エピローグ 彼女達の秘密を俺だけが知っている
こんな終わり方でいいのかと思いつつ、こんな終わり方になりました。
結論から言おう。
俺は杏里に告白した。
そして俺の告白を杏里は受け入れてくれた。
他の4人のことも好きだが、あえて誰かを選ぶなら彼女。それは俺に楽しい時間をつくるきっかけをくれて、楽しい時間をくれた杏里だった。
そしてその結果。
何も変わらないことになった。
さてどうしてそうなったのか、告白してすぐの出来事が頭に浮かぶ。
「俺が選ぶのは杏里だ。杏里のことが好きだ。だから俺と恋人として付き合って欲しい」
「太一、ありがとう」
俺が杏里に気持ちを打ち明けると、彼女は涙をに流す。
「だ、大丈夫か?
「大丈夫……、す、すごく嬉しい。大好きな人に愛してもらえることがこんなに嬉しいことだとは……。でもこれはうれし涙だから……、あと少しだけ寂しくなる涙」
その答えはOKということ。だが、寂しくなる涙の意味は……俺にも分かった。
「杏里……。とうとうだな」
「うん。これできっと皆とはいままでどおり過ごせなくなる……」
彼女達が俺に平等に接してきたのは、俺が答えを出さなかったから。しかし、これにより彼女達の仲で格付けがついた。
俺が選んだのは杏里。
他の彼女達の用事は杏里の用事に優先されなくなる。
それにより、これまでの6人の関係が崩れること。俺が恐れていたことは杏里も同様に恐れていたのだ。
「太一。私は太一だけに好かれればいいと思っていた。だからはじめはどんどん太一の周りに人が増えたことを少し不満に思っていた。でも今は違う。由美達のこともかけがえのない友人だと思っているんだ。だから太一に選ばれたことは嬉しいが、同時に悲しくもある。だが、選ばれなかった由美達のほうがもっと悲しいだろう。私の悲しみは贅沢だ」
「まぁでも仕方がない。これだけはあきらめるしか……「「「「あきらめる?」」」」
2人で悩んでいると、声が聞こえた。
「ゆ、由美? 先輩に水城に京。全員?」
「やっぱり杏里だったか」
「由美達……、本当にすまない」
「何を謝ることがある。1番が杏里になっただけだ」
「私が言い出したことだしね。結果自体は受け入れているわ」
「杏里ちゃんと太一君はお似合いだしね」
「おめでとうございます」
4人とも笑顔で祝福してくれている。その様子には残念そうな様子はない。どうやら俺が杏里を選ぶことはなんとなく分かっていたようだ。
改めていい仲間を持ったと思った。
「じゃあ次は2番目を選んでもらおう」
そんな空気に俺が感動していると、由美がいきなり素っ頓狂なことを言い出す。
「は? 何の話だ?」
「私はもともと1人では男性を満足させることは出来ないと思っていた。だから、誰かと共に愛する人を支えたいと思っていたんだ。そして、毎日愛される本妻よりも、時々愛をもらえる愛人の方がいい。きっと飽きられないから。た、太一。きっと私はいい愛人になれるぞ」
由美に彼氏がいなかった秘密が分かった。ネガティブで愛人志望だったから、もう1人彼氏が好きな人が必要だった。
「はぁ、はぁ。私は1番じゃなくていい……。太一君はきっと好きな人と、自分の好きなやり方や服装で……、するんだよね。だから、私はそれを見越して……、太一君の前にその格好や姿勢でいるから。そうすれば太一君が間接的に私を愛してくれる……。恋愛は愛するよりもどう愛されるかが大事なんだよ~。だから私を毎日愛してもらうには、間接的に愛を貰うのが1番だよ~」
水城に彼氏がいなかった秘密が分かった。間接恋愛志望だから、もう1人彼氏が好きな人が必要だった。
「これなら問題ないわ。私が海外に行っても遠くに行ってもたっくんの近くに居場所はあるわよね。私1人じゃたっくんが寂しがっちゃうけど、他の皆がいれば安心ね」
先輩に彼氏がいなかった秘密が分かった。彼女の夢と恋愛両立をするためには、もう1人彼氏が好きな人が必要だった。
「家族がいっぱいですね。子供たちだけで、チームを作れるようがんばりましょう」
京に彼氏がいなかった秘密。彼女の幸せをかなえるのには、たくさんいることに越したことはないから、彼氏を好きな人が他に1人以上いても問題なかった。
「で、でも1番は私なんだ。それで皆いいのか?」
杏里は不安そうにする。
「大丈夫よ。それに2番目の方が何かと便利よ。皆が1番を目指そうとするから揉めるのよ。皆がたっくんの2番目になればいいのよ。ほら、結婚も2番目に好きな人としたほうがいいって言うじゃない」
「な、なるほど。それならずっと皆と一緒にいられるわけか?」
「私の望みと何も外れていない。やはり美香先輩は天才か?」
「私も全然大丈夫~。たくさんいればもっと間接的に見てもらえる……」
「先輩の子供なら愛せます。杏里先輩たちも大事な人ですから、その2人の子供なら愛せる自信があります」
「ちょっと待ってくれ! 俺は杏里を選んでけじめをつけたつもりだ。他の4人は選ばない。だから、そんな倫理に反したことを言うのは……」
「ちょっと先輩黙ってください。口を閉じますよ?」
京が怒ってまたどこからか刃物を出す。
「倫理なんてどうでもいいわ。それともたっくんは皆のこと嫌いかしら?」
「そんなことはないですけど……」
「だったらいいのよ。私達はまだ子供だから、ちょっとくらい倫理に反した恋をしても。恋愛の形に正解なんかないのよ。間違った考えも含めて恋なの」
先輩の発言に反論する人はいない。みんなそれでいいと言う事だろう。5人の視線が俺に向けられる。俺の答えを待っているのだろう。
「…………分かりました。俺じゃ無理かもしれないですが、がんばります!」
俺は答えを言うのをためらったが、そう答えた。彼女達は俺がそれでも拒否すれば、杏里のために身をひくだろう。本来ならそうするのが正しいだろうが、他の4人も俺は好きだ。もし彼女達が、意地でも1番を狙うというのであれば、俺は杏里のために、彼女達をもう1度振った。
だが、彼女達が2番目でもいい、というのである。それを断ることは彼女達を本当の意味で拒絶するような気持ちになり、それはできなかった。
「太一、1人でがんばらなくていい。『私達』がそれぞれがんばるから。皆で幸せになるためにな!」
杏里が俺の手をとってそう言ってくれた。
そして冒頭の場面。
彼女達は俺のことを奪い合いながらも、1番にはなるまいと譲り合っている。
彼女達の秘密は、本当に残念だったため、俺は答えを出したのに決着をつけることができなかった。
だが、俺達はまだ高校生。
由美はもしかしたら、ネガティブじゃなくなるかもしれない。
水城はもしかしたら、直接的な恋愛を望むようになるかもしれない。
先輩はもしかしたら、ナンバーワンを望むかもしれない。
京はもしかしたら、普通の家族を望むかもしれない。
そして杏里も独占欲が強くなり、俺の1番を望むようになるかもしれない。
彼女達もまだまだ恋愛については未熟。
今の関係は未来を確定させるものではない。
だから、俺もほっとしていた。この複雑な関係は、他の男子には悪いが、かけがえのないもの。
大人になってもこの関係が続くようだったら、またそのときに考えればいい。
今は彼女達の秘密を守りつつ、一緒に過ごしていける日常を過ごしていこう。
「おい太一! お前はどうなんだ!」
杏里が俺を呼んで、今日の順位を聞いてくる。
「今は杏里が1位なんだって」
俺がそう言うと皆が一喜一憂する。
順位付けをしたのに皆が笑顔で皆が仲良くしている。俺は1人を選んだのに、ハーレムを形成してしまった。もちろん彼女達と過ごすのは楽しいから、俺も嬉しいのだがやはり不安はある。それでもこの先どうなっていくのかは、俺にも分からない。とりあえずいまは楽しいこの時間を過ごしていくことにしよう。
「太一! 私はずっと1位じゃないか! うれしいけど!」
「愛人のポジション……獲得だ」
「杏里ちゃんと何をするのかな? 今は巫女さんにはまってるんだよね~。もちろん持ってきてあるよ~。赤堀さんから借りてきた~」
「ナンバーワンよりオンリーワン。1番じゃなくていいって、意外と気楽ね」
「皆で仲良く楽しいですね。でもなぜか鋏は手放せません♪」
今の彼女達も皆が知らない俺だけが知っている秘密。実に残念な発言ばかりだと改めて思うのであった。
~皆が知らない本当の彼女達 完~
皆が知らない本当の彼女達(旧タイトル 彼女達がモテない理由を俺だけが知っている)を最後まで見ていただきありがとうございます。
自分がなろうに投稿した作品としては3作品目ですが、この作品は今までのものよりも多くの方に見ていただき、1番多いときに72,871アクセスを頂き、日間8位、週間15位、月間75位という大変な評価をもらいました。
そのこともありまして、執筆に少しプレッシャーを感じましたが、皆様のアクセスや評価や感想が非常に励みになり、がんばることが出来ました。
必要ないと思いますが、少し裏話です。
この物語が、途中で個人エンドかハーレムエンドを決めていない。という話があったのですが、実はこの話、当初は杏里のための物語でした。
ところが、せっかくヒロインを書くならばと、他の4人も自分の好きな要素を入れすぎて、杏里と同じくらい自分が気に入ってしまい、1人を選ぶのが難しくなりました。
ですが、もともとは杏里のための物語のつもりで作っていたので、書き溜めはしなくても、方向性を変えなければハーレムエンドに向かえないため、途中悩むことになりました。
決着が中途半端になったのはそのためです。申し訳ありませんでした。
続いて、ちょっとヒロインの小話です。
杏里 メインヒロイン予定でした。本当は太一と昔会っていたとか、他のヒロインに比べて明らかに差がつく設定があったのですが、個人エンドに仕切れずなくなりました。
そのせいで、キャラが少し薄くなったのが残念でした。
由美 予定外の方向性に向かったヒロイン。ネガティブの方向性が斜めに行き過ぎて、もはやウザキャラと化しました。元々はじめてこの作品を考えたときは、由美はいなかったのですが、いろんな意味でバランスをとるために参加しました。
水城 この子は本当に申し訳ないです。ただちょっと下ネタが好きな子にするつもりだったのですが、暴走させすぎました。途中からただの変人になってましたね。赤堀さんはちなみに、突如思いついたキャラです。もう少し早く思いついていればよかったです。
先輩 残念度1位から、一気に最下位になりました。まわりをカオスにしすぎて、あまり残念じゃなくなってしまいました。元のスペックが高いと残念にならないのでしょうか?
京 スペック高い後輩。この子もあまり残念にならなかったので、ヤンデレっぽい感じをいれました。それでもまともでしたね。
では最後に、この作品を読んでいただいてありがとうございました。
1アクセスでも下さった方には感謝しかございません。
感想もたくさんありがとうございました。
謝辞を失礼します。
grayapple様、かずま様、ももやん様、クッキン様、GrimReaper様、江口様、らす様、あつあつし様、狐狗狸様、真昼の微籐様、ミラニスタ様、アニエス様、hakukatu様、s様、猿の巣屈様、snowdrop様、雪夜様、フォールンⅡ様、桔音様、三浦安針様、ユウ様、ハル様、魚肉色のワッチー様、柚月様、バルフ様、トチロー様ありがとうございました。
以上の方は、感想を1つ下さった方です(追記感想は1つとしてカウントしてます)。私もなろうの作品を多く読んでいますが、感想を書いているのは1作品だけです。
それだけに感想をいただくということは非常に貴重だと思っています。ありがとうございます。
以下の方は、2つ以上感想を下さった方です。
感想2つ
マッタリ感様、フラグ回収が出来ているとのコメントありがとうございました。
アジサイ様、ヒロインのイメージについてのご指摘ありがとうございました。
妖怪チンポ様、ドア魔人拝見いたしました。面白かったです。
nsh1960様、タイトルへのご意見ありがとうございました。
はにほへと様、EDに向けての後押しありがとうございました。
感想3つ
黒絵様、テンポを褒めていただき、エンディング予想もありがとうございました。
感想4つ
まゆげ様、十二単や生徒会準備室など、ご指摘ありがとうございました。
感想5つ
Campanella様、かなり初期から見ていただいて、誤字のご指摘や、作品を楽しんでいただいているコメント、新作への応援まで頂いてありがとうございました。短編についてはまったく考えがなかったので、ご意見ありがとうございました。
感想8つ
臥龍鳳雛様、かなりきちんと読み込んでいただいていたと思います。私の言い訳のような返しにも丁寧に対応していただきありがとうございます。終盤の感想に名前がありましたので、読んでいただいていることがうれしかったです。きちんと作品を考えて作ることの大切さを教えていただいたので、次以降の執筆では、ご指摘いただいた点を気をつけていきたいと思います。
感想28つ
Samon様 初めて感想を頂き、作品の投稿のたび、高い頻度で感想を下さりありがとうございます。
ユニークなコメントが多かったですが、少し問題があればご指摘ももらえていましたし、自分のネタにもいい返しを下さったりと楽しく見ていました。
毎日きちんと感想があることは本当に励みになりましたので、感謝しております。
感想を下さった方、本当にありがとうございました。
本作は本当に毎日勢いで書いていて、設定の作りこみが甘く、非常に読みにくい部分もあったと思います。それでも、読者の方に支えていただいたことで、一応完結という形を取ることができました。
次回作の構想はあります。
現在は全く執筆せずに、ノートにひたすら設定や世界観を書き続けています。
8月から仕事が人事異動により忙しくなりますので、いつ次回の作品が書けるかは分かりませんが、何らかの形では書き続けようと思います。
この作品は本当に高い評価を頂きましたので、次回作が及ぶかは分かりませんが、次は初めてきちんと考えた作品に仕上げようと思いますので、ご縁がございましたら、またよろしくお願いします。
長々と失礼しました。




