Story 15【私達の存在は】
「ところでさ」
「なんでしょう」
「結局の所、怪異ってなんなんだろうね」
既に日は暮れ、人が普通活動しない時間帯。
人気のない墓地にて、今宵も雑談混じりの茶会が始まる。
「えーっと……先輩の言う怪異って、多分化け物だったりそこらへんの事ですよね」
「そうだね。妖怪とかも怪異って言われるだろう?でも都市伝説とかも場合によっては怪異って呼ばれるじゃないか。この違いがよくわからなくてねぇ……」
「成程……といっても、僕もそこまで理解してるわけでもないんですけど」
怪異。
基本的には妖怪だったり、化け物だったりを意味する言葉として使われる事の多い言葉だ。
それ以外としては、ありえないような事だったり、不思議な事を指す言葉だったりもする。
「……そうですね。まず、先輩の言っている妖怪と都市伝説っていうのは割と違いがなかったりするんですよ。あ、あくまで僕の考えの中では、って話なんで」
「大丈夫、分かってるさ。続けて?」
「はい。妖怪ってのは、それこそイメージするのは化け物の姿が多いじゃないですか。昔ながらの漫画やアニメを見てる人なら、あの眼球だけのお父さんが出る作品が思い浮かびやすいですかね」
「日本人のほとんどはそれが妖怪を考える元になってるんじゃあないかい?私もそうだし」
冷める前に、と注いでいた紅茶を一口。
今夜は適当にその辺で選んできたために、なんの種類かはわからないが香りが良いため気に入っている。
「まぁ実を言えば僕もそうなんですけどね。だからこそ調べてみたってのもあります」
「成程ねぇ……で、都市伝説と妖怪の違いがないってのはどういう事なんだい?」
「簡単ですよ。妖怪の定義とかその辺の話になるんですが……あれらって、特定の場所や時間に現れる化け物の事を指すとかちょっと調べたら出てくるんですよ」
「あぁ、そこでか。確かに特定の場所や時間って言われると都市伝説も似たようなものとして見れるわけだね?」
「そういうことです」
一息。
「まぁ、都市伝説にも色々あるので一概には言えないんですけどね」
そう付け加えておく。
事実、都市伝説には化け物系以外に場所だったり……それこそ、国家の裏側だなんだと囃し立てる系の話だけが存在するものだったりも多く存在する。
むしろ化け物だったりが出てくる方が少ない印象もあるくらいだ。
「成程ねぇ……じゃあもう一個質問があるんだけど」
「なんです?」
「いや、さ。ほら、君も私も自分の事をよく化け物って言うじゃないか。この場合、私達は怪異なんだろうけど……実際妖怪寄りなのか、都市伝説寄りなのかどっちなんだろうなって」
「あぁ、それは簡単ですよ」
魔女と魂喰い。片方は屍喰らいと言ってもいいかもしれない。
ただ、この二つには明確な違いがあったりする。
「先輩は妖怪、僕たちは都市伝説側です」
「おや、妖怪なのか私は」
「そうですよ?だって先輩はこの墓地に特定の時間に現れて人を喰らう化け物じゃあないですか。都市伝説でも通用しそうな存在ではありますけど、どちらかと言えば妖怪寄りですよね」
「成程?じゃあ君らが都市伝説寄りってのは?」
「それは、実際に知ってる人が少ないというか……それこそ知る人ぞ知る、みたいな状態になってるので。ほら、妖怪よりも都市伝説とか伝承とかの方が僕たちは当てはまりそうでしょう?」
実際の話をすると、魔女に関して言えば少しばかり噂のようなものが最近流れてたりはする。
と言っても、そこまで核心をつくようなものではなく。
『現代にも魔女は居る。一般人に混じってひっそりと生活しているのだ』
みたいな。ほんのり風味で流れているため、魔女達の中では下手に噂を消すよりそのままにしておいた方が良いのではないだろうか、という結論にはなっている。
「そう言われるとそうかもしれないねぇ。いやはや、知りたかったことが知れてよかったぜ。ありがとう」
「まぁ素人が調べて、自論を混ぜた物をお話しただけなので。詳しい話を知りたかったらしっかり調べてくださいね、カニバル先輩」
「了解了解。気が向いたら調べてみるさ魔女後輩」
そんなことを言いながら。
僕と先輩は茶会の片付けをした後に。そのまま別の方向に分かれる。
あぁ、まだ夜は深い。




