Story 27 【部屋を片付けるように】
「そういえば」
「ん?どうしたんだい?」
「先輩は、人の集中力の続く時間はどれくらいだと思います?」
いつも通り、僕と先輩は墓場へと集まり。
雑談を交えながら各自の好きな事をしていた時の事。
ふと頭に過った内容をそのまま聞いてみた。
「あー。色々言われてるやつだよね。人によっては10分から15分……もっと短い人なら10秒程度しか続かないって言ってる人もいたはずだね」
「流石、勉強というか頭だけはいいだけありますね。流石に知ってましたか」
「あは、一言余計だねぇ。でもまぁ、詳しくは知らないから話してくれるかい?」
「分かりました……まぁ、僕もそこまでしっかりとした知識があるわけじゃあないんですけどね」
一息。
「まず、前提として。僕としては集中力は長くても15分程度続くと考えてます。先輩はどうですか?」
「そうだねぇ……私としては15分でも30分でも割と集中出来てると思ってるから何とも言えないかな。多分他にも私みたいな人はいるだろう?」
「そうですね。まぁやっぱり個人差ってのはあるみたいで。『大体15分』くらいってのが色々な実験で得られた結果らしいですよ?」
調べれば出てくる程度の知識しか持っていない僕は、それをさも当然のように。
昔から知っていたかのような口調で話していく。
気分はさながらちょっとした詐欺師のように。
「例えば……そうですね。英語の学習を1時間したグループと、15分毎に休憩を鋏んだグループ。どちらの方が成績が良かったと思います?」
「そりゃ今までの話を考えれば後者だろう?」
「そうです。まぁ実際にテストした結果とか色々あるらしいんですけど……割と面白いと思いませんか?コレ」
「確かにね。その結果ってつまりは今の現代の会議やら授業時間とか全然合ってないというか……色々笑えてくるなぁ」
そう、この集中継続時間とでもいうべきものの話を踏まえると、先輩が言った通り……色々なものの時間設定がおかしく思えてくる。
だが、まぁ。一応の理由もある。
「一応大学の授業時間は理由があるらしいですよ。体内時間の周期が90分だから~とかいうのが調べると出てくるんですけど、その体内時間の周期は24時間とちょっとという話も出てくるんですよね」
「つまり、根拠はあるかもしれないがそれが実際に合っているかはわからない、と」
「そういうことですねー」
まだまだ寒い、という事で。
今日用意している飲み物は緑茶となっている。
口に含むと広がる独特の風味は、普段飲まない僕としても安心できるものだ。
「で?どうしてこの話を?」
「いやぁ。ほら、冬季休暇が終わったらすぐ試験があるでしょう?」
「あぁ、成程。……1つ先輩からこんな言葉を贈ろう」
こほん、と軽く咳払いをした先輩はにやぁと笑い。
「今更焦っても仕方ないから諦めな?」
「……ッ!いいじゃないですか!別に!!先輩関係だけじゃなく他にも魔女の仕事とかあるんですよ!」
「あははッ!でも『日課』にFiCばかりやっている私よりは勉強をする時間はあったろう!今更遅いんだ、一緒に堕ちようじゃあないか!魔女後輩!」
「クソッ!こういう時だけは押しが強いなこのカニバル先輩は……!!」
こうして、今日の会合は騒がしくも終わりを告げた。
しかしながらそのまま2人とも家に帰る、というわけではなく。
知り合いの人狼、そしてその後輩である一般人の女の子を深夜ながらも呼び出して、皆で緊急勉強会を開くことになったのは……いつか笑い話になるだろう。




