インテリマフィアのオルゾさん、首領と面会する:2
ξ˚⊿˚)ξちょっと話の切れ目的にちょっと短め。
これはオロトゥーリア組を取り巻く客観的な事実から判断できることであり、オルゾが主観的にそう感じていることでもあるが、首領はオロトゥーリア組の歴史を閉じようとしているか、あるいはオルゾに継がせようとしているかのどちらかである。
オロトゥーリア組は副首領もオルゾ以外の幹部のグラーノやリーゾも5、60代であり40代の幹部がいない。首領の子供はマーレという若い娘のみ知られている。他に子がいるのかは知られていないが、オルゾら幹部が知らないということは、実際にいないのか、あるいはいるとしても組織を継がせる気はないということだ。
ちなみにマフィアというのは古い考えの組織である。女が首領となることは決してありえないので、マーレが組を継ぐことはない。
つまり、次代はともかくとしてその次の世代はオルゾが継がねば組織が立ち行かないということである。
つまり首領はオルゾが組織を継ぐに足る存在なのかを試しているのだ。
「首領、俺はこの問いかけに対して単にはいと肯定してきました」
首領は黙し、何も答えない。
『それでもお前はこの道を続けるか?』
はいかいいえの問いかけではあるが、それでは首領は納得していないということだ。
オルゾは続けた。
「つまりそれでは不足ってことです。答えはここに与えられていた」
オルゾは葉巻を灰皿に置いた。
葉巻には物語の名を冠したものがある。モンテクリスト以外にもロミオとジュリエットやドン・キホーテの従者サンチョの名のものなど。
これは葉巻職人たちが退屈せぬよう、工場で物語を朗読する者がいたことに由来しているのだ。そこで人気のあった物語の名がそのまま葉巻の銘柄の名となったのである。
「巌窟王曰く、人間の叡智は全て次の言葉にあり。待て、しかして希望せよ」
オルゾは彼の言葉をそらんじた。
かの作品においてエドモン・ダンテスが偽の罪で投獄され、脱獄し、モンテ・クリスト伯と名を変えて復讐を遂げるまでに二十三年の時間がかかった。その彼の言葉をである。
「マフィアなんてのは時代遅れの非合法組織です。そのマフィアの中だって名誉ある男なんてほんの一握りにすぎません。ですが何年でも、何十年でも。俺が死ぬまで続けましょう。希望を持って名誉ある男であり続けることを」
いや、とオルゾは思う。オルゾがいつか組を継ぐのに相応しいかどうかを試しているのではない。オルゾが時代遅れのマフィアという存在であり続けることを後悔しないかどうかを聞いているのだ。
そう感じた。
首領は葉巻を口にしたまま動きを止めていた。
そして葉巻を口から離すと、ゆっくりと長く煙を吐き、それも消えるとぽつりと言葉を返す。
「そうだな」
首領はただ短くそう言葉を返しただけだ。だが、その言葉からはどこか満足げな気配を漂わせていた。
彼は残りの短くなった葉巻を灰皿で揉み消す。
「葉巻も終わったな。時間か」
「はい」
オルゾの言葉が正しかったのか、首領の求める答えであったのかどうかは分からない。そもそも正解などない問いかけなのであるかもしれない。
だが、この問いかけは二度とされることはない。オルゾはそう確信した。
オルゾは椅子から立ち上がる。そして首領の前に跪こうとしたが、首領はそれを手で留めた。
首領は立ち上がるとオルゾの身体に手を回した。オルゾより低い背の首領の腕がオルゾの肋骨の脇を通り、背に回される。
「今回の件だが、お前がどんな判断をしても俺はそれを肯定しよう」
首領がオルゾの自由にやって良いという判断を下し、そのケツ持ちも自らすると言っているのである。
わざわざそう口にするということは、首領には何らかの予感があるのかもしれないし、オルゾを信頼しているという意味なのかもしれない。
それはオルゾには見通せないことであったが、彼は首領の背中に手を回し、感謝の言葉を告げた。
「ありがとうございます」
首領は軽くオルゾの背を叩くと身体を離して言った。
「さあ行ってこい、我が子よ」
「はいっ!」
オルゾは意気揚々と部屋を後にした。




