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カニバル先輩と魔女後輩  作者: 柿の種


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Story 33 【普遍的に流れるもの】

すんません、短めです。


「そういえばさ」

「はい、なんでしょう」

「時間って、結局なんなんだろうね?」


先輩が唐突に、そんな事を言い出した。

場所はいつも通りの郊外の墓場……そして、時間的には丑三つ時。

僕達の会話を遠くから監視している魔女達に、遅くまでご苦労様ですと言いたくなってくる時間帯だ。


「……それは、言葉の意味的な話ですか?」

「あー、違う違う。何というか、概念的な?時間っていうものが何なのかは言葉的には理解しているけれど、こうやって私達が話している時に流れている『時間』っていうのは何なのかなぁって思ってね」

「……また難しい事を言い始めましたねぇ……」


そもそもとして。

時間というものは、様々な出来事や変化などを観測する、認識するための概念の事だ。

こうやって先輩と話している間にも時間は流れていく。

ある意味では僕は、先輩が1秒1秒変わっていく様を認識しているからこそ、この場では時間が流れている……と言えるのではないだろうか。


「……んー……じゃあ先輩にとって時間ってどういうモノです?それを聞いてからじゃないとこっちも何も言えないですよ」

「まぁねぇ。……私的には、『流れていくもの』かなぁ。流れって言ってもいいかも。止められない、水流のようなもの」

「あぁ成程」


時間は、『流れていくもの』。『止められないもの』。

この例を聞いて、先輩がどういう話をしたいのかある程度察する事ができた。


「じゃあ先輩はある意味では時間を液体のようなものだって考えてるんですね?」

「あー……確かにそうだね。現実には時を止める事の出来る幽霊みたいなものは出てこないし、メイドさんもいないしね」

「まぁ実際そうですね。……まぁ僕もあんまり変わらない認識ですよ。というか、基本的には皆そんなイメージだとは思いますよ?」

「そんなもんか。確かにそうだよねぇ……あぁ、でも。人によっては帯みたいなものっていう人もいるよね」


時間は帯のようなもの。

僕達が話している内容とそこまで大差ないものの、液体のようなものと、帯のようなものでは実際かなり違う。


「確かにそうですね。それを言ったら時間は道だ、なんて言う人もいますね」

「あぁ、一本道だから人によっては立ち止まる(力尽きる)場所があるって事か。成程?」

「それに道なら、マンガとかでよくある時間停止なんかも説明しやすいですよね。その場に立ち止まる、もしくは道が一時的に通行不可になってる、とか。いくらでもいえますし」

「想像もしやすいしねぇ。……うーん、中々考えられるものだなぁ」


時間、というものの捉え方は本当に人によって様々だ。

今回この場で話をしている僕達の認識が似通っていただけで、本来話に出たように帯だったり道だったり……例えられるものは多いだろう。


「いやぁ、うん参考になったよ。これで何とかなるかなぁ」

「あぁ、やっぱり何かしらの発表のための話ですか?」

「そうだねぇ。専攻でもないのに捻じ込まれてね。こういう時だけは猫被ってる自分が嫌になるぜ」


そう言って笑う先輩は、口ではそう言いつつも少し楽しそうだった。


「講演の日にち分かったら教えてくださいね、カニバル先輩」

「お?教えてもいいけれど時間は教えないよ魔女後輩」

「別にいいですよ。学生課に行けば教えてもらえますからね」

「あー……まぁ面白くないからオススメはしないけどねぇ」


そんな話をしながら僕達は席を立つ。

あぁ、少しずつ月は落ちる。


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