。力が入りすぎて歯が折れそう。


 「まぁ、まぁ、落ち着け落ち着け、そんなレイナみたいな目を俺に向けんなって。友達だろ?」

 「あ? レイナ」

 「くぅー、そういやレイナもこの大学にいるかもしれねぇんだよなー。あの塩対応で有名なレイナだよ。さすがに鉄也も知ってんだろ? 9割塩なんだけど極まれに見せるデレの破壊力がすごすぎて、もうそれだけで普段の塩な部分は綺麗さっぱり許しちゃうんだよなー」


 あぁ、あの品はあるけど。クールなギャルみたいなキャラのレイナか。

 本当バカだな。こいつ。塩対応の何がいいんだよ。ドМか? いや、まぁ確かにこいつはドエムだな。どこからどう見ても


 「でも、レイナも本当にすごかったよなー。何だかんだでソロで武道館をファンで埋め尽くしちゃうんだもんなー。ま、それもあの曲ありきではあるだろうけどな。そもそもあの曲のおかげでレイナはあの地位まで上り詰めたと言っても過言ではない」


 また一人で話し出した。マジでいい加減にそこどいてくれないかな。こいつ。

 

 「あー、俺もあのゴミを見る様な視線でレイナから睨まれてー。ゾクゾクするぜー!」


 俺もゴミを見る様な目でお前のことを今まさに見ているのだが。その点に関してはどうだろう。

 様子を見る限りではまだ全然足りていないのか? 足りてないからどいてくれないのだろうな。


 あと、百歩譲って大声は本当にやめろ

 お前が俺に話かけている以上、俺まで同類と思われてしまうだろう。

 恥だ。最悪。本当にどうしたらいい。


 現にこいつのせいで、俺までゴミを見る様な視線で何人かから睨まれているよなこれ。


 特に遠くの方から明らかにこちらを睨んでいる綺麗な黒髪の女性が一人。

 あんなに冷淡な目で見られるのは俺は初めてかもしれない。

 そしてなんて強烈な目つきだ。泣くぞ。真剣にないてしまうぞ俺。


 ん?


 でも何だ。あの子、どこかで見たことがあると思ったら、確かつい先日俺に道を聞いてきた子だよな?有名な歌手の息子がどうたらこうたら言っていったっけ。


 まぁ、何でもいいけど。こいつを殺す以外でどうすればこの状況から抜け出せるか誰か切実に教えてくれないかな。


 本当に泣きそう。と言うか、もう泣いているよな俺。

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