エピソード36 でかい話と余計な話
グダグダ回。
「ここがうちの別荘だ」
杏里が指し示した先あった建物は、別荘というには大きく、あまりにも立派だった。
「あ、杏里、これ私の家よりもよほど大きいぞ……」
「これが別荘……、やっぱり杏里ちゃんの家はすごいな~」
「ここに住みたいわ」
「私が1円でも安く食材を買おうとしてるのが、なんか切なくなります……」
他の4人がおのおのの感想を示す。同じくお嬢様である水城ですら圧倒されていた。
「ではまたお迎えに参ります。よき旅行になられますよう」
そう言って赤堀さんは車を走らせていった。
内装も外と同じく非常に綺麗にされていて、新居ですよ、と言われても信じるレベルであった。
「この中のものは好きに使ってもいいってさ」
「好きにしていい? だったら、このテーブルと椅子を持ってかえって使うわ」
「先輩、そう言う意味じゃないと思います」
「と、ということは、この建物の中にいる太一君も好きにしていってことなの?」
「治外法権か!」
「え、もしかしてお父さんそれを見越して……」
「考えすぎだ!」
「わ、私はむしろ太一に好きにされてもいい」
「何を言ってんだ?」
全員がボケすぎて俺は何もしていないのに、疲れた。もう寝たい……。
「杏里ちゃん、部屋はどこかしら? 荷物を整理しなくちゃね」
先輩が杏里に尋ねる。よし、ようやく話が進むな。
「2階に部屋がある。部屋は10以上あるから、1人1部屋使っていいぞ」
さすがだ。別荘なのにそんなに部屋があってどうするのかとは思うが、お金持ちの常識を俺のものさしではかってはいけない。
食材も整理した後、窓から見える景色を見て、さっそく泳ごうという話になり、着替えて外に集合ということになった。
「どうせ女子は準備が遅れるだろうし、1階を少し眺めておくか」
そして1階に下りた。
「とりあえず、色々いいたいが、何もかもでかい!」
冷蔵庫は大家族である京の家の冷蔵庫が入りそうなほど大きい冷蔵庫。
数日分の食材を配置を何も考えずに適当に入れても、余裕ではいった。
そして、お風呂はどこかと思ったら、野外に温泉みたいな風呂がある。なんでやねんといいたくなる。
トイレも無駄に大きい。男子と女子に別れていて、公共の施設のようになっていた。
これは、会議とかでも使うので、業務用ということかな?
そして、大きな窓から見える、大きな海。海は広いな大きいなを体現し、地平線の果てまで見える。
「やっほ、何してんのたっくん」
「太一、そんなに眺めても何もないぞ」
「あ、先輩に杏里。ここのものが何もかもでかい……」
振り返るとかなり肌色な部分が目に飛び込んできた。
このグループでトップ2であるわがままボディを誇る2人。その感想は、『でかい』だった。
「太一、目つきがいやらしい……」
杏里が胸を隠す仕草をする。
杏里は目線を受けるとこの動きをするのだが、とにかく隠すのがへたくそである。彼女は胸以外の部分は、かなり小柄なので、手も腕も小さい。そのため、隠し切れないでただ単に強調されるだけになる。
普段はそれでも服を挟んでいるからいいのだが、生だと迫力が半端ではない。
「たっくんのおっぱいフェチ」
「何言ってるんですか!」
「だって杏里ちゃんへの目線がエッチなんだもん」
「先輩だって同じように見てましたよ!」
あ、やべ。勢いで余計なこといった。いじられる。
だって杏里も先輩もえらく胸が目立つ水着来てんだもん。
「た、太一、これは私の趣味じゃないぞ。お店にいったら、胸がある人は下手に隠すとかえってだらしないっていうから、半強制的にこれを薦められたんだ。私の意志は介在していない!」
「でも着てるなら、気に入ってるんじゃないのか?」
「だ、だって、太一にしか見せないんだから、どうせなら似合うのを着たほうがいいかと思ったんだよ」
荒い口調で乙女な発言。ギャップがやばい。
「もう、美香先輩も何か言ってやってください……?」
「先輩、どうしました?」
杏里が話しかけても先輩が反応しない。俺も気になって声をかける。
「た、たっくんのエッチ……、私もいやらしい目で見てたの……」
俺に背を向けて顔だけこっちを見ながら真っ赤になって言う。
こちらもギャップがやばい。普段はひょうひょうとしているのだが、先輩たまにすごい乙女になるな。
「杏里先輩に美香先輩、自分の武器をよく知ってますね~」
京も俺の後ろから声をかけてきた。
「京も来たのか」
「どうですか? 似合います?」
京はおなじみの白色のビキニ。はじめの2人が規格外に大きいだけで、京もスタイルは抜群にいい。
健康的な色気を感じる。
「京は本当に白が似合うな」
「はい、でも先輩の色に染まるなら別にかまいませんよ」
「はい、余計なこと言わない」
「やっほー、お待たせ~」
水城も降りてきた。
水城は本当に分かりにくいが、かなりバランスのよいスタイルをしている。
見た目は天然な女子という感じだから、肌が見えるとイメージとかけ離れる。
「はぁはぁ、私を太一君が見てる……。野獣のような目で……、太一君の脳内に私が補充されて、太一君のあれが、移住する~」
「興奮しながら、意味不明なことを言うな……」
「ん? 由美が来てないな?」
「そういえばそうね。あの子は髪も長いし、準備に時間がかかってるのかしら? それにしてもちょっと長いわね。見てこようかしら?」
「い、……いる」
先輩が心配して2階に行こうとすると、階段の横にある柱の影に由美がいた。
片方の目と、長い髪以外はすべて柱に隠れてしまっていたが。
「どうしたんだ?」
「大丈夫だ、太一は人を見た目で判断しない、大丈夫だ」
そのままぼそぼそと何か言っている。
「た、太一、私は太一が以前言った言葉を信じている。だから、他の4人の前に姿を見せる。笑わないでくれるか」
「いや、笑わないぞ」
「すーはーすーはーすーはーすーはー」
「深呼吸はいいから早く出て来い」
「うう……、どうだ?」
着ているのは黒色のワンピース。他の4人に比べれば露出は少ないが、由美は普段から肌をめったに見せないので、貴重に思える。
「またダイエットしたな」
「分かるか。がんばってみたんだ。私は他の4人と比べるとスタイルが良くないからな。太一がこれを見て、目が腐り落ちてしまったら、私は償えない。太一は眼鏡をしていないから、眼科に行くこともないだろうしな」
「なんで話がそっちに向かうんだ……」
せっかく由美にしては前向きな発言が聞けたのに。
「そんなことないよ~。腰なんかすごいくびれてるし、肌も白いし。すごく綺麗だよ~」
「そうですよ。それに白いだけじゃなくてすごく決め細やかでもち肌です。普段から隠されてますから、、紫外線を浴びてないんですね」
水城と京が由美を見て感嘆する。
「た、太一もそう思うか?」
「ああ。綺麗だと思う」
「し、しかし、足はどうだ?」
「足?」
確かに上半身以上に、由美は長いスカートをはいているか、ズボンをはくので、ほとんど露出がない。モデルの仕事も、ロングスカートとゆったりとしたパンツだけだったから見てないし。
「太いだろう……。よく走っているから下半身がたくましくなってしまって……、だらしなくないか?」
「いや、別に太くもない」
モデルみたいにめちゃくちゃ細いというわけではないが、他のメンバーに比べて目立つというほどではない
「そ、そうか……」
「もしかして、由美が下半身を見せないのって、太いことを気にしてたのか?」
「どうしてそれを?」
「だれでもわかるわ、本当に気にするなって。由美の足は長くて綺麗だ。もっと見せてもいいと思うぞ」
「太一は見てくれるのか?」
「もちろんだ」
そういうと由美が照れて、俺から目を逸らす。
「あのー。私達もいるところで2人でいちゃいちゃしないでー」
先輩の突っ込みが入ってようやくこの状況が落ち着いた。
何で由美の話は長くなるのか。
だらだら書いてたら結構文字数が伸びました。
別荘に入って、着替えて外に出るだけの話で1話使ってよいものでしょうか。




